77 アイテムボックスに拘って… その77

 アルミと他金属を合成してジュラルミンを作り出すことに成功した甲司こうじ。そしてその成果を両親に報告すると驚かれ、喜ぶ両親。そして翌日……甲司は準ミスリルを試してみようとしたが……

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──準ミスリルのレシピは……──


「確か、純銀に魔力。そして魔力光を出す灯りだっけ……月って魔力を放ってるのかな」


 流石に50年とか100年とか掛けてらんないので、高密度魔力……というか直接魔力を照射すりゃいいんじゃないかと考えた訳だけど……。それでも魔力を全力で照射……握り込んで魔力を与え続けてもせいぜい1時間も続けば御の字だ。


「うーん……なら、魔力の塊の魔石を傍に置く?」


 しかし、100万円で買える魔石はせいぜい小石程度。それ以上の魔石も流通はしてるけど価格が桁違いなので買えたもんじゃない。小型の魔物なら粒は小さいけど魔石を入手できる可能性はある……。ゴブリンやコボルドの魔石を燃料に明かりを得る魔導具があるがそれなら1日から3日くらいはもつらしい(品質やら大きさで多少左右される模様)


 これ屑魔石を沢山集めれば何とかなるかも知れない……。という訳で、タナミナ兄妹に依頼しようと思った甲司。そして数週間後……



「やぁ、ごくろうさま」


「おう!……これ、依頼の魔石な」


「あぁ、ありがとう……報酬は」


「あーいいよ、そんなん!」


「でも……」


「兄ちゃんはさ……俺たちの居場所を与えてくれた」


「……」


「家族として受け入れてくれた」


「それは……」


「まぁ聞けって……それも、俺たち兄妹2人もだ!」


「……」


「早い話、俺とミナは返しても返し切れない恩を受けてるんだ」


 うんうんと、黙ってタナの横に立っているミナも頷いている。


「そして……犯罪を犯した俺たちを許してくれた」


(そんなこともあったな……)


 と思い出して頷く甲司。


「俺は……いや、俺とミナも……恩を感じているんだぜ?……」


 あのままではブタ箱に放り込まれるのは間違い無かったし……と心の中で呟くタナ。


「だからさ、報酬なんて水臭いことは……」


「じゃあ……これで明日、豪勢な昼飯でも買ってくれよ……それくらいならいいだろ?」


 と、2人分で5千円を渡した。万札を束で渡してもいいとは思ったけど、小学生(元、だけど)が大金を持ち歩いていてもいいことはない。


「いや……多過ぎだろ?」


 それもそうか……じゃあ、


「じゃあ2日分の昼飯代だ!」


「兄ちゃん……」


「あ、あー……わかった。じゃあ明日から2日は贅沢をさせて貰う。これでいいだろ?」


「ああ……美味しい物を食ってくれ!」


 という訳で、自己満足ではあるかもだけど……報酬代わりに食費を渡した。衣食住の内、住は居候いそうろうさせることで満たし……、衣も両親が俺と兄さん、そして妹のお古を与えることで満たした。流石に新品の衣類は高くて購入が困難だけど……買うにしてもこの辺じゃ入手が難しいのだ。


 残す食に関しては朝と夕は家で食べることができる。だから……せめて昼飯だけでもと思った訳だ。



「さて……少しづつ、長期間に渡って魔力を浸透か……」


 だが、自然に魔力を浸透させるにしても、物凄く時間が掛かる。自然界に漂っている魔力とは……空気中に漂っている魔力なだけに移ろい、薄くなる。だからこそ、非常に時間が掛かる……と思う。そこを逆手さかてに取り……高濃度の魔力を浸透させられるなら、時間を短縮できるんじゃないか?……と。


 その為には……



◎人間の手で魔力を与え続ける



 しかし……人間が保有してる魔力には限界があり、下手をすると死に至る。次善の策として、



◎魔石を用いて内包している魔力を抽出して継続して魔力を与え続ける



 但し、抽出できるとはいっても魔石は希少品。ある程度大きな魔石があれば可能かも知れないけど……


「何個も用意できれば世話ないんだよな……」


 そこで、入手が容易な売れない程小さな屑魔石。主にゴブリンが落とすのだけど……小さ過ぎてギルドでは二束三文でしか買い取ってくれない。具体的には100gで100円行くかどうか?


 主に魔力灯の燃料代わりに使うけど、1粒で数時間もてばいいかどうか……。それくらいの魔力しか無いらしい。それを聞いたらゴブリンも涙目だろうな……(1回のダンジョンアタックで全部使い切ることは余りないそうな。但し、1粒だと心許ないので通常は数粒を魔力灯に放り込んで使う、らしい)


 ……関係ないけど魔力灯はランタンの形状をしていて、燃料の屑魔石5粒とセットで千円くらい。レンタルであって買取じゃないのが難だけど……買取だと10万円くらい掛かるって話。壊れても割れるのはガラスみたいな部分だけで他を持ち帰れば修理して使えるそうだ。だから完全に破壊されない限りは持ち帰ることを推奨されている……


※ガラスは製造工場が無いので代替品を使用。何でも水晶を削って作ってるとか……



 ……話が逸れた。


 その屑魔石を小さめの箱に付いた蓋の中に幾つか放り込む。箱の中には純銀の板が入っている。箱は上辺に少し厚めの蓋があり、その蓋を閉じると密封される。先程の屑魔石は蓋に付いた蓋の中の狭い空間に封入した訳だけど……


「スイッチ、オン」


 蓋の横に付いてる出っ張りを押すと、反対側の四角い部分(魔石封入部の左右にそれぞれがある)……7セグメントLED表示のような表示画面に数字が浮かび上がる。上の行に封入した魔石の数。今回は20個を放り込んだので20が表示されている。下の行に純銀の魔力浸透率が表示されている。さっきスイッチを押したばかりなので0.0%のままだ。1時間毎にチェックして、数字のメモを取っていけば……まぁ、最初だし……データ取りだけしようと思う。一発で成功する訳無いしね……。だからこそ、最初から成功する訳は無いと安心して放置してたんだけど……



「ふわぁー……そろそろ寝るか」


 朝から1時間毎にチェックしていた例の箱だけど、魔石の数が残り6個となっていたので魔石を追加しようと引き出しを開け、


「20個だとまだ余裕あったし……24個くらい放り込んでおくか」


 と、合計30個と思って引き出しの袋から屑魔石を数えて24個を手に取る。


かちっ


 魔力の充填処理を継続したまま蓋を押して開く。中断すると最初からやり直しになると思い、なるべく素早く屑魔石を放り込んで蓋を閉じる。


ぱたん


「数は……と」


 6から30に増えていた。カウント処理は問題無く行われたらしい。


「んじゃ……今晩は朝まで放置だけど……魔力充填処理は頼むな?」


 と、軽く箱に触れてから寝ることにした。およそ10時間程放置する訳だが… その間に充填される魔力の量は……合計24個で24時間分。屑魔石24個分だが……起床してから6時間。合計30時間経過したことで変化が訪れるのであった……!


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 準ミスリルが一発でっ!?……それはその時になってみないとわかりません!

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