異世界の女騎士と高校生の俺、時空を越えた恋の始まり
僕の家には、異世界から転移してきたという女騎士がいる。
学校の帰り道で拾った。
え? 本当に、道に落ちてたんだってば。
あまり人通りの少ない道だった。
今日は異常気象のなのか非常に寒く、僕が見つけそこなっていたら凍死していた。
しかし、ビキニアーマーって、本当にあるんだね。
しばらく何かの撮影かと思ってガン見したまま放置してしまった。
ところが、その女騎士さんには困ったことがある。
剣を手放してくれないのだ。
「あ、あのー」
「なんだ?」
「今日も、その剣を持っていくんですか?」
「当たり前だ、騎士として当然のことだ」
「い、いや。そのお気持ちはわかるんですが、僕らの世界では無許可で刀持ってたら大変な事になるんですが」
「そうなのか? それは大変なことだな」
(それ、お前の事だよ!)
「この世界には、敵とかいないですし。それに、日本は女の子が夜中に歩いても大丈夫なくらい安全な国なんですよ」
(諸説あるけど)
こんな感じで、出かけるたびに剣を持っていこうとする女騎士さんに説得を続けていた。
「あの、今日も持っていくんですか?」
「うん。どうしようかな?」
おや? 今日はどうしたんだろう?
いつもの様に、「いや、持っていく」と言ってこない。
「元気ないですね」
「本当に、何も悪いことは起こらないんだな。この国は」
「え? まあ、さすがに場所や時間帯にも寄りますが、若い女の子は普通に歩けますよ。沢山見たから、お分かりかと思いますけど」
「うん」
どうしたんだろう?
今日は、本当に元気がない。
「あの、どうしました?」
「私は、本当に異世界に来てしまったんだな」
女騎士さんの目に涙が浮かんている。
「あ、あの、安心してください。ずっとここに住んでいて大丈夫ですから。どこかに行けとか言わないですから」
「……」
女騎士さんは、膝を抱えたまま黙り込んでしまった。
「あ、あの」
どうしたら良いんだろう?
クラスメートの女子と学校で話する以外、女の子とプライベートな付き合いほとんどないから、こんな時はどうすれば良いかわからない。
しかし、あまりに寂しそうな姿を見て、我慢できずに抱きしめてしまった。
「な、何をする」
女騎士さんは、抵抗するでもなく、静かな口調で問いかけてきた。
「ご、ごめんなさい。見ていられなくて。きっとこうして欲しいのかななんて勝手に。あなたの世界のカッコ良い騎士さんみたいにガタイ良くないけど」
女騎士さんは、僕の言う事を黙って聞いていた。
「お前、優しいんだな」
少し、元気になってくれた。良かった。
「当たり前じゃないですか? 女の子が泣きそうな顔して心配しない男子は、どの世界にもいませんよ」
「女の子? 私は、これでも23歳だ。お前は17だろう?」
「え? そんなに年上?」
自分より年上とは感じていたが、思った以上に年上だった。
「私達の世界での年齢だが」
「いや、良いです!」
「何がだ?」
「いや、何でもないです」
「ところで、いつまで抱きしめているのだ? この世界の男は、抱き付いたままで話続けるのか?」
「あ、御免なさい」
言われてようやく、女騎士さんから体を離した。
顔を見たら、少し嬉しそうな顔をしていた。
「面白やつだな。年上と知ったら、急にソワソワして」
「あ、いや。その」
い、いかん。
お姉さん系には、弱いんだよ俺。
「もっと、この世界の事が知りたい。いろいろ連れて行ってくれないか?」
「はい! 喜んで!」
「クスッ」
女騎士さんが、こっちに来て初めて笑った。
やばい、可愛いすぎる。
この笑顔をもっと見たいから、これからあちこちに連れて行ってあげよう。
「海は、この世界にもあるのか? 泳ぎたいな」
「へぇ? 海? 泳ぐぅ?」
僕の声が、1オクターブぐらい上がった。
「どうした? 変な声出して。おかしな奴だ」
そう言ってくる女騎士さんの笑顔は、とても素敵だった。
僕らはこの後、街に出かけ女騎士さんと海に行くために必要なものを買いそろえた。
女騎士さん、転移してきてくれてありがとう。
今年は、ひと夏の甘い経験が出来そうな気がする。
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