第6話 超巨大質量弾

 怪物がコロニーの姿勢制御用のジェットの燃料タンクを撃ち抜き、爆発は内部の地形を滅茶苦茶にしながらコロニーの進路を地球に向けた。


「それではコロニーが地球に落ちる! 人がたくさん死ぬぞ!」


 リアレがアサルトライフルを連射するが、怪物に効果はない。


「そんなものがこのイゲールに効くか!」


 イゲールという名の怪物は、レーザーをばら撒く。リアレがそれを必死によけながら反撃を試みるが、効果はない。


「大地に縛られた人間が死んで何が悪い。我々はコロニーで暮らせるようになっているのだ。それを証明するだけだよ」

「そんなくだらない理由で、人の築き上げたものを壊させてたまるか!」


 リアレはサーベルを取り出して赤熱させ、イゲールのレーザー砲身を斬りつける

が、切り傷をつけた程度に留まった。


「築き上げた? お前たちの国の歴史の長さは僅かだろう。それを守って何になるというのだ」

「歴史の長さに関係があるか! 人の生き死にの塊なんだぞ!」


 リアレのビオカウンターが通信に干渉し、ザッツの言葉をコロニーに住む人間に伝える。


 リアレの腕のレーダーが、ビオカウンターによって出力を増し、イゲールのレーザー砲の一基を断ち切った。


「なんだあの出力は、奴一人の感情の力ではビオカウンターの力に足りぬはずっ」

「世界を壊そうとするお前に分かるものか、生きる人間の力が、生きようとする人間の力が!」


 リアレは金色の光を纏い、イゲールに蹴りで突っ込んだ。厚い装甲がほとばしるエネルギーの塊によってひしゃげ、イゲールの節々から爆発が起きる。


「コロニーは止まらん。落ちていけ!」


 リアレが後退した直後、イゲールは爆散した。


「コロニーが落下する! 核をすべて使って阻止するんだ!」 


 カールは、地上の部下に、攻撃を必死の表情で要請した。電話を終えてすぐにカールは、コロニーに搭載された光の信号でリアレに帰還しろと伝えた。


 リアレはそれに反応してカールの居るコロニーの元へやってきた。


「共和国の議会のあるコロニーまで運んでくれ」

「わかってますよ」


 すぐにリアレは共和国の首都のコロニーまで飛んで行った。そして、コロニーを制圧したはずの蜻蛉のロボットの残骸があるコロニー内まで侵入する。


 カールはリアレから飛び降り、議会まで走った。


 未だに会議を続けている共和国議会の議員たちのほとんどはそれに驚愕し、無駄でやかましい批判を始めた。


「黙っていろ!」


 議員の一人が周りの物に喝を入れ、立ち上がる。


「どういうご用件ですか」


 立ち上がった議員は、質問をしながらカールの方へ歩きだす。


「テロリストどもがコロニーを落とした! 止めに出せる兵器をすべて出してくれ!」


 議員が携帯を取り出し、付近の艦隊の艦長を務める部下にかける。


「異常な動きを見せているコロニーはあるか?」

「連邦の第一コロニーの動きがおかしいです」

「何としても止めろ。私も行く」


 議員は電話を切った。


「私もコロニーを止めに行く」

「この国の議員は飛行機乗りも兼ねるのか?」

「今の私は議員ではない。共和国宇宙海軍のセヴォンド大尉だ


 彼女は、仮面を被ってコロニー内の基地に走って行った。


「我々も急ぎましょう。残存艦隊をかき集めたらどうにかなるかも」


 二人はリアレに乗り込んでコロニーの外へ向かった。


「帝国二番コロニーの駐在艦隊に繋ぎました」

「私は皇帝だ。この通信が聞こえている艦艇は直ちに連邦の第一コロニーへ向かえ」


 通信を受け取った艦隊は、共和国の艦隊が同じ動きをしていることに気づきながらも、コロニーの元へ移動した。

 

 テロリストの残存部隊と、連邦、共和国の混合部隊が戦闘を始めた。


 六機の金色の戦闘機がテロリスト集団に突っ込む。


「撃ち落とせ!」


 集中砲火の中を泳ぐように六機は変形しながら進み、合体して人型になり、蜻蛉のような機体を殴り壊した。

 

「このザンズズルがっ」


 ザンズズルという名の機体は、次々と撃墜されていった。


 奇襲ではない状況でテロリストの機体は優位性を発揮できなかった。


 混合部隊はすぐに残存部隊を掃討し、コロニーをどうにかする体制に入った。


 落下を続けるコロニーの中から僅かに生き残った人々を乗せた救命艇が脱出する。


「撃て!」


 無数の砲とミサイル、魚雷がコロニーに向けて打ち込まれる。無数の光がコロニーの周辺で起きて、巨大な金属の塊を崩していく。


「だめだ、このままでは地上に落下する。津波で人が死にまくるぞ」


 コロニー落下阻止に参加している者の一人が呟いた通り、宇宙にある艦では威力が足りなかった。


「せめて外惑星探索中の爆裂砲搭載艦が居れば……」


 そう誰かが呟いた時、地上から発射されたミサイルがコロニーに直撃する。次々と地上からの攻撃がコロニーに当たり、コロニーは少し速度を落とす。

 

「そうか、破壊しきれなくても向きを変えればいいのか」


 その様子を見たものたちが一方向に集まり、横からコロニーを押すように攻撃を始める。


 三つの国家が、たった一つの青い星のために共闘をしていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る