第16話 紅髪の女子
辺りが明るくなり始めた頃だ。
「無睡」スキルを手に入れたハルトは、短い時間の睡眠で起床出来るようになった。特に体や意識に不調は無い。
「ミーシャ、起きてるか…?」
ミーシャの小屋をノックするが反応は無い。
元の世界で言ったら今は午前5時頃だ。流石に起きてないか。
ハルトは昨日のハンドガンを試射する為に、「瞬歩」を使って1km程度離れた場所に来た。
「…ここまで来ればミーシャを起こさないだろ」
“爆焔弾”をリロードし、試しに遠くの5mはあろうかという巨石に狙いを定めた。
ハルトは爆焔石にある程度の魔力を込め、バレルにも魔力を流す。
〉「魔力回復」スキルを得た。
――そして、その引き金を引いた。
「――ッッドッパァァァァン!!!!!」
刹那、耳がつんざけるような轟音を周囲に
飛び起きた鳥たちは焦るように森を飛び回り、パニックになった鶏は暴れ回る。
〉称号「破壊魔」を得た。
「……こ、これは…力をかなり抑えないとな…」
穿った巨石は跡形も無く消滅し、その先の森は見えなくなるほど先までごっそりと
ハルトは自分の予想していた数倍の威力に愕然とした。
「ここまでの音だと、ミーシャを起こしていそうだな…」
案の定、戻るとミーシャは小屋の外に居た。
寝癖の付いた彼女は、不安げに絶えず左右を見ていた。
「――!ハルト様!何事ですかっ?!」
「あ、ああ…すまない、新しく作った武器の試射だったんだが…」
それを聞いたミーシャは安堵の息を漏らした。
「よ、良かったです…。起きてもハルト様いませんし、とても焦りました」
「は、はは…ほんとすまない…」
ハルトは、ミーシャに気を使わせた事に心から謝罪した。
「…このハンドガン、とんでもない兵器だな。俺の魔力量に比べればキャパシティは全然だが、威力は十分だ。…何か名前を付けるか」
ハルトは些か逡巡した後、とある神の名前を脳内に思い浮かべた。
「そうだな――イーリスだ」
――ハルト達は軽く朝食を済ませた後、レベルをMAXまで上げた「炎弾」を使い、2つの即席テントを焼失させた。
「じゃあ、行くか」
ハルトたちは馬車に乗り、また歩を進めた。
「あ、ミーシャ、これ。2丁目だ、リミッターは外してある」
「…!ありがとうございます。頑張って練習します!」
練習せずとも十分戦えるのだが、上手い事に越したことはない。引き続き訓練してもらおう。
「銃弾は爆焔石と炸裂石をブレンドして密度を圧縮してあるから、前のに比べたら威力は…ざっと4倍くらいかな?魔力量にもよるけど」
「よ、4倍、ですか…恐ろしいですね…」
そこまでの威力だと素人がマグナムを撃って手首を壊すように、ミーシャの手が吹っ飛びそうではある。しかしこの”黒妖石”はとても優秀で、その7割の衝撃を吸収してくれる為、その心配は無用だ。
――太陽が真上に昇る頃、ハルト達にハプニングが起きた。
人が奥から走って来て、馬車の前で大きく手を広げているのである。
「…!なんだ?当たり屋か?」
その”人”とは着物を着ており、胸までの長さをした紅色の髪の少女であった。
「助けて下さいっ!!!」
ハルトは馬から降りて、少女に歩み寄った。
年端も行かない少女のその顔は涙でぐしゃぐしゃである。
「…どうしたんだ…?」
「お、おと、お父さんがっ…!!」
明らかな異変を感じたハルトとミーシャ達は、お互いに顔を見合わせ、急いで走る少女を追いかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます