55 アイテムボックスに拘って… その55
タナとミナの世話を焼いて別れた後、
一夜明けて顔を洗い……朝食を摂った後、今日は何をしようかなと思案する。
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──4日目──
「そうだ……」
昨夜の回収された素材で……
「破れたビッグラットの毛皮」を修復してできた「ビッグラットの毛皮」と「ダンジョンスネークの脱皮殻」を修復してできた「ダンジョンスネークの皮」を用い、「破れたスパイダーシルクの布」をバラして作った「スパイダーシルクの糸」で縫い合わせ、子供でも装備できるようにサイズ調整した「革の初級胴鎧」を製作した。
材料は上記の3つだけでなく、ビッグラットの毛皮(表層)と、ダンジョンスネークの皮(下層)の間に……衝撃緩衝材として「スパイダーシルクの布」……それを薄い鉄板でサンドして作った加工鉄板を間に挟んだんだ。スパイダーシルクの布は、同素材の破れた布をバラして再度編んだ布なので、実質コストゼロだ。
「消費したのは僕の魔力と作業時間だけだからな……」
思いついてから大体3時間は経っていた。兄のタナの分と妹のミナの2つを製作し、ちょっと疲れたので昼まで寝ることにした……
・
・
「……きて」
んんっ……
「起きてお兄ちゃんっ!!」
ばしっ!
「痛ぇっ!?」
おでこを思い切り平手で
「なっ!?……ななな、父さんにも殴られたことはなかったのにぃっ!!」
「いや、何いってんの?」
何のネタかはわからないけど……と前置きし、我が妹サマは呆れた……と溜息を吐いている。
「お昼ご飯要らないならあたしが食べちゃうけど?」
と、唯でさえ少ない我が家の飯を奪い喰らうと食欲旺盛な妹サマがのたまう。
「たっ、食べる、食べますよ!……だから食べないで?」
……という訳で、わざわざ起こしに来てくれたことを感謝しつつ……部屋を出て昼飯を食いにキッチンへ向かうのだった。
・
・
食後……
「
「うん、そう。知り合いの兄妹に作ってあげたんだけど……」
「ダンジョンに兄妹で潜ってるんだ。勇気あるねぇー」
「いや、そいつらの親がね……」
「毒親なの?」
「いやなんでそうなる……亡くなったそうなんだよ」
「ふぅん……それで気の毒に思って?」
「いや、今、僕の依頼で素材とか回収して貰って来てるんだけど……」
「お兄ちゃんの命令で?……
「いや、何でそーなるんだよ……まぁ、身に着けてるのがボロ着だけだしな……」
「それで魔物と戦って?……武器は?」
「いやいや……小学生中退でそりゃ無謀過ぎるだろ!」
……とまぁ、同じ小学生(といっても妹サマは6年生)なので胴鎧を着てみて欲しいと頼もうとしたのだが……大体サイズ感がミナと同じだったし。何故か質疑応答で時間を喰ってしまい何とか着心地を聞けた頃で約束の時間ギリギリになってしまった……orz
(何でこれだけで数時間も掛かるんだよ……)
余り家の外の話しなんてしなかったし、興味があったんだろう……と思うことにした。
「さて、急がないと帰っちゃうな……」
という訳で、大慌てで予め用意しておいた弁当とかの確認。
※時間停止の布大袋に入れてるので中身を再確認しただけ
(後は……)
小銭入れに入れてる報酬の代金と銭湯代。それとコインランドリーの代金も……
「あぁ、俺のお古でいいかなと古着も幾つか入れたっけ……」
タナとミナに替えの衣類を入れておいたんだった。女の子に男用の衣類はどうかなと思ったんだけど……
(まさか妹サマの古着とか……ましてや下着なんか何に使うんだ!?……っていわれそうだしな……)
取り敢えず布浄化で綺麗にしてあるんで目を瞑って貰おう!
※コインランドリー代には洗剤代も含めてある。銭湯代にも入浴セットの代金も含む(入浴セットには、借りタオル・石鹸(小)・シャンプー(小)などが含まれる←余ったら返す仕様)
・
・
「おかえり」
「「ただいま!」」
今日も外で待機していた。4日目ともなれば物珍しさもなくなったようで、こちらを物珍しさで寄越される視線も少なくなった。いい傾向だと思う……
「じゃあ先に」
「おう」
「また後でね!」
と、先に探索者ギルドに入って行く兄妹を眺め……
「じゃ、僕も行くかな……」
と呟いていたら……
「お兄ちゃん?」
と、いきなり背後からの声にビビる!
「うわあっ!?」
「……何驚いてるんですか?」
「い、いや……いきなり背後から声掛けられたら誰でもびっくりするだろ!!」
と、またもや周囲の注目を浴びる甲司にその妹サマ!w
「……と、兎に角……ここじゃ注目を浴びるから中へ……」
という訳で、
・
・
「おう、待たせ……誰、その子?(可愛い子だなぁー)」
「むむ!?……か、可愛い(甲司さんの彼女かな?)」
「まぁ!……可愛いだなんて……あなたもあたしには負けているけど可愛らしいですよ?」
「……ハァ。取り敢えず目立つから行くぞ?」
という訳で、小中兄妹たちは応接室へと向かうのだった……イヤナニ? ソノコトバノオウシュウ……
・
・
「あー……話しの前に紹介するよ?」
「
「……(僕が紹介するっていってんのに……)」
ジト目で見るが、岬子は
「僕はタナ。宜しく……(岬子ちゃんかぁ……同い年なんだな)」
「あ、あたしはミナよ。よろしくねお姉ちゃん!」
尚、タナは在学であれば岬子と同年齢でミナは1つ下ということだ。僕の妹サマが散々質問攻めしてくれたお陰で時間が来ちゃって……いやまぁ、この質問魔を放置してたらこうなることはわかってたんだけどね……ハァ。
・
・
「悪いな……時間取らせちゃって」
「いえ……それよりいいんですか?」
「何が?」
タナの「いいんですか?」の意味がわからず訊き返すと、
「いえ……今晩泊めてくれるって……」
「あぁ……妹サマが無理いってんだし、いーんじゃないか?」
「妹サマって……あ、いえ、何でもない」
「……まぁ、どーせ安宿に泊まってるんだろ?……一泊分浮いたと思ってくれりゃいいさ」
「え……と」
「あのねあのね、いつもミナたち「黙ってろ」……え……と……なんでもない」
何か含むことでもあるのか……2人は黙り込んだ。先頭を浮かれて鼻歌を歌ってる妹サマだけが浮いていて、後に続く3人は暗くドヨヨンとしていたのが印象的だった……
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タナミナ兄妹はホームレスに交じって安全そうな場所で夜を明かしている為、安宿には泊まってない……以前、偶々泊まった安宿で鍵をこじ開けられ、その時の所持していた金目の物を取り上げられ……妹まで攫われそうになって命からがら逃げたことがあり、それ以降は宿には泊まっていないのだ。
その宿は従業員と強盗犯が共謀しており、時々そのような事件が起きている危険宿だったという……
※宿泊費が安い宿は、そのような危険が伴うということDEATH……怖っ!
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