室(学校)内で鍛錬編

11 アイテムボックスに拘って… その11

 スラム街の連中に襲われてから甲司こうじは人が居ない場所でのスキルの鍛錬ができず困っていた……仕方なく、自室で家に誰も居ない時を狙って鍛錬を繰り返していた。幸い、学校から帰った後……母親が買い物に出掛けている間は家に誰も居ない時間があるからだ。

 尤も、運が悪いと全くそんな時間が取れないのもまた事実……そんな訳で、丁度いい鍛錬場所があればと探していた……

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──学校にそのような場所があるらしい──


「はぁ……探すとなるとなかなかないなぁ……」


 溜息を吐きながら廊下を歩いていると、とある教室に目が留まる。


「……技能訓練室?」


 そーいえば、僕には能無しノースキルという立派な称号が付いてたからか、さっぱり縁の無い場所だ。


(……先生に相談すれば使わせて貰えるかな?)


 取り敢えず、放課後に相談してみることにした。



「何ぃ?……スキルが生えたってぇ?」


「あ、はい」


「何のスキルだ?」


「……えと、裁縫さいほう……です」


 他にも色々あるんだけど余りひけらかしたくはない。それに「ユニークスキル」である「アイテムボックス」はバレると何か色々とヤヴァそうだし……という訳で、無難そうな「裁縫」をいってみたんだけど……


「あー、それなら家庭科室でやれ。それで問題無いだろ?」


 と、1枚のカードと鍵を渡された。


「えと……?」


「使用許可証と合鍵だ。料理研究部と総合家庭科部が日を決めて使ってるからな。裁縫なら隅っこでもできるだろ?」


 ええーーーっ!?……と思っていると、


「顧問は糧飯かてい先生だ。取り敢えず挨拶にでも行ったらどうだ?」


「え……あ、はい」


 僕は担任の短忍たんにん先生に頭を下げてから辞し、先生の席順を見てから糧飯先生の元へ……行ってみたけど、生憎あいにくながら不在だった。


「今なら家庭科室じゃないか?」


 との、有難い大声に軽く頭を下げてから……取り敢えず職員室を出る。先にいって欲しかったけどね……そして家庭科室へ……1階から2階へ上り、渡り廊下に向かう途中にある。


こんこん……


「すいませーん……」


 返事が無い。唯のしかばねのようだ……じゃあなくて、もっかいノックする。


こんこん


「すいま……うわっ!」


 いきなり、


ガタッ……ガタッ……ガラガラガラ!


 ……と、ドアが開く。少し建て付けが悪いので思いっきり開かないと開かない仕様だ……古い学校ってこんなんばっか。


「誰?」


 出て来たのは女子生徒だ。見たことない顔だから別クラスか別学年だろう。


「えと……糧飯先生はいらっしゃいますか?……こちらにいるかもと聞いて来たのですが……」


「あぁ……ちょっと待ってね?」


「あ……」


 自己紹介を忘れてたなと思って声を出そうとしたら、せっかちなのかもう目の前から消えている女子生徒。


「うーん……」


 上げかけた右手をわきわきと動かすが意味が無いので戻そうとすると、


がしぃっ!


 と、いきなり腕を掴まれた!


「え、な……」


 下を向いていた甲司の腕を掴んでいたのは……


「えっと、入部希望者かしら?」


 といっている、見た目は可愛らしいロリ眼鏡が姿恰好から生徒ではなく先生だろう存在だった。



「先程は失礼したわ……」


「あ、いえ……」


 此処ここは家庭科室の中の隅の席。今日は総合家庭科部で火を使う……要は料理を作るとかで顧問の先生が監督していたという訳だ。そして総合家庭科部は料理研究部より圧倒的に人数が少ないとかで……具体的には現在の部員が4名。逆に料理研究部はそこそこ人数が居るらしい。


 家庭科室の後方……水道とコンロなど料理に必要な施設がある方で部員たちはこちらが気になるのかチラ見しつつ料理をしていた。


(火を使ってるんだから注意散漫だと不味いんじゃ?)


 とは思うが、突っ込まれながらやってるので、まぁいいんだろうか……?


「それで、私に用事があると聞いたのだけど?」


「あ、はい……実は……」


 裁縫スキルが生えたので家事で手伝いしたいので是非スキルのレベル上げをやりたい……と説明した。できれば人が居ない時に1人でやりたいともいったのだが……


「そんな勿体ない……いえ、コホン……うちの部員でも裁縫スキルを習得したい人も居るのよ……できればコツなんかも教授して貰えると助かるのだけど?」


 と、逆に先生に先生してくれといわれる始末。


「そんな大変ですか?……布袋の縫製とか解れた糸を縫い直すとかしてたら勝手に生えて来たんですが……」


 他に解けた糸を紡績モドキしてたら紡績とかも何故か生えたんだけど……こっちはいわない方がいいかなぁ?……まぁ、糸を扱うという点で関連してるからか、布や糸に関する作業を満遍なくやってると生え易い気がしないでもない。


「そんなんでスキルが生まれたら苦労しないわよ!」


「そーそー」


「流石、スキル有りの人は上から目線ですわね?」


「羨ましい……」


 とか、いつの間にか集まっていた総合家庭科部の面々が集まっていた。


「アナタたち?……きちんと火の始末はしたの?」


 と先生が突っ込むと、


「大丈夫です!」


「ちゃんと消しました!」


 というので端っこのコンロを見ると……まぁ火は消えてたが……


「あれ、泡吹いてない?」


「そんな筈は……あ!」


 余熱で吹いている泡がぼこぼこと噴きこぼれていた(苦笑)


「鍋をコンロから外せっていったのにぃーー……」


 ドップラー効果でも出てるのか、むっちゃ早い駆け足で鍋を……


「あ……」


 そのままの勢いで鍋を掴んだせいで、慣性の法則が働いて壁に激突した鍋の中身が……


(突っ込むと命ガヤヴァそうだから、黙っておこう……)


 先生を見ると、明らかに気疲れしたように顔を手で覆っていた……オゥノゥ……ッテカ?


「……片付けと掃除、手伝います?」


「頼めるかしら?」


 という訳で、部員でもないのに片付けを手伝うことに……。いやぁ布の汚れ……この場合は壁に鍋と一緒に激突した女子生徒の制服の染み抜きに貢献した訳だけど……


「「「是非入部を!」」」


 と、全会一致で、僕の意見抜きで強引に入部させられたのだった……ァゥ。


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 女の中に、男が独りぃー(先生含む)……と揶揄からかわれるのだろうか?……いや、いわなきゃ大丈夫!(……多分……きっと……(-_-)トホヒメ……)

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