76 アイテムボックスに拘って… その76

 タナミナ兄妹がいつの間にか帰宅していて、甲司こうじの手が光っているという……。別にシャイニングなフィンガーではなく、握り込んでいる拳がやや明るく白っぽく光っていたに過ぎない。驚いた甲司が慌てて手を開くとそこには……

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──俺の拳がっ!(モウイイッテ……)──


 タナにいわれ、目を開けるとそこには白く鈍く光っている自分の拳が……


「え……何これ……」


 そして脳裏で響く声。



〈金属の合成が完了しました〉



「え?誰……って、今の声は……」


 タナでもミナでもなく、ましてや父さんでも母さんでも岬子さきこの声でもない……。そういえば聞き覚えがあるその声は……神のシステム音声?


 その昔……5歳の時に聞いた声に酷似している。



〈金属合成スキルを会得し、金属加工スキルのレベルが1に上がりました〉


〈生産系統スキルのレベル1以上が3つ以上となりシステム音声に依るフォロー体制が整いました〉


〈これよりステータスに何らかの更新や新規事項が発生した場合はシステム音声でお知らせ致します〉



(え?え?……何それ!?)


 と思いつつ、甲司はステータスを呼び出す。すると……



ステータス

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名前:匣岬 甲司(はこざき こうじ)

身体:筋C+ 体C 精A 知A++ 器A++ 速C 運C 魅E

技術:紡績Lv0+、布加工Lv1、裁縫Lv0+、革加工、革細工(布革解析Lv0)

   金属細工Lv1、金属加工Lv1、金属合成(金属解析Lv0)

   木細工Lv1、木加工(木解析Lv0)

   魔力制御Lv2、魔力付与Lv3+

固有:アイテムボックスLv2+

称号:生産技能の達人(※システム音声ナビ付与)

※身体:低← EーA,S →高

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「……称号?」


 システム音声ナビとは音声ナビゲーションが付いたということだろうか?


「……まるで、大昔のコンピューターゲームみたいだな……」


 甲司は見たことはないが、父さんたちからそのような物があったということは聞いている。まさか……自分の頭の中にそんなモノが居座るとは… その時には夢にも思わなかったのだった。だが、嫌が応にも現実にできてしまったのだった……


「兄ちゃん、大丈夫か?」


「あ、あぁ……大丈夫だ」


 タナに心配そうに訊かれ……甲司は多過ぎる情報に混乱しつつ、握っている手を開いて金属板を見る。



【金属板の解析結果】

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◎ジュラルミン100g弱の金属板

◎他、合成時に残った銅とマグネシウムの金属小片

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「これは……」


 銅とマグネシウムは体積が減っていたので、それぞれを入っていた箱に戻す。そしてジュラルミンと思われる100g弱に重量が減っている金属片だけを持つ。



【金属板の解析結果】

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◎100g弱の金属板

◎ジュラルミン100%

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「……解析結果が変わった……けど、本当にジュラルミンに変化してる……」


「どうしたんだ?」


 タナが再び訊いてくる。


「いやな……これ、元々アルミの板だったんだ」


 と、右手に持つアルミよりキラキラしてる金属片を見せる。


「ん?……アルミって……もっと鈍く光ってなかったっけ?」


 光る……というのは正しくない。正確には反射光が鈍いということだけど……。表面がツルツル加工ではないことが多いのでそんな感想なのだろう。


「今はジュラルミンって金属に変わってるんだ……」


「え?……金属ってそんなホイホイ変わるもんなのか?」


「いやまさか……まぁ、鉄は錆びると銀色から赤くなるけどさ……」


 それでも錆び易い状況でも何箇月かは掛かる筈。甲司はつたない言葉で自分のスキルで変化させたことを説明する。


「ええーっ!?……それって凄いことなんじゃ!?」


 タナは理解の範疇はんちゅうで驚愕し、ミナはよくわからないけど「スゴイスゴーイ!」……と喜んでいた。


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甲司  「他の人には内緒な?」

タナミナ「はーい!」

※不安になりながらも、一応口止めする甲司であった……(両親には後で説明するつもりではある)

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