46 アイテムボックスに拘って… その46

 タナとミナ。2人の少年少女の元小学生の探索者ペアだ。余り詳しくは聞けなかったが両親が亡くなったそうで今は孤児となり……通っていた小学校も退学してしまったという……

※現在は学校教育は義務教育ではなく、学費諸々が払えなければ強制退学となる。教育もタダではできないと実に世知辛い世の中だが、学が無いと世間で搾取されるので元々義務教育であった中学校まではと親たちは頑張って通わせている訳だが……その点ではタナミナ兄妹は不幸であった……

 探索者として生活費を稼いでいた2人だが、未だダンジョンに入ることができない甲司こうじにとっては渡りに船だ……斯くして、アイテムボックスの鞄(とポーチ)、それに重量軽減を施したリュック2つを貸す代わりに素材を取って来て欲しいと依頼したのだった!

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──じゃあ、行ってくる(わ)!──


「じゃ、明日からでいいから宜しく頼むね?」


「あぁ……」


「任せておいて!」


 取り敢えず口頭だけど約束して別れた。遠ざかって行く甲司を見送るタナとミナ。


「……明日からは一杯持って帰れるよね?……もう何回も行ったり来たりしなくても「ミナ」……何よ?」


「売りに行くぞ」


「はぁ?……あぁ、今日の獲物とか?」


「いや……これだよ」


 タナは貸すだけだぞ?……といって渡されたアイテムボックスを指し示す。


「何いってんのっ!?……折角貸してくれるっていったのに……恩をあだで帰すつもりっ!?」


「……でも、これを売り飛ばせばとんでもない金になる。リュック1つを残せば苦労せずに運べるだろ」


 どうやら重量軽減リュック1つとショルダーバッグとポーチを売り飛ばすつもりらしい……


「でもっ!……何処どこで売ればいいのよっ!?……あたしらにそんなコネなんて無いわよっ!?」


「ダンジョン資源買取所で売りゃいいだろ……」


 と、タナがミナの制止を振り切ってポーチを奪い歩いて行く……



「いらっしゃい!」


 ダンジョン資源買取所の中年親父が2人を見て笑顔で挨拶する。


「親父さん……あの……」


 多少歯切れが悪く……タナが小さくまとめたアイテムボックスを手にうつむいている。


「どうした?……いつもの獲物じゃあないのか?」


 手に握っているモノを見て怪訝けげんな声を出す親父。いつもなら小さい魔石や他の探索者が見向きもしないドロップ品や半壊したアイテムを拾い集めて戻ってくる筈だが……


「これ……幾らで売れる?」


 おずおずと差し出して来たのは……リュックサックと……ショルダーバッグと紐付きポーチ。


「これ、拾い物か?」


「う、うん……」


「……」


「……はぁ」


 3つ共小屋の奥に引っ込める親父。


「幾らだよ!?」


「これ、盗品だろ?」


「ちっ……違うよ!!」


「じゃあ何だ?……ほぼ新品じゃないか」


「それは……その……」


匣岬 甲司はこざき こうじって人に借りたのよ……でも、タナが売るって……」


「ミナっ!?」


「何よ……本当のことでしょ?」


 掴みかかっているタナと両肩を掴まれているミナ。それを呆れた表情で見るDRPの親父。


※普段はそんな長ったらしい名前で呼ばれず、DRPと呼ばれている

  Dungeon Resource Purchase placeの頭文字を取っている



「お前らな……初犯だから見逃すが、これは貸した奴に返すからな?」


「えぇっ!?」


「貸した奴は匣岬 甲司つったか?……そいつが通報するつったら止めることはできない」


「「……」」


「まぁ……お前らにこんな物を貸すくらいなんだからお人好しなんだろ?……期待しないで待つことだな」


 ……という訳で、2人の元小学生の孤児たちの沙汰は、甲司次第となったのだが……果たして?


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 因果応報。良いことをすれば良き報いが……悪いことをすれば悪い報いが……果たして、2人にはどんな報いが与えられるのでSHOWかっ!?

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