第15話 馬車の改造

ミーシャはリリを頭に乗せてゴム弾をひたすら撃っていた。いい暇つぶしにもなるのだろう。


――やがて日が暮れ、ハルト達は野宿をすることにした。しかし焚き火をするにも炎のスキルが無いため、ハルトはギフトで貰ったスクロールを使用した。


〉「炎弾」スキルを得た。


石はその辺からミーシャに集めてきてもらい、

創造クリエイト』で木材の井桁を組む。


「…ボッ」


ハルトは人差し指の先から炎を出した。当たり前のようだが、魔法はライターより便利だ。


「……ハルト様は魔法も得意なのですね」


「ああ、スクロールのお陰だよ」


「――私は戦闘系のスキルが無いので、少し羨ましいです」


確かにミーシャには戦闘系のスキルは無いが、十分に射撃が上手なので問題は無いだろう。

スナイパーライフルでも作ってやるか…?銃の威力を上げれば中々に強くなりそうだ。


昼間のオークの肉と鷲、豚を使ってミーシャが料理を始めた。


「ミーシャ、調理器具は足りてるか?」


「はい、これだけあれば十分です」


ハルトは鉄で包丁、鍋、まな板などを作ってミーシャに渡していた。

野菜や調味料は、昨日の商店街で買っておいてある。いつか自分で「料理」スキルを入手してやってみようと思っていたが、その必要は無くなったみたいだ。


そしてミーシャは鷲で鍋を作ったり、オーク肉のボイルなどを振舞ってくれた。豚肉はサラダにしていた。30分ほどで出来上がったようだ。


「――出来ました。あまり自信は無いのですが…どうぞ」


「どれどれ……」


ハルトはミーシャの料理を口に運ぶ。

あれだけ固かったオークの肉は柔らかくなり、鷲の鍋も芳醇な香りがして美味い。


「…美味い!美味いなミーシャ!」


「ほ、本当ですか…?お口に合って頂けたようで、嬉しいです」


自分の料理を褒めてもらったミーシャはぽうっと頬を赤らめ、その猫耳を僅かにピクつかせる。


「ああ、美味い。特にこの鍋は格別だ」


――ハルトとミーシャは腹を満たしたあと、就寝の準備をしていた。


「…それにしてもリリは何を食べるんだ?」


「それが良く分からないんですけど、草をあげてみたら食べてくれました」


草を食べると言うことは、スライムは草食動物ということか…?そしていつそのスキルを見せるんだ…?

何にしてもリリは謎が多すぎる。


ハルトは木材を使って、2人入るぐらいの簡易的な家を2つ作った。立ち去る際に破壊すれば大丈夫だろう。


「…じゃあミーシャ、見張りは俺がやっておくからゆっくり寝てくれ」


「わ、私がやりましょうか?ハルト様」


「俺も夜中にやってみたい事があるから大丈夫だ」


今晩を使って馬車を少しだけ改造したい。

そしてミーシャに、もう少し凝った2丁目のハンドガンを作ってやるつもりだ。


「そ、そうですか…ではおやすみなさい」


ミーシャはリリを抱え、中に戻った。


「――さて、始めるか」


まずは、馬車のサスペンションだ。

振動吸収の性質を持つ黒妖石を使って、太いバネ状にする。ミーシャのハンドガンにもこれを薄くコーティングしている。


車輪を取り外し、各足に取り付ける。


「…こんなもんか」


ハルトは荷車に乗り、中で軽くジャンプした。

しっかりサスペンションは機能し、揺れは軽減されている。

いつか迎撃できる装置を取り付けてもみたい。

…段々と戦車のようになりそうだ。


ハルトは2丁目の製作に取り掛かった。

素材はそのままで威力を上げたバージョンだ。

魔法をそのまま封じ込める鉱石などがあれば威力は飛躍的にアップするのだが、生憎アイテムボックスを探しても見つからなかった。


――ミーシャにはリミッターを外したハンドガンを製作した。

そしてハルトは自分用に、魔力を込めれば込めるほど爆発力が増す性質を持つ「炸裂鉱石」を使って弾薬を開発した。

砲身は魔力を含むほど強固になる”ミスリル銀”を精錬して製作した。


発砲するには多大なる魔力が必要となる銃だが、ハルトの膨大な魔力量を持ってすれば問題無いだろう。


「――試し撃ちは明日にしよう」


徹夜したハルトは固まった腰を擦りながら寝床に着いた。


〉「無睡」スキルを得た。

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