48 アイテムボックスに拘って… その48

 探索者ギルドに呼び出しを喰らった匣岬 甲司はこざき こうじ。探索者ギルドに来たはいいが、問答無用で奥に連行されていく……唯、手を繋いでいるお姉さんの手が柔らかいなぁと……(チョッ!w)

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──応接室?……いいえ、取調室DEATH!──


「じゃあ、ここで少し待っててね?」


 と、受付のお姉さんが案内して来たのは警察の取調室っぽい狭くて薄暗い部屋だった。……とまぁ、


「待っててね?」


 といわれて、かれこれ15分くらい過ぎたんだけど……いや1時間とかじゃないんだから「遅い」っていうつもりはないけど。呼び出された理由も無しに軟禁状態(一応、ドアは開くのは確認した)なのは如何なものか……とか考えてたら、外がにわかに騒がしくなってきた。


 耳を澄ますと、聞き覚えのある少年少女と、大人の男性の声のようだ。勿論男性の声は聞き覚えはないけど……



「やあやあ、待たせちゃったね!……あ、そうそう。こいつらにアイテムボックスを貸したって聞いたんだけど、本当かね?」


 部屋に入って開口一番、大人の男性が質問してくる。


「え……っと、どちら様で?」


 甲司が席を立って会釈してから訊くと……


「あぁ、すまん。俺が探索者ギルドのギルド長を任されている藤堂だ」


(名前はいわないのか……いや知りたい訳じゃないけど)


「あ、はい……で、貸したのは本当です。何かトラブルでもあったんですか?」


 リュックが重さに耐えられなくて破損でもして中身をぶちまけて迷惑でもかけたんだろうか?(一応布地はきつく締めて早々壊れないように工夫してたんだけどな……)と考えていると、


「いやな……ダンジョンのそばに買取所あるだろ?」


「あぁ……ありますね」


 1度もお世話になったことはないけど、見たことはあるので頷いておく。


「こいつらがお前さんから借りたアイテムボックスを売り飛ばそうとしたそうだ」


 一瞬、何をいってるのかわからなくて。


「……は?」


 と、驚いて間抜けな声を漏らしてしまう。ちなみにタナとミナの2人は甲司からは見えないが後ろ手に縛られており、そのロープの先は背後で立っているギルド職員が無言で握りしめていた。パッと見、屈強そうな筋肉ムキムキな男性で、如何にも強そうな雰囲気が漂っている……


「ふむ、騙されたとかそういう線か?……まぁこいつらがアイテムボックスのような高級品を持ってること自体がおかしいからな……「あ、いえ」……む?」


「いえ……その……僕はまだダンジョンには潜れない年齢なんです」


「ふむ……ということは、まだ15歳を満たしてないと」


「はい。で、この2人は既にダンジョンに入っているようなので……」


「まぁ、未認可だけどな?」


 15歳未満でダンジョンに入って魔物と戦闘行為を行うことは国で禁止されている。但し、就業可能な年齢に達していない未成年が天涯孤独の身になった場合……所謂いわゆる、両親や保護者が何らかの都合で傍に存在しない状況になった場合だ。死亡、或いは捨てられてしまい、頼れる人物が居ない孤児なんかが該当するが……このご時世、無償で孤児院を運営する酔狂な者も居ないこのご時世だ。


 そんな者たちのせめてもの救済措置としてダンジョンに入って物資を拾って来るという許可が出るのだ。但し、拾える物はゴミみたいな物しか無いし、ギリ素材といえる物も極安い値段でしか引き取って貰えない。そんな極貧の彼らに降って湧いた、大金を得られるかも知れないチャンスだ。


 甲司の取引に応じる振りをして売り飛ばす……余裕があるなら兎も角、無い者には売る一択しか無かったのかもしれない……そこまでの経緯を把握した甲司。


「まぁ……大体把握しました。それで?」


「それで、とは?」


「いや、彼らがやったのは所謂、犯罪行為なのは理解しましたが……」


「あぁ……貴重品を何故安易に貸したのかは不明だし理解に苦しむが……」


 ジロリ……と背後の2人へ視線を寄越し、再びこちらへと向けるギルド長。


「未成年とはいえ、犯罪行為を犯した訳だ。無罪放免……とはいかんな?」


「具体的には?」


「そうだな……いい年した大人だったら犯罪をしたと認めるまでケツを棒で叩いて、それでも認めなきゃ片腕を落として強制労働の刑……か? 流石に両腕や足を落とすと労働もクソも無いからな」


 2人の発する、カタカタと震える音をBGMに調子に乗る藤堂のおっさん。


「勿論……唯、片腕を落とすだけだと痛みは一瞬だからな?……1本1本の指の爪を剥がして拷問もするし、クライマックスは指の骨を1本1本折ってやるんだ……これは痛いぞぉー?」


(いや……漏らしそうなくらい震えてるんだけど……後ろの2人。いいのか?……これ……)


 聞いてるこちらも痛そうな顔をしてたら、ついに大声を出して泣き出した。ちなみにミナが泣いて漏らしてしゃがみ込んでごめんなさいと泣きじゃくってて、釣られて泣き出したタナがミナに抱き着いて、一緒にしゃがみ込んで……足元に臭気を放つ液体の池を作ってて……誰が綺麗にするんだろね?(苦笑)


(あーあ……僕、知ぃーらねっ……)


 取り敢えず即席で造ったマスクで顔を覆い、


「あ……不味い、脅しが効き過ぎたかっ!?……やべぇ、怒られるな、こりゃ……」


 と、さっきまでの凄みを利かせた表情が一転、情けない顔で2人をあやすも全く効果なし。困り顔マックスとなっていた……ザマァw


 ちなみに後ろ手に縛ってたと思ってたけど背後のギルド職員が持ってる間だけのようでロープを離すとすぐに解けるような縛り方をしてたらしい……きつく縛ってたら痛いしそーなるか……と、甲司は黄色い液体の臭いを後で落とさないとなぁ……と溜息をくのだった(苦笑)


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 女性ギルド職員が廊下で気付き、中の様子を見て怒鳴りながら突入して……取り敢えずシャワーで汚れを落としたり着替えさせたりして反省文を書かせたり(ギルマスにw)……甲司は甲司で、当初の予定通り依頼を遂行して欲しいと意思を示し……ならばと契約書を交わすことに。

※契約魔法が掛かっていて、契約内容を破ると耐え難い頭痛(鎮痛剤効果なし)が襲う

 契約書1枚で100万円掛るが、永続的に効果が有るので重要な契約をする時に良く用いられている

 契約者する者全員の血判が必要で、血判を押した後に「契約する」の言葉で締結される

 無論、契約者となるタナミナのみ契約を破った時に頭痛を被り、被契約者である甲司には何ら被害は無い

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