第83話 緊急事態
ルーリエさんが屋敷に来て以降、本格的にレベルアップに努める。
ルーリエさんはヨルカさんが作った機械人形に乗り、ヨルカさんによる指導のもと特訓を開始。
また、ソラさんとセリアさんは2人でダンジョンに潜り、レベルアップを測っている。
そして俺は冒険者学校の教師としてユメとシャルちゃん、サヤの3人を指導し、リーシャとレオノーラはメルさんから指導を受けて技術を磨いている。
「ちょっと休憩しようか」
俺は指導している3人に声をかけ、休憩を促す。
「みんな上達してるね」
「カミトさんの指導のおかげですよ」
「ウチ、どんどん強くなっているのを実感できて嬉しいです!」
『剣聖』カインの力を引き継いだ俺は剣術の指導に長けており、的確に指導を行うことで、3人がグングン上達している。
その中でもユメの上達には目を見張るものがある。
(以前はレベルが低く、ステータスが低かっことで脳からの命令に身体が付いてきていなかったが、今はステータスが上昇し、動きにキレが増している。それに加え、以前できなかった動きができるようになったことで、戦いの幅が広がってる)
そのため、俺と戦ってもかなり良い試合をするようになった。
「上達してるのは俺の指導だけじゃないよ。俺から指導されたことを身につけようと、家で努力してるからだ。サヤたちが家で努力してるのは見てて分かるからな」
「分かりますか!?」
「あぁ。一目でわかるさ」
「さすがカミトさん!よく見てますね!」
「やっぱり褒められると頑張ろーってなります!」
褒めて伸ばす方針の俺は上手くみんなのやる気を維持できてるようだ。
「リーシャたちもどんどん強くなってる。負けてられないな」
「「「はいっ!」」」
俺の声掛けに3人が返事をして特訓を再開した。
そんな日々が続いた数日後のとある夜。
俺は屋敷で婚約者たちと過ごしていると、玄関前が騒がしくなる。
「お姉ちゃんが帰ってこないんです!お願いします!カミトさんを呼んでくださいっ!」
サヤに似た声が聞こえてきた俺たちは慌てて玄関前に向かう。
すると、サヤが涙を流しながら声を上げていた。
「お姉ちゃんが……お姉ちゃんが!」
「ど、どうした!サヤ!」
俺は慌ててサヤに駆け寄り、遅れて婚約者たちもサヤのもとに集まる。
「サヤ、何があった?」
「カミトさん……ぐすん……お姉ちゃんが……お姉ちゃんがいつまで経っても帰ってこないんです。夕方には帰ってくると言ってたのに……」
「夕方には……だと?」
今は夜の22時すぎ。
帰ると約束した時間から6時間くらい経過している。
「お姉ちゃんはいつも伝えた時間には必ず家に帰ってきます。でも、今回はかなり時間が経っても帰ってきません。しかも潜ってるダンジョンは王都近くにあるS級ダンジョンです。だからお姉ちゃんの身に何かあったのではないかって……うぅ……」
そこまで言って再び涙を流し始める。
「お願いします!お姉ちゃんを助けることができるのはカミトさんしかいません!お姉ちゃんを助けてください!」
サヤのお願いを聞く前から俺の答えは決まっている。
「任せろ。今すぐ行く」
俺はサヤにそう伝えて婚約者たちの方を向く。
「俺は今からメルさんを助けに行ってくる」
「カミトさん、メルさんが潜ったダンジョンまでは私が案内します。そのダンジョンの特徴は頭に入れてますので、道中アドバイスができると思います」
「回復スキルを持ってる私がダンジョンの近くで待機しておくよ!だから安心してメルさんを助けに行って!カミトくん!」
ルーリエさんとソラさんの発言に頷く。
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
「ん、気をつけて。メルならきっと大丈夫だから」
「メル様はS級冒険者です!怪我を負って休憩してるだけだと思いますので、はやく助けに行ってください!」
俺はセリアさんとレオノーラの言葉に頷き、メルさんが潜ったダンジョンを目指した。
向かっている道中、ルーリエさんをおんぶしてS級ダンジョンを目指す。
全速力で向かっているため、ソラさんは俺のスピードについて来れず、先に目指してほしいとのこと。
「メルさんが潜ったダンジョンは王都近くのS級ダンジョンです。カミトさんがメルさんと一緒に潜ったS級ダンジョン同様に30階層まであります。20階層まではメルさんが攻略してますが、20階以降は誰も足を踏み入れてません」
つまり20階層以降はメルさん1人では太刀打ちできないということだ。
「わかりました。メルさんの場所は俺のスキルがなんとかしてくれるはずです」
そんな会話をしつつ、ルーリエさんの道案内により、メルさんが潜ったダンジョンに数分で到着する。
「カミトさん。メルさんのこと、お願いします」
「任せてください!」
俺はルーリエさんに返事をしてダンジョンに潜った。
スライム10,000体討伐から始まる逆転劇 昼寝部 @hirunebu
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