第29話 「蒼焔之嵐」


「じゃあ、頑張ってね」


ふふっと微笑ほほえむと神は登場した時のようなあわい光に包まれ、消えていった。

いつも空から見られていると思うと、あまりいい気はしないな。


”などという怒涛どとうの展開に、アドレナリンですっかり忘れていた首の傷が今になって痛む。


〉「体力再生」スキルを得た。


スキルを得た瞬間傷がかゆくなり、ハルトはすぐにポイントを「体力再生」に振った。

途端、首の傷からシューッと煙が出る。その傷を触るとまるで嘘のようにスベスベになっていた。

ハルトはどんどん人間離れしていく己の体質に、思わず戦慄せんりつを覚えた。

知性巨人を継承けいしょうしたのか?!と手をむが何も起こらなかった。


ハルトとリリは来た道を辿り、馬車へ戻った。

そこには緊迫きんぱくの表情を浮かべたミーシャがいた。


「は、ハルト様っ!!無事なんですか?!」


「ああうん、正直ギリギリだったけどなんとかね」


ミーシャはハルトの無事を確認し、我知らずと目に涙を浮かべていた。

神とハルトの会話は猫耳で聞こえていたらしいが、とても心配をしていたようだ。

その後三人は馬車に乗り再びメリアルガ公国へと歩を進めた。


――ハルトはミーシャとリリに「馬術」を教えていた。

流石にずっと馬の面倒を見るのは疲れるし、無事に依頼も達成したからのんびり帰ろう。


ミーシャは一時間ほどで馬を手懐てなずけてしまった。

獣同士が合うのかは分からないが、心無しかミーシャが手綱たづなにぎると馬が嬉しそうにしている。


リリは……ダメだった。

馬を操ろうとした途端馬はヒヒーンと鳴き、後ろ足で思い切りリリに腹パンを食らわせた。防御力が高いといえども、馬の腹パンは痛い。


「んぐぇっ。こ、此奴こやつ…ッ!!」


不敵なみを浮かべ「火炎竜巻」で燃やしくしてやろうとするリリだったが、ハルトとミーシャが全力で止めた。


――結局ハルトとミーシャが時間ごとに交代することになった。

ハルトはミーシャが手綱を握っている間、リリから魔法の基礎知識などを教わることにした。


「こ、こうか…?」


〉「防護殻ぼうごかく」スキルを得た。


「―ええ、そうでありんす。拒絶きょぜつする”まく”を意識するでありんす」


ハルトはリリに「防護殻」を教えてもらっていた。

スキルを手にしたハルトはポイントを割り振り、自由自在に形を変えることが出来るようになっていた。

ハルトが作った「防護殻」をリリがコンコン、と叩く。


「主様は覚えが早すぎるでござりんす、逆に今までこの魔法を使えなかったのが不思議なくらいでありんす」


まだ転移して日も浅いため使える魔法は少ない。

これから色々魔法について知り、もっと強くならなくてはならない。

絶対に嫌だがまた神に殺されかけるかも知れない。

彼に勝つまでとは言わずとも、せめて生き延びるくらいにはなりたい。


ハルトはリリに、次は「火炎竜巻」を教えてくれと頼んだ。


「”火炎竜巻”を使うにはまず、”竜巻”を習得して風の使い方を学ばなくてはいけないでありんす」


燃えている、というイメージはつかみやすいのだが風の扱いには少し手間取った。

…しかしハルトは30分ほどで習得してしまった。


〉「竜巻」スキルを得た。


あとは「竜巻」に炎を乗せるだけで「火炎竜巻」は簡単にできる。


〉「火炎竜巻」スキルを得た。


ハルトは手の平で小さい火炎竜巻を作り出し、これでいいか?とリリに聞いた。

リリはあまりの呑み込みの早さに驚嘆きょうたんし、頬をく。


「ぬ、主様は本当に天才でござりんすなぁ…」


しかしハルトはその想像の上を行き、「火炎竜巻」の炎を「蒼焔」に書き換え威力を倍増させた。

その美しい”蒼”にリリはいささ見惚みほれてしまった。


〉「蒼焔之嵐」スキルを得た。


色々な魔法を覚え、機能をいじっていくうちに段々とその仕組みが分かってきた。

まだ調べきれてはいないが魔法は主に三つの要素でりなされており、それは”属性”、”消費する魔力量”、”方向”だ。

これらを理解していれば、元ある魔法の性質を書き換えるのは容易たやすいことだ。


…いつか作り出した魔法やその原理を本にして出版してみようか。



大魔導士ハルトとして世にその名が広まるのはまたいつかの話だ――。


***************

いつもご愛読いただきありがとうございます。


今回は少しバラエティ枠になってしまいました。。。


皆様たくさんのいいねや星をくださってありがとうございます!


そのモチベを力に今後も精一杯書いていきます!!



では!

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