エピローグ
「あ~緊張する。おなか痛くなってきた気がするもん」
七海が腹を抑えて深呼吸する。
「私も無理、めちゃ緊張してきた……」
七海の言う様に、私も胃がきゅっとなるような感覚がお腹の下の方でする。
高校時代にバンドを結成してから八年経ち、メジャーデビューもして……そして今日、武道館の舞台に立つ。
「大丈夫だって二人とも、もう八年目になるんだよ?安心しなって、ファンのみんな待ってるよ」
瀬波が後ろから私達の背中に手を置く。
「ほら見て、お客さんでいっぱいだよ?あの人たちみんな私達の歌聴きに来てるんだから、ほら勇気出して!」
浅乃がモニターを指差して励ます。
「そうだね、弱気になってても仕方ない!よ〜し、円陣組もう!気合い入れよう!」
七海がみんなの肩を寄せて円陣を組む。
「じゃあ、行くよ?Flaws、えいえいおー!!」
慣れない円陣に、少しぎこちなさがある。
「普段円陣なんてやんないんだから、ほら。格好つかない」
失敗した円陣の中でみんな笑いながら瀬波が七海にツッコむ。
「ほらほら、緊張は無くなったでしょ。これで成功なの、いいからアナウンスするよ?」
そう言って七海は会場アナウンスを始める。
『皆さんこんにちは、Flaws八周年ライブ、完全無欠の不備にお越し下さりありがとうございます!ライブ開始前に、今ライブの諸注意を私達からお伝えします。行きますよ?その一、カメラなどでの撮影はご遠慮いただいております、電源を切るなどしてカバンの中へおしまいください。続いてその二、携帯電話はマナーモード、もしくは電源を切って、カバンの中にしまっておいて下さい』
七海が話し終えるとマイクの前に瀬波が立つ。
『七海に代わって瀬波です。その三は周りを見てください。出入り口に現在は非常灯が点灯していますが、演出の都合上非常灯を一時消灯いたします。非常時は係員の指示に従ってご移動をお願いします』
サラッと台本を読み上げて次に浅乃の番になる。
『こんばんは、浅乃です。その四は、この会場では禁煙となっております。喫煙の際は屋外指定の喫煙所をご利用ください。それでは最後のアナウンスはことちゃんですよ~』
そう言ってニコニコの浅乃にマイクへ促される。
『えーっと、皆さん今日はご来場いただきありがとうございます。琴野がここからはアナウンスいたします。本日のライブ、手拍子や物販のペンライトの使用、皆さんの歓声などは、大歓迎でございます。体を動かす際は、周りの観客の方にご迷惑にならないようにお願い致します。それでは!まもなくライブは開演です!皆様、しばしお待ちください!』
話し終えると壁の向こうの観客の歓声が聞こえる。
「始まるね」
浅乃が小さく呟く。
「よし!みんな!行こう!」
舞台袖を駆けて行く七海に続いて私たちも舞台へ上がっていく。
私達の音を、もっと沢山の人に届けるために。
ことののひびきを届けるために。
ことのひびき 大船パセリ @Pa_Se_Ri_
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