第82話 機械人形

 ルーリエさんが定期報告と俺たちの身に起こったダンジョンでの出来事を、フォーレのダンジョン協会で支部長を務めている方に話し、無事にルーリエさんの仕事が終わる。


「早かったですね」


「そうですね。伝えるだけだったので」


 とは言っているが、色々と話し合った形跡があり、たくさんの資料を持っている。


「今からどうしますか?」


「もちろん、デートです!カミトさんとデートするために早く終わらせたのですから!」


「分かりました。目一杯楽しみましょう!」


 その後、俺たちは夜遅くまでフォーレの街を楽しんだ。




 4日後。


 フォーレから王都に帰る道中も盗賊に襲われることなく、ルーリエさんからも襲われずに王都へ帰り着く。


 そして帰り着いて早々、屋敷に足を運ぶ。


「ただいま〜」


「お、お邪魔します」


 俺とルーリエさんが玄関に入ると“ドタドタっ!”と足音が響き渡る。


「おかえりー!お兄ちゃん!それとルーリエさんも!」


 足音の主はクレアだったようで、クレアが出迎えてくれる。


「それで、ルーリエさんが一緒にいるってことは……」


「あぁ。クレアが想像してる通りだ。ルーリエさんが新しく婚約者になったから」


「やったーっ!おめでとうございます!ルーリエさん!」


「はい!皆さんのおかげです!」


 そう言ってクレアを抱きしめるルーリエさん。


「今日からルーリエさんもここに泊まることになるから。仲良くしてくれよ」


「もちろんだよ!あ、ルーリエさんの歓迎会をしなきゃだね!」


「歓迎会までしてくれるのですか?」


「うん!ルーリエさんがお兄ちゃんの婚約者になってくれてうれしいので!」


「クレアちゃん!なんて良い子なんですか!」


「ル、ルーリエさん!く、苦しいです!」


 嬉しい言葉を言われたルーリエさんが、抱きしめていたクレアを力強く抱きしめる。


 それにより、ルーリエさんの巨乳で窒息しかけるクレア。


(また賑やかになりそうだな)


 そんなことを思いながらルーリエさんからクレアを引き剥がした。




 その夜。


 屋敷ではルーリエさん歓迎会が開かれた。


「ユメの時も開いてくれましたが、ここの屋敷の方たちは皆さん優しいですね」


 俺の隣にいるユメが歓迎会で盛り上がってるみんなを見ながら呟く。


「当たり前だ。ここはユメの実家じゃないんだから」


「そうですね。ユメはカミトさんにもらってくれて幸せ者です」


「俺もだ。ユメみたいに可愛い子と婚約することができたんだから」


「えへへ……」


 俺が褒めるとユメが顔を赤くして嬉しそうに照れる。


「ついにルーリエさんも婚約者になったんだね」


 そんな俺たちにヨルカさんが話しかける。


「ってことはヨルカさんが見た未来にもルーリエさんが映ってたんですね」


「うん!未来では魔王に対して強力な一撃を放ってた婚約者の1人だからね!」


「へー、ルーリエさんが魔王に攻撃を……って、ルーリエさんが魔王に攻撃!?」


 俺はおかしな発言が聞こえてきたため、ヨルカさんに聞き返す。


「あ、そっか。まだルーリエさんって受付嬢してるから戦ったことないのか」


「いやいや!戦えないから冒険者じゃなくて受付嬢をしてるんですよ!ルーリエさんは戦闘系スキルを持ってないはずですから!」


「それが未来では戦ってだんだよ。私の作った機械人形に乗って」


「………へ?機械人形?」


「うん。シェスカみたいな感じだね」


 シェスカはヨルカさんが長年研究していた時の副産物で機械人形らしい。


「ウチ、シェスカが完成してから研究の片手間にシェスカよりもすごい機械人形を作ってたんだ。それが操縦型の機械人形」


「つまり誰かが操ることで動く機械人形ってことてますか?」


「うん。私が作ったのは誰かが機械人形に乗って操作する物だよ。それをルーリエさんが操縦して戦ってた」


「なるほど。でも、俺たちはそんな機械人形見たことないですよ?未来の俺たちが手に入れてるのなら、今の俺たちが手に入れててもおかしくないですよね?」


「あ、それなら手に入れてるよ」


「え、何処でですか?」


「ウチが寝てた部屋だね」


 どうやらヨルカさんが作った機械人形は『賢者の鍵No.8』の部屋に置いていたらしい。


「あの鍵はS級ダンジョンのクリア報酬だった。なのに部屋に報酬が何も無いっておかしいでしょ?」


「あー、なるほど」


 つまり未来の俺たちはヨルカさんが寝ていた部屋で機械人形を手に入れ、ルーリエさんに操縦させていたということだ。


 でも、この世界線ではヨルカさんが部屋で寝ていたため、目覚めたヨルカさんが機械人形を別の場所に移動させてたらしい。


「ルーリエさんのスキルは正直化け物だよ。寝れば全てのことを記憶できるってことは、自分が失敗したミスを2度としなくなるってこと。戦闘においては戦闘した分だけ経験値として自分の能力になるからね」


「た、確かに」


 その可能性に気付いた未来の俺たちはルーリエさんに機械人形の操縦をお願いし、魔王と戦ったのだろう。


「だから、この世界線でもルーリエさんには機械人形を操縦してもらわないと困るんだ」


「分かりました。それなら俺が説明します。でも、無理強いはしませんよ?」


「うん、お願いね」


 ヨルカさんの話を聞いて、俺はルーリエさんに話しかける。


「ルーリエさん、少しいいですか?」


「はい。なんでしょうか?」


「実は……」


 俺はルーリエさんに魔王が復活することを伝える。


 それに併せてヨルカさんの存在と俺に婚約者が7人いることも伝える。


「カミトさんはあと1人、婚約者が増える予定なのですね」


「……そうなります」


 なぜ俺の婚約者は魔王が復活することよりも先に、婚約者が7人いることを聞いてくるのだろうか。


「分かりました。私も皆さんと一緒に戦います」


「いいんですか?」


「はい。カミトさんやセリアさんたち婚約者全員が戦ってるのに、私だけ安全な場所で見守るなんて嫌ですから。なので私はカミトさんが止めても戦います」


 ルーリエさんの瞳には決意を感じる。


 その様子を見ていたヨルカさんは「さすがカミトくんの婚約者だね」と声を発する。


「分かりました。魔王討伐のため、ルーリエさんの力を貸してください」


「任せてください!」


 俺の言葉にルーリエさんが元気に応えてくれた。

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