08 アイテムボックスに拘って… その8

 人生で2度目のアイテムボックス付与成功。また成功するといいな……そう思いつつ、僕氏は鍛錬を続ける……それがアイテムボックスの付与成功への近道と信じて……

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──うっかり、頑丈を付与してしまう……──


 暫く小遣いを貯めていた。すっかり、付与素材の布袋と小箱が破損してしまったせいだ。最近は買うだけじゃなく、袋や箱の素材を探して作れないか?……と、ごみ溜めをあさったりしている。


 中学生がごみ漁りなんて……と思われそうだが、もっと小さい子たちが漁ってるのを見ることができる。


(まぁ……ダンジョンって呼ばれる一般人の侵入禁止区のそばだからか……)


 探索者って人たちが使えなくなったゴミを捨てて行くゴミ箱って呼んでいる場所には子供たちが集まって、ギリ使えそうな物を選別して拾っているようだ。


「……あの」


「ん?何だい兄ちゃん?」


 近くでゴミ拾いをしている子に話しかける。


「僕も……袋とか箱とか……小さいのでいいので拾っても?」


 取り敢えず縄張りとかあったらと思うと、一言断った方がいいだろうと思い、訊いてみると……


「あぁ……いーんじゃねーか?……みんな好き勝手に拾ってるし」


 と答え、こちらに向けていた視線を手元に戻す。


「そっか……ありがと」


 という訳で、少し離れた場所にしゃがみ込み……使えそうな袋や小箱、壊れ掛かってるそれらを補修できそうな糸や金属パーツを探し出す……。無論、盛大に汚れてる布なんかも欲しい物の範疇になる。汚れを落として縫えば袋にできるし、補修用の当て布にできるし? 中途半端な長さの糸だって寄り合わせて固定すれば糸として再利用できるし。そうして、どんどんこれと思ったゴミを拾っては使えるかどうか見てから収納していく。


 そして気付く……周囲の子たちが動きを止め、こちらを凝視していることに……


「え……と、何?」


 何かやらかしたんだろうか?……と思って訊く。


「いや兄ちゃん……それ。腰の……」


 腰?……と思いつつ、右腰のベルトにくくり付けてるアレを見る。


「これ?」


 と、指差して訊くと、


「そうそれ!……それ、アイテムボックスだろ?」


 と、最初に問答した男の子にキラキラした目で訊かれる。


「あ……うん。一応ね……」


 容量的には小さいながらそこそこ容量はあるけどそれ程大きい物は入らない。容量は10個までと個数制。先日までは鍛錬用の布の袋5つとアクセ用の小箱が5つの10個を入れてたけど、今はようやく付与成功した小箱が1個のみ入っている。


 拾っていたゴミの類は少し大きめの袋に入れて個数制限を誤魔化しているんだけどね……。そうすれば、小箱と袋の2つでも問題無く残機8を減らさずに収納できる。我ながらズルいとは思ったけどね?


 ……なんて考えてる間、


「すげー!」


「何かちっこいな……」


「本当にこれアイテムボックスなの?」


 とかいいたい放題だ。ちなみにベルトに固定してるので誰かが引っ張ろうとしたけど、僕とその子の体重差でちょっとよろめいただけで奪われてはいない。


「盗ったらダメだよ?」


 と笑いながら突っ込んだら頬を膨らませてどっかに逃げてった……。しょうがないなぁ……


「「「ねーねーねー!……それ、本当にアイテムボックスなのかよぉっ!?」」」


 と外野が五月蠅うるさいので中身を取り出すことに……。まぁ、この辺で拾ったゴミを入れた袋なんだけどね。


「はいはい……じゃあそこ退いてくれる?」


 目の前でギャンギャン五月蠅い子たちを退かせて、


「じゃ、今日拾ったゴミを出してみるよ?」


 と、小銭入れの蓋をちょっとだけ開けて中の袋の口を引っ張り出す。


「「「おおー!」」」


 と驚声が上がるけど、思ったより広い口が見えたからだろうか?


「じゃあ、出すけど盗まないでね?」


 と断りを入れ、全員神妙に頷くので落としてみる。立った腰の位置から落としても問題無いだろう……と思い、もう少し袋の口を引っ張り出していく。


ぽろぽろぽろ……


ぱさっ……ぱさっ……ごとん……ごとん……


 乾いた音は袋とか布とか。少し重い音は木箱の小さい奴とかだ。流石に余り大きい物は入らないからね……。入れてる袋もこのアイテムボックスが入る限界ギリギリ。


(買い物袋くらいだっけ?)


 取り敢えず全部出し切ったので、


「はい、これで全部です!」


「「「おおーーっ! すげーーっ!?」」」


 というと、またもや驚声きょうせいを上げる子供たち。取り敢えず風で飛ばされても何なのでまた回収していく。


「ねぇねぇ!そんな金持ちグッズ持ってるのに何でごみ漁ってるの?」


 とか、


「どっかで盗んで来たのか?」


 とか、


「盗んだらダメなんだぞ?……警察に捕まって死刑なんだぞ!」


 とか、兎に角やたら五月蠅い……orz


「いや、これは僕の物だからね……誰から盗んだって訳じゃないよ?」


「ちょっとスキルの鍛錬で素材が必要だから集めてるだけ……まぁ僕もまだ子供で小遣い少ないし……」


 などと答えられる範囲で返す。そしてまた後ろから引っ張られるけど……


「誰?……盗みは良くないよ?」


 と、小銭入れ型のアイテムボックスではなく、それを固定してるベルトを引っ張っている子が居て……


「貰い♪」


 と、引っ張って開いた空間にナイフを入れてる所だった。


「あ……」


 という間もあれば、その子は


ばりばりばり……


 と電撃を受けて、そのままぶっ倒れて……。あーうん……気絶してるだけだから取り敢えず放置。周囲の子たちはその様子を見て、物凄く恐ろしいモノを見た目でガクブルしていた……。僕は落としたごみ素材を全部回収した後、


「護身の魔導具を身に着けてるんだ。素手で触れるくらいなら反応しないけどね」


 強めに殴るか、武器を使って斬り掛るかに近い行動を取ると……まぁ見た通りの結果になる。電撃は暫く攻撃者に残り、麻痺の効果を維持し……警察か担当の冒険者に連絡が行く。半日は残るそうだから、余程の田舎でもない限りは捕縛が可能という訳だ。


※犯罪から身を護る魔導具で親に買って貰った。電撃を発すると警察の検知器に受信される=通報となる訳だ



「じゃ、警察が来ると思うから……かばうと同罪と見做みなされるから関わらない方がいいと思うよ?」


 僕はそういい残して去った。何人か恨めしい目で見てたから……恐らくは。


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 同罪なスラム街の住人とかだろう……

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