65 アイテムボックスに拘って… その65

 見知らぬ人がナイフを売ってくれといってきた。いや、戦ってる所を見られちゃったんだよな……失敗した。断ったんだけどさぁ……探索者ギルドを介して売ってくれって……シツッコイヨナァー……モゥ……

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──あのナイフは誰が……?──


 偶には探索者ギルドに出向く。色々と買ったりしてると1箇月に決めてある小遣いが足りなくなる。いや、口座から降ろせばいーんだけどね……でも節制しないと際限なく使いそうだし……。ちなみに銀行なんて金融機関はこのご時世だ。既に死滅している。唯の壁じゃあ金庫を護れないし、普通の警護員ガードマンくらいじゃ攻撃スキルを会得した悪者相手じゃ役不足だ。


 警察機構も弱体化してるし警備会社なんかも同様だ。ヘッドショットを決めるくらいじゃないと普通の拳銃くらいじゃ中々無力化が難しいそうだ……イヤナヨノナカダヨネ……


 ダンジョン産の武器なんかもあるけど、防具をそれで固めると銃なんて無意味だ。銀行強盗とかが横行して銀行や金貸しなどの金融業は根こそぎ潰れてって……自然淘汰された。その銀行の代わりに現れたのが攻撃スキルなどを会得した冒険者などが警備している、各ギルドの金庫って訳だ。


 ……という訳で、現在いまでは冒険者・探索者・商業ギルドなどが銀行の代わりをしている。勿論利子なんて付かないけど、預けたお金が守られているだけでも使う意義はある。


 商人ギルドも口座を持てるんだけど、あちらは口座だけを持つ……なんてことができない。その上、口座の維持費で毎年10%が目減りしていく。最低の手数料は1万円だ。つまり……1万円より多く預けてないと次の年は0円となる。引き落としがなくても……例えば10万円を預けていた場合は22年で残高が0円になり口座は消失してしまう……100万円なら44年で0円となるのだ。


※手数料より残高が少なかった場合は手数料引き落としの段階で口座は消失する(商人として活動していれば売買をする度に上納金が発生する為に口座が消失する心配は無い)



 探索者・冒険者の両ギルドでは子供でも口座は持つことはできる。将来、口座を持つギルドにギルド員として登録する予定なら10歳から開設することができる。甲司こうじも探索者ギルドの口座を所持している。つまり……毎月100万円振り込まれていることも何の名目で振り込まれているかは……


(丸っとバレテーラ状態なんだよな……)


 その代わり、余計な詮索をして来ないので商人ギルドよりはマシだ。冒険者ギルドも恐らく同じかと思われるがこの第5区は弱い……。何がかというと、強い冒険者が不在でギルドの権力も弱く庁舎も小さいのだ。つまり、何かあっても所属しているギルド員=冒険者たちを護る力が弱い……ということだ。その点、ダンジョンが傍にあるので探索者ギルドはそこそこ強い力を有している。加えて探索者たちも多く属しており、何かあったとしても護る力に不足は無いだろう。


(まぁ……何かあったら糧飯かてい先生のお父さんが護ってくれると思う)


 有力な取引先でもあり、娘の顧問してる部活の生徒だしね。少しくらいは目を掛けて貰えてると思う。で……今がその時だと思うけど……


※脳裏に世界最後の日なゲッ●ーの旧OPが流れたとかいっちゃいけませんw



「なぁおい?……あの小僧の持ってたナイフ、売ってくれねーか?」


「……あの、いきなり何なんですか?」


「あぁ……すまない」


 かくかくしかじか……じゃわかんねーよ! 曰く、子供がバシバシとダンジョン第1層でモンスターを狩りまくってた……との説明を受けた訳だ、コレガ……


(あぁ……あのバカ)


 曰く、子供に分不相応……いや、危ないし、自分が使ってみたい……いや、その。


(本音が駄々漏れですね?)


 要は、売ってくれといったら断られたと。


(本来なら命の危険が迫ってる時以外は使うなっていったんだけどね?……アノヤロウ)


 曰く、100万円でどうだろう?……といっても断られたと。


(まぁー……多分鑑定先生のいう通りだと……500万円くらいすんじゃないかなぁと……タッカッ!)


 詰まる所……作ったのってあんたじゃね?……と。だったら売れよバカヤロウ!(T-T)……ダソウDEATH。


「……はぁ」


「じゃ、売れ!ほら金はあるぜ!!」


 と、


 ぽい……ドサッ!


 ……と、地面に100万円の札束が投げられる。


「お、やりぃっ!」


 タタタっ……と走って来たどこぞの小僧が札束を掠め取って逃げ去って行く。


「……盗られましたね?」


 数秒経っても動かない相手に声を掛けると、


「こっ……こんガキャアーっ!!!」


 と、追い掛ける男。多分探索者だと思うけど……逃げるガキより足が遅い。


「はぁ……アホだアホだと思ってたけど……こんな往来で札束投げるとか……」


 心底アホだなと呟く同行者……恐らくこちらも探索者。


「すまんな……まさかあんな言動とアホな行動をするとは思わなかった」


 聞けば一応知り合い……というか卒業した学校の元クラスメイトだったらしい。老け顔だけど、まだ大学生くらいの年齢らしい……この辺は大学なんて全部潰れてて高校を卒業したら冒険者か探索者か商人か……後は頭悪くて体力があれば運輸ギルドに就職してポーターになるくらいしかないけど。


 専門職の生産ギルドは専門学校に高い金を払って技術を学ばないといけないみたいで、この辺にはそういう学校も存在しないから絶望視されてる……トイウハナシ。セチガライヨネェ……イヤ、ホントウニ……


※中央の第1区にその手の学校は集約されてるって話だけど、住むにも通うにもお金が必要っていう……



 基礎の小学校と中学校で勉強して、その手の学科が優秀だと召喚されることもあるらしい。奨学金で学費諸々を出してくれて、最優秀の生徒はそのまま生産ギルドに就職しても返済の義務は無い。そこそこの成績で卒業できれば矢張り就職に困らないし、内地……第1から第3区までの被害が少ない区画での生活も夢じゃない。第4区以降は外部区画で、巨大な隔壁と分厚い壁で閉ざされている内地より危険で生活基準も低い……らしい。


 ちなみに第0区はこの国の護らなければいけない方々の住まう地、と聞いている。多分……昔聞いた「てんのう」……という方々の子孫が住まわれてるんだろうと思う……。まぁ、また聞きで本当に生きているのかどうか……なんて知らないんだけどね。


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 TVとかネットも途絶してるので(そもそも大電力が必要なインフラなんて稼働していない)情報の伝達はトランシーバみたいな魔導具か……手紙、町内の回覧板、町内や各ギルドの軒先に貼られる掲示物などです(新聞などに比べれば限定された情報しか書かれていないという……)

 電気も本当に使えるのは自家発電してる場所でしか使えないしガソリンじゃなくて魔力を変換して発電してるので、かなりコストが悪いのDEATH!

※そもそもガソリンで動く発電機とか自動車とか、ほぼ全部ぶっ壊れてるw……ので、空気は美味いと思う

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