猫様の為の交通機関

猫の為の交通機関が出来たらしい。


ニュースを見た時は唖然とした。


「は? 猫が乗るの? 電車とかバスに? 猫専用?」


私は、どうしても信じられなくて、その交通会社に電話した。


「あの、本当に猫だけの為の交通機関なんですか?」

「ええ。そうです。猫しか乗れません」

「はい? いや、猫が乗りたいって言うんですか?」

「さぁ。どうでしょう。私は犬派なのでわかりません」


(犬派なのかよ!)


思わず声に出して言い返すところだった。


「で、お金はどうやって? 採算は合うんですか?」

「まあ、猫の為に時間もお金も惜しまない方々が沢山いらっしゃいまして。まったくの黒字です」

(え? 儲かってるの?)


採算がとれているということに驚きを隠せない。


「でも、猫はどうやって、それを利用しに?」


「まあ、てくてくと。そして、ドアの前で鎮座して見上げてくるので、それが合図になっております」

「人が監視して、呼んでくるんですか?」

「その姿を見ると、どうしても乗せてあげたくなるらしくて。会社が何も指示しなくてやってくれています。時間外でも電車やバスを出します」


「降りたい駅とかバス停とか、どうやってわかるんですか?」

「ドアをカリカリとやるらしくて、それが合図だと言うことです」

「言うことですって、あなた知らないんですか?」


「ええ、ですから私、犬派なので」


半分切れ気味に回答された。

この犬派の駅員は、よほどストレスが溜まっているらしい。


(そう言えば、どこかの映画会社が猫の世界征服の映画をだしてたな? あれ、まじだったんか?)


猫は均等に座るらしいから猫の会議のあるラッシュ時はどうしているんだろう?


窓の外に目をやると、猫達が『駅方面』に向かってとぼとぼと歩いていくのが見えた。


猫の事に詳しくない私でも知っている。


あの猫達は、かなりの割合で駅にたどり着くことはないだろう。


現に今だって、近所のお子さんが「あ、猫さんだー」って歩み寄っていくと、黙って寝っ転がって、モフモフされてしまっているんだから。



いったい、何のために『猫の為の交通機関』を作ったんだろう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る