月では太陽になれない、恋する狼少年の話

 僕には人に話せない秘密がある。


 実は僕は、狼と人間のハーフなのだ。

 

 しかも、定番の『月の夜に狼に変化する』というオマケ付きだ。

 

 正直、両親を恨んだ。

 一方は人間ではないので、両親と呼んで良いのだろうか?

 

 父が狼の獣人で、母が人間だ。

 

 獣人の父は、別の世界から飛ばされて来たらしい。

 

 母が父を見つけた時は、大怪我をしていて瀕死の状態だったらしい。

 

 見つけた時の母は、てっきり大きな犬が怪我をして大変だ程度だったらしい。

 

 どうみても、犬と体のデザイン違うんだが。

 

 知り合いの獣医に連れて行って治療してもらった。

 

 母は不思議系の人だったので、獣医さんも『彼女だったら、こういう動物にも出会うだろう』程度の認識だったらしい。

 

 父は、意識が戻ると大変驚いたらしい。

 

 それはそうだろう。

 

 そして、母に迷惑がかかると山奥に雲隠れしようとした。

 

 母は、必死に止めた。

 

 『まだ、怪我が治っていないのに、いったいどこへ行くというの?』

 『手当てしてもらった事には礼を言う。だが、これ以上は、あなたが困ることになる。だから、山に隠れるんだ。これからのことは、そこで考える』

 『ここにいれば良いじゃない。家も狭くはないわ』

 『そういう問題では……』

 『どうしても行くというの?』

 『そうだ!』

 

 すると、母はこう言ったそうだ。

 

 『ハウス!』

 父は困惑したらしい。

 『な、何を?』

 『ハウス!』

 『ば、馬鹿にするのもいい加減にしろ! それは、お前達のペットに言う命令だろうが!』

 小馬鹿にされたと思った父は、母につかみかかったそうだ。

 

 すると、母は父の顔をガシッと捕まえて口づけをしたという。

 

 『な、何を?』

 ニコリと微笑みながら母は、こう言った。

 『これで、私が本気だってわかってくれた?』

 

 

 そうして生まれたのが、僕ってわけ。

 

 そして、その僕が、学校のクラスメートの女の子を好きになってしまった。

 相手も、自分に好意を寄せてくれている。

 

 でも、先に言ったように、月夜は狼になってしまう。

 

 月の光も太陽の光を反射しているだけなのに、俺の血は、その月の光に反応する。

 

 いっそ、あの月が、太陽だったらなー。

 

 そんな映画もあったな。

 夜がなくなってしまう映画が。

 

 でも、その映画でも月は月のままだった。

 

 そうなんだ。

 

 あの月は、太陽には、なってくれないんだ。

 

「明日の花火大会、月夜らしいよ」

 彼女が言った。

 

 さて、どうしよう。

 

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