第21話 SSランク
――家にいる間、ミーシャは美姫と遊んであげていた。
たまにリリが参加して裏庭で鬼ごっこをしたり、仲睦まじい光景である。
…リリは基本的に何もせずに爆睡していた。よほど寝ることが好きらしい。
「麗子さんはいつから刀を練習しているんですか?」
ハルトは縁側で刀を点検する麗子に話しかける。
「そうね……20年くらいかしら?」
失礼だが「ステータス鑑定」で見た時の麗子さんは28歳だったので、8歳から稽古をしていることになる。十分に長い。
「――こう見えても私、Sランク冒険者をやってたのよ?」
麗子曰く冒険者にはEランクから始まり、Sランクまであるそうだ。つまり麗子は最高ランクである。
世界にSランク冒険者は15人いるらしい。
「…全盛期でもSランクの中で序列10位だったから、もっと強い人は沢山いるわ」
麗子より強い冒険者が世界にはあと9人もいるのかと、ハルトは世界の広さを知覚した。
「あと例外的にSSランクを認められた人がいてね、1人だけ」
「SS…ですか、どんな人なんですか?」
「一回だけ友達のSランク冒険者と4人で勝負を挑んだことがあったのだけれど、軽くあしらわれたわ」
つまりSランク複数でも全く敵わなかったと言うことだ。恐ろしく強いらしい。
「ちなみに、名前は…?」
「――ガラハッドよ。まだこの世界の何処かにいるはずだわ。生ける伝説なんて呼ばれてた」
…ガラハッド。いつの日か少しだけ読んだ”アーサー王伝説”に出てくる円卓の騎士と同じ名前だ。
――ハルト達が1泊して麗子は満足したので翌日の昼前、お
「ミーシャお姉ちゃん、行かないでぇぇ!」
沢山遊んでくれたミーシャに懐いたのか、美姫が泣きつく。
「ごめんね、美姫ちゃん。また来るから」
ミーシャが美姫の頭を撫でながら
「…じゃあ、俺達行きます。麗子さんも色々教えてくれてありがとうございました」
「ええ、こちらこそありがとう。うちの子たちを助けてくれて」
榊原一家に見守られながら、ハルト達は街を後にした。そして美姫は涙を必死に堪えながらも手を振った。
森を抜け、グリフォンを倒した草原から間もない所に停めてあった馬車に乗る。しっかりとハルトは寝る前、馬に餌を与えてるため「帰ってきたら馬が死んでたんだけど」なんて事にはならない。
「――それじゃあ、出発しよう」
「主さん、どこに向かうでありんすか?」
ミーシャの横であぐらをかくリリがハルトに訊ねた。リリは途中参加だったので、行先を知らないのだ。
「とある人の手紙を届けに、メリアルガ公国を訪れるつもりだよ」
「メリアルガに行くでありんすか。つい最近出来たばかりの国だった気がするでありんす」
つい最近、ということはそこまで大きい国でも無さそうだ。
「つい最近って、どのくらい前?5年とか?」
「85年」
「結構昔だよ!!」
「ステータス鑑定」でもリリの年齢は不詳だったが、こいつの感覚はどうなってるんだ。
下手したらこの世界の平均寿命より長いだろ、85年は。
「……リリって何歳?」
会話を聞いていたミーシャがリリに訊く。
至極当然な疑問だ。
「うむ…200歳経った辺りで数えるのは辞めにしたでありんす、大体800歳でありんす」
「――それに、レディに歳を聞くのは失礼でありんすよ?」
「レディじゃなくておばさんだろ」と喉から出かかったハルトだが、理性で抑えた。
リリに対しては中々に辛辣なハルトであった。
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