38 アイテムボックスに拘って… その38

 糧飯かてい先生のご実家に連行された匣岬 甲司はこざき こうじ。まぁ……アイテムボックス付与の依頼を請けて来たんだけど、まさか先生の実家とは思わなかった……

 さて、ダンジョンスパイダーシルクの紐付き布袋に付与するってわかったんだけど……どの付与を幾つ付ければいいのかなぁ……?

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──ようやく依頼を請ける時!──


「……待たせたな」


 と、先生の親父さんがテーブル横の椅子に着く。


「あ、いえ……」


 促されたので着席する僕。先生はちゃっかりと先に着席してたけど……



「まず、それは5つ付与して欲しい」


「え……っと、紐付き布袋の数……ですよね?」


「無論」


 アイテムボックス付与の個数は5つと……メモメモ。


「付与するスキルは……?」


「内容量拡張。重量軽減。可能なら時間経過軽減だが……無理なら先の2つで構わない」


 いや、その3つ付与したら国宝級なんじゃ? 倍率によっては先の2つ付与でも相当なもんだと思うんですけど……


「あの……1ついいですか?」


「何かね?」


「僕は……あ、匣岬 甲司と申します」


「名前は聞いている」


「あ、はい……僕はアイテムボックス付与はですね……まだ魔物素材の付与はやったことないんです」


「うむ、それも聞いている」


 はぁ……と溜息をコッソリと吐く。


「ですので、2つ以上の付与は……未体験な訳でして」


「そのようだな」


 普通品質の素材の袋や箱にしか付与してないのは聞いているらしい。


「ですから、未体験の魔物素材にアイテムボックス付与しても……成功するかしないかもわかりません」


「そうか……なら、5つの袋の内、4つまでは失敗しても構わない」


「……え?」


「元々失敗前提の依頼だからな。最低、1つは2つのスキル付与が成功していれば良い」


「……はい?」


「不服か?」


「あ、いえ、そういう訳では……」


 とはいえ、最初の3つ付与できれば……というのは無茶振りもいい所なんじゃ……


「あー……わかりました。では、最初は2つ付与できるかどうか……練習させて頂きます」


「うむ。では頼んだ……」


 先生のお父さんは頷くと椅子から立ち上がり、この部屋を出て行った。残された先生と僕はというと……


「じゃあ、飲み物とかお菓子とか用意してくるから。あ、トイレは此処を出て右に少し行くとあるから」


 と、まくし立ててから退室して行った。ぽつんと独り残された僕はというと……


「……はぁ。やるか……」


 といいつつ、5つの紐付き布袋が乗ったテーブルを見て盛大に溜息をくのだった……


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甲司「えーっと、まず何倍の内容量拡張と重量軽減何%にするんだろうな……」

 聞いてないが何処かに依頼票とか無いかなと探すが……無かった。

甲司「……初めての魔物素材のアイテムボックス付与依頼が大雑把過ぎる件について……」

 先生が戻って来たら聞いてから付与作業を開始しよう……と決めた瞬間であった……orz

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