57 アイテムボックスに拘って… その57

 タナミナ兄妹が泊まった翌朝……。妹サマとミナたちは一晩でだいぶ親しくなったようだ。いや、タナは異性の部屋に泊まったことで、かなり疲れたようだが(苦笑)……ワカランデモナイ

 そして……甲司こうじの両親は説明責任を果たせと甲司に要求を突きつけるのだが……

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──5日目 その2──


「かくかくしかじか」


「っておい!」


 甲司の言葉に父親が突っ込む。


「詳細は前話の後書きよね?」


「母さん!」


「話が早くて助かる!」


「こらっ!」


 ……という訳で、前話の後書き参照で……え、駄目?w



「……という訳で、幼い兄弟がこれから寒く……もう寒いけどね?……なる季節で宿にも泊まらずに野宿するというのはどうかなと思うんだけど……」


「「……」」


 両親は黙ったまま頷き、先を促してくる。


「だから、うちに泊めたらと思うんだけど……勿論、食費くらいは出して貰うけど。僕から出してる報酬の食費を母さんに出せばいいよね?」


(毎日出すよりは、一括でひと月分くらい前払いすればいいと思うけど……)


 突然母さんが席を立ち……


「甲司……」


「え、はい、何?」


 ゆっくりと近付いて来て……いきなり抱き着かれた。なにごと!?


「か、母さん……何で!?」


「……立派に成長してくれて……母さん、嬉しいわ?」


「あ、うん……」


 僕は立って説明してたんだけど、母さんは僕より身長が……ぐっ、ま、まだ成長途中なんだ。いつか母さんに追い着き、追い越してみせる! ……じゃなくてっ!!


「母さん、苦しいから離してっ?」


「ダメよ?……嬉しいんだからまだもうちょっと!」


 ……唐突だがうちの母さんは抱き着き癖がある。しかも豊満な胸に頭を……くっ……息苦しくなって……きゅう……


「……母さん?」


「なあに?」


「甲司、気絶してるぞ?」


「え……ちょ、やだ!?……甲司!……甲司しっかり!!」


 息苦しいと同時に、母性の象徴の中で僕は安らかに息を引き取ったのだった……



「……息を引き取ったじゃねぇ!」


 がばっ!……と起きると、自室のベッドの中だった。気付くと、今まさに起こそうとしていた妹サマと……


「母さん?」


「お、起きた?……昨日はごめんね?……こーちゃん」


 幼い時の呼び方に戻ってる母さんが涙ぐんでいた。


「……お兄ちゃん、お母さん泣かしたって父さんにチクりにいこうかな?」


 と、悪戯心満載の小悪魔な妹サマが横で笑っニヤついている……


「……そーいやあの兄妹は?」


 と話を逸らすと、


「まだ寝てるわよ。何処どこで寝起きさせるか考えないとねぇー……」


 と思案顔になる母さん。


「そーいや父さんと母さんの隣りの部屋が空いてるんじゃないっけ?」


 殆ど物置と化してる部屋がある。元々は兄さんの部屋だったけど家を出て使わなくなり、兄さんの私物と使わない布団類を置いてるだけの部屋だ。


「そうね!……じゃあ不要な物を片付けて掃除しましょうかっ!」


 ……と、あっさり兄妹の住む場所問題が解決したのだった……



「母さん」


「なあに?」


「布団とかの布類、処分するの?」


「そうね……あの子たちが使う物以外はそうなるかしらねぇ?」


「なら、僕の布加工スキルの鍛錬のついでにあの子たちの衣類とか作ってもいいかな?」


「そうね……いいわよ?」


「有難う!……じゃあ、要・不要の仕分けは任せるね……僕にはその辺はわからないし」


「わかったわ。じゃあ後で」


「うん!」


 ということで、母さんの手伝いで2階へと向かう。要らない布団とかは廊下に出して、必要なのは一旦両親の部屋に置いておく。実は、布系スキルの「紡績」でほこりをかき集めて糸を編むことができるんだ。それに気付いたのはタナミナが集めて来る糸くずを紡績スキルを使って糸を編むんだけど、


「これって埃を集めても同じことができるんじゃないか?」


 って気付いたんだ。埃って元は衣類から出た糸くずが汚れてできたものが主だし……まぁ、糸くずだけじゃなく空気中の細かい汚れとかも付着してるんだけど。


 だから、


「埃を集塵しゅうじん……糸くずから糸を生成……浄化」


 このコンボで部屋中の埃をかき集めて糸くずの塊を作り出す。糸くずから糸を生成して糸巻き棒を生成。付着した汚れを浄化で綺麗にする。え?……棒は何処から出てきたのかって?……気にしたら負けってことで。ま、まぁ……後で木の棒でも金属棒でもいいので差し替えないと消えちゃうんだけどね。多分、一時的な魔力の棒だと思う。


「ふぅ……少し疲れたな」


 見た感じ、この部屋の空気も爽やかになった気がする。少し深呼吸をしてみて……空気も問題ないな。


「これなら埃に関しては綺麗に除去できたけど……」


 土埃らしい汚れは取れてないので窓や壁の拭き掃除はしないとダメっぽい。取り敢えず持って来た雑巾は無駄にはならないか……と思いつつ、まずは水拭きをしていくのだった……。勿論、きつく絞らないとダメだから手が痛い……水拭きが終わったら空拭きだ! そのまま放置しておくと、また空気中に漂ってる汚れが付着しちゃうからなぁー……


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掃除が済み、タナミナが戻って来た時点で2階の空き部屋に案内してから説明する甲司。

甲司「タナにミナ……今日からうちに住む許可が両親から出た。この部屋を使って欲しい」

タナ「え、いいのか?」

ミナ「凄ぉーい!……ほんとうにここに住んでいいの?」

僕と両親が頷くと、敷いてあった布団にダイブして喜びを体全体で表現する兄妹。

父 「調べるのに苦労したよ……役所で確認したら、死亡届けが出てるとは思わなかったしな……」

母 「なっ……あの子たちはまだ生きてるというのに?」

父 「あぁ……恐らく、両親が亡くなった後、生死が確認できなかったんだろうな……」

甲司「じゃあ死人認定扱い?」

父 「まさか……彼らのギルドカードを預かって、きちんと戸籍を復活させてきたさ」

母 「そう……で、今はどんな扱いなのかしら?」

父 「……母さん。扶養家族が増える……っていったら、どう思うかい?」

母 「あ、あなた……」

その後は、子供の教育に良くないと両親には自分たちの部屋に戻って貰った。いや、まぁ……その晩、夜中には延々とプロレスごっこの音が響いてたとだけ……

いい年してまた子供増やすのかな?とか、生活費とか大丈夫なのかな? とか……心配しなかったよ?……てか……ギシアン、ウルセーッ!!

※父だけの収入では心配だけど、一時的になら甲司の貯蓄で大丈夫じゃないかなと……何しろ予定収益金総額が億だし?w

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