第9話 突然の出会い
ピッピッピッピッピピピピピピ――。
やたらと高い電子音が耳元で鳴る。
なんでアラームなんて鳴っているんだと思いながら、重い瞼を擦りスマホの画面を確認。
十一時。
ああ、今日はあいつらが来るから早めにアラームをかけたんだった。
さえない頭を多少マシにするため、顔を洗いに洗面台に向かい顔を洗う。
昨日少し残ったカレーを冷蔵庫から取り出し温める。
「あ、ご飯炊くの忘れた……」
温め始めたのはいいが、昨日あの人数で食べていたためご飯がないことを失念していた。
仕方ないので、食パンを取り出す。
カレー単体で食べるよりはマシだろう。
コップに牛乳を一杯注ぎ、カレーと一緒にリビングに持っていく。
スマホでいろいろ情報を確認しながら、いつもより豪華な朝食を終わらせる。
やはり、二日目のカレーは最高だ。野菜にカレーがしみ込んでとてつもなくうまい。
ただ、口にくっつく感覚は良いものじゃないが。
歯を磨き、着替える。
今日は、牛丼を食べたいと言っていたし。食材くらいは、買っておかないと申し訳ない。
真上から照り付ける日差しに、目を細めながら移動する。
六月ということもあってか少し熱い。昼頃に出かけるのは失敗だったかもしれない。
ただまぁ、今更公開しても遅いのだが……。もし仮に、早くアラームかけても起きれる気もしない……。
店内に入ると、空調のきいた風が俺を迎えてくれる。
「めっちゃ、すずしぃ」
体にまとわりつくような熱気が浄化されていくのを感じながら、カゴを手に取り店内を周り始める。
正直、家の冷蔵庫には何も入ってない。正確には、生クリームやバターなどはあるんだが、ご飯に使えるようなものは……ない。
だからこうして、買い物に来てるわけだが。
牛丼……材料なんだろ。米と……牛肉、だけなのか?
作ったことないとわからない。と、言うか調べたことすらない。
スマホを取りだして、牛丼を調べる。
あー玉ねぎか。比較的簡単? なのかもしれない。
酒は家になかった気がするんで、買わないと。
「みりん……ミリン……さけ……」
「魚でも買うんですか?」
「いや、調味料のほう――って」
「はい?」
「いや、なんでまたお前が」
「お前って……」
「おっと素が」
突然の出会い過ぎて素が出てしまった。
「で、なんでいるんですか? 睦月さん」
俺は間違いなく、一人で買い物に来ていた。もちろん約束などしてないし、ただの偶然であることは確かなのだ。
だからこそ、会うと思っていなかったので驚いている。
「私も買い物ですよ」
押しているカートの中には確かに、玉ねぎと牛肉が入っていた。
「もしかしてあなたも、食材を買いに来ていたのですか?」
「あー、そうっすね」
「なら、その牛肉じゃだめですよ」
「あ、まじで?」
「ちゃんと、種類があるんですよ」
知らなかった。
確かに少し分厚いなぁ、とは思った。
「あとは、みりんを買うんでしたっけ?」
「そうだな、家になかった気がしたんだよ」
いつも買っているみりんを手に取る。
「あ、ちゃんとしてるんですね」
「何が?」
「いや、風味の方を買うんだなって。ご飯作らないのから、知らないかと」
「あー、みりんがお酒判定もらってる話ね」
「そうです、何で知ってるのかなっと」
「いやまぁ、ちょっと本で知るきっかけあってね」
普通のみりんはお酒という扱いなので、俺たち未成年は買えない。だからこうして、みりん風を買っているわけだ。
「てか、食材買ってもらって悪いな。それ今日のだろ?」
「まぁ、いいですよ。私もお邪魔させて頂いてますし」
他二人にも、聞かせたい内容すぎて涙が出そう。
「でも、牛丼だけじゃなぁ」
「牛丼とセットで食べるものって言いますと……たくあんと、お味噌汁?」
やっぱり何と言うか、庶民的なお姫様だ。いや庶民だろうけど。孤高の姫はあだ名だけど!
「で、たくあんはこのまま買えばいいですけど。お味噌って家に」
「ん?」
「あるわけねぇですよね」
もちろんそんなものあるわけない。
「じゃあ、お味噌も買っていきますか」
「味噌汁は小学校の家庭科で作ったな」
「あー懐かしいですね」
「ドラゴンのエプロンつけて作ってましたよ」
「ブフッ――」
あ、珍しい。吹いた。
「如月さんも、そういう時期あったんですね」
「おいこら、笑うな。ちなみに、今でもかっこいいと思ってる」
「ブフッ――」
思ったよりツボに入っているらしく、しばらく笑っていた。
●あとがき
今回からこういった形で、あとがきっぽいの書いていきます。
まぁ、理由なんですが。一話目の内容を大改編しようと思ってまして。
それの事前報告を兼ねて、試験的にあとがきを書いてみました。
今後は日常的なこと、ちょっとしたキャラ同士の雑談を入れる予定ですので、楽しみにしてもらえるとありがたいです。
それでは!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます