世界が終わる日に、冷めたコーヒーをすすりながら手紙を破り捨てた
来るぞ、来るぞと狼少年の童話の様に言われていた『世界の終わり』がやって来た。
どこかの大予言者の詩が、世界の終わりと告げているのではないかと一時期騒動になったこともあった。
今日は、2XX6年6月6日。
まあ、何と不吉な数字で、不完全を表す数値の「6」が並んだ日に、世界が終ることになった。
必死になって宇宙に逃げようとする奴。
水底で暮らせないかと模索する奴。
無の境地に至ろうとする奴。
色々な人間が発生した。
また、私の様に淡々と日々の生活をする者もいる。
流通も、生きている部分と、そうでない部分があり不十分でない。
まあ、運送屋さんも、人の荷物運んでいる場合じゃないからな。
食事も終えて、いつものコーヒーを入れた。
最後の日が、今日の夜中なのか、夕方なのかわからないから、これが最後のコーヒーになるかもしれない。
そんなことをぼぅっと考えながら、空を見上げていた。
「この空見ていると、全然終末って気がしないんだけどなー」
手に入れたコーヒーも、これで最後だ。
頑張って店を開けているスーパーの棚にあった最後のコーヒーだ。
もう、入る見込みはないだろう。
ゆっくりと飲んでいるうちに、段々冷めてきた。
「温めなおそうかな?」
そんな事をボンヤリと考えていたら、ドアのチャイムが鳴った。
ピン・ポーン!
「郵便でーす!」
「ん? こんな時に郵便?」
ドアを開けてみると、郵便屋さんがサインしてくれと言うので、最後のサインを書いて手紙を受け取った。
「ん? 督促状?」
見れば、〇×税務署と書いてある。
「は? こんな時に督促状?」
あ、そう言えば、確かに所得税払い忘れてたわ。
しかし、銀行やってるのか?
直接持っていくのもありなのか?
私は、払わずに逃げ切るか、貴重な残りの時間を税務署に所得税を納める為に紛争するかを迷っていた。
そして。
私は、冷めたコーヒーをすすりながら、その手紙を破り捨てた。
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