第6話 多分、息が合わない
朝のホームルームが始まる前の八時如月は、自分の席に着くなり大きなあくびをした。
「眠そうだな如月」
「逆になんでお前は眠くないんだよ」
昨日、十二時まで一緒に起きていたのになんで眠くないのか疑問でしかない。
「いつもこんな感じだからな、逆に十二時前に寝てるってお前本当に高校生か?」
「俺はどっちかっていうと早寝早起きなんだよ今は」
たまに夜遅くまで起きているが、寝れなかった時だけで十一時までには基本寝ている。
その代わり朝五時には起きている。それでも眠いけど。
「また授業中寝るのか?」
「英語って睡眠魔法の詠唱って聞いたことがある」
日本語じゃない言葉なんて何言ってるかわからないし。魔法の詠唱って言った人は
本当に天才だなと尊敬する。
「お前はやらないだけだろうが」
「めちゃくちゃ頑張ってもそこそこの成績しか取れないからやるのは嫌なんだよ」
「嫌ってお前なぁ、成績は大事だぞ」
「わかってるけど、頭のいい専門行きたいわけじゃないからいいんだよ」
「まぁ、お前の人生だし決めるのはお前だからいいけど、俺は少し心配だぞ友よ」
「はいはい」
同級生にまで人生心配されるとは、我ながらどうしたものかと思う。
「だからお前がお姫様をかっさらうつもりなら応援はするよ」
「別にそんなんじゃねぇよただ弱みを握られてるだけ、それに多分気が合う……かな?」
「疑問形なんだな」
「そりゃそうだろ、ちゃんと話して二日ぐらいだし、俺と気が合うなんて思われても迷惑かもしれないだろ」
「睦月さんは友達いなかったぽいし多分大丈夫だよ」
「お前絶対本人の前でそれ言うなよ、社会的に殺されかねないぞ」
大丈夫だろとへらへら笑っているが、自分は実際に死にかけたことがあるので本当に本人の前で言わないことを願うばかりだ。
「そういば睦月さんから伝言貰ってる。昼休み昨日の空き教室だってさ」
「えぇ……」
「あからさまに嫌そうな顔するな」
「でもさぁ」
昨日の夜もゲームしたし、今日の昼もなんてめんどくさいと思うだろ。
いつもなら断っているところだが、伝言・・・・・・つまりは睦月に呼び出されているわけで、それについて拒否権なんてないわけで。
「……行く前に購買でなんかおごれ」
「へいへい」
行くしか選択権のない俺は、せめてものあがきで購買でパンをおごらせることに成功した。
〇 〇 〇
「ねねちゃんの弁当美味しそう」
「ありがとうございます」
「同じ一人暮らししてる誰かさんとは大違いだね」
自分でも自覚してるわ、そんなこと。
「俺昼はパン派なんだよな」
「日本人たるものお米を食べなきゃですよ」
午前中言ったことは撤回したい、多分こいつとは気が合わない。
「俺は昼時間もったいないからパンでいいんだよ。効率ってやつだ」
食事に効率を求めるのは良くないとは思うが、昼は五十分と言う短い時間なのでスマホを触りながら片手で食べれるパンは最強ということだ。
「ちなみに朝は何食べてるんですか?」
「朝は菓子パンだな、食欲がないから甘いもので無理やり口に入れてる感じだ」
「なるほど、ちなみに私は三食お米です」
ほかに選択肢ありますか? と言いたそうな顔でこちらを見てくる。
俺以外は全員弁当なのでパン派は少数なのかもしれない。
「そもそも、弁当作るのが面倒だからな、実際卯月は皐月に作ってもらっているわけだし自分で作って持ってきている男子なんているか?」
「探せばいないですかね?」
「あんまり聞かないかな、自分で作ってるって男子は。如月が言ってたように、自分は加奈に作ってもらってるからね」
「そうなんですか」
どうやら自分で弁当を作っている男子が、多いと思っていたらしい。
食堂に行けば大半男子で、購買で買っている人がほとんどだと思う。
「って、そんなことは置いておいてですね、如月さんあなたいつになったらうまくなるんですか?」
中学のころよくやった班の席のようにして食べていて正面に睦月がいるのだが、こちら側に身を乗り出すようにして顔を近づけるので、椅子の後ろに重心を掛け斜めにしながら少しだけ離れる。
「そんなこと言ったって、復帰してからまだ二日だぞ、仕方ないだろ」
「仕方ないって、そもそも歩くことすらままならないのに、上手くなりたくないんですか!」
「いや全く」
自分の身長や体重。手の長さ大きさまでキャラごとに違うので、それを自分の感覚で操作するとズレが生じる。
それが未だになれなくて、転んだりする始末。
さらにキャラごとの能力もそこに加わるので、今やっているのは序盤も序盤である。
頬を膨らませながらぷるぷる震えている。
「でもこの空き教室放課後使うって聞いたぞ」
「そうなんですよね」
教室がないなら多分今日はやらんだろうと思っていたら。
「じゃあ如月の家でいいか」
「おいまて、家主の許可なく勝手に家で集まろうとするな」
「そうしますか」
「おーい話聞いてるかぁー?」
「トーマ諦めよう」
皐月が俺の肩に手をぽんっと置く。
俺は肩をがくりと落とすと同時に、部屋が片付いているか必死に思い出そうとした。
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