第40話 女王陛下からの褒美

 ソフィアさんから王宮に招待されたことを聞いた数日後。


 俺は活気付いている街並みと一枚のチラシを見る。


「S級ダンジョンの攻略達成と新たなS級冒険者誕生を祝う祭りが明日ありますね」


「そうね。これ、女王陛下が企画したらしいわよ」


 俺は隣にいるメルさんに話しかける。


「たしか、カミトは国民の前で顔出しするって聞いてるわ。頑張ってね」


「うっ。俺、何を言えばいいかわからないのですが……」


「そんなの適当でいいわよ。カミトの顔見せがメインなんだから」


 女王陛下の発案で俺のことを国民全員に紹介することとなり、それに併せて明日、王都では祭りが行われるとのこと。


 ちなみに、女王陛下からの褒美も明日もらう予定だ。


「だから緊張する必要なんてないわ。私も招待されてるからサポートするわよ」


「ありがとうございます、メルさん」


 メルさんがサポートしてくれるとのことなので少しは気が楽になる。


 そんな話をしつつ俺は宿屋に戻った。




 祭り当日。


 王宮に招かれた俺は、到着早々、1つの部屋に案内され、貴族が着るような服に着替えさせられる。


「め、メルさん。俺、似合ってますか?着せられてる感が半端ないのですが」


「そんなことないわよ。とても似合ってて……その……か、かっこいいわ」


 そんな俺を、メルさんが頬を染めつつ褒めてくれる。


 お世辞だと思うが、その言葉を聞いて少し安心する。


(社交パーティーとかで着る服なんて初めて着たからなぁ)


 俺は国民の前で顔出しするため、貴族が着るような服に着替えさせられた。


 そして今から女王陛下への謁見が待っているとのこと。


 緊張した面持ちで待機していると、“コンコン”というノック音が響き渡る。


「入っても大丈夫ですよ」


 部屋に俺とメルさんしかいないため、メルさんの様子をチラッと確認してノックした人に声をかける。


「失礼します」


 そう言って部屋に入ってきた女性を見て俺は言葉を失う。


 高級なドレスに身を包み、腰まで伸ばした金色の髪をなびかせながら優雅に歩く女性。


 絶世の美少女と言っても過言ではない女性は俺たちのもとへ辿り着くと綺麗な所作で挨拶をする。


「初めまして。わたくし、この国の第一王女である『リーシャ•ヴェール』と申しますわ」


 この国の第一王女であるリーシャ様。


 現在17歳で冒険者学校に通っており、国王陛下と女王陛下の間に王子がいないため、将来はこの国の女王陛下になることが約束されている人物だ。


「あ、えーっと……お、俺はカミト。今日はよろしくお願いします」


 王族への礼儀など学んでいないため、年下ではあるが、丁寧な言葉で頭を下げる。


 すると「ふふっ、聞いてた通りの方ですね」という言葉が聞こえてくる。


「……?」


 その言葉を聞いて頭を上げると、リーシャ様が微笑んでいた。


「わたくし、メル様からカミト様のお話をたくさんお聞きして、一度お会いしたいと思ってましたわ。妹もカミト様にお会いするのを楽しみにしてましたが、着替えに手間取ってるようで、ここには連れてくることができませんでした」


「………俺の話をメルさんから聞いたんですか?」


「はい!カミト様がメル様のことを抱きしめて『これからは俺がメルを守るから』と仰ったことまでお聞きしておりますわ!」


「ちょっ!リーシャ!そんなこと言わなくていいわよ!」


「ふふっ。すみません、メル様。口が滑ってしまいましたわ」


 そう言ってメルさんを揶揄うリーシャ様。


「メルさんとリーシャ様は仲が良いですね」


「そうね。私の親がダンジョン協会の会長だったから、昔から交流があるのよ。だから、こんな感じで話すことができてるわ。もちろん、公の場ではリーシャ様って呼んでるけどね」


「はい!だからカミト様も気軽にわたくしのことをリーシャと呼んでください!」


「そ、それは……か、考えときます……」


「すごく楽しみにしてますわ!」


 そう言ってリーシャ様はニコッと笑う。


「あ、そうでした!わたくし、メル様とカミト様を呼びに来たことを忘れてましたわ!メル様、カミト様。お母様がお呼びですわ」


 どうやらリーシャ様は俺たちのことを呼びに来たようで、俺たちは部屋を出る。


 道中、リーシャ様から「この方なら相応しいかもしれませんわ」という呟きが聞こえてきたため、聞き返すと「なんでもありませんわ」とはぐらかされた。


 俺が不思議に思っていると、一際大きな扉にたどり着く。


「お母様、入りますわ」


 そう言ってリーシャ様が扉を開ける。


 そこにはズラーっと騎士が並んでおり、中央の玉座にはソフィアさんと同じくらいの年齢をした綺麗な女性が座っていた。


 その横にはリーシャ様によく似た女性が1人立っている。


 俺はリーシャ様に続き、真ん中に敷かれた赤い絨毯を歩き、真ん中の位置でメルさんと一緒にひざまずく。


 リーシャ様はひざまずかずに玉座の横へ移動する。


「表をあげていいわ」


 玉座に座っている女性、女王陛下からの言葉を聞き、俺とメルさんは顔を上げる。


「S級冒険者、メル•ルージュ。並びにS級冒険者、カミト•ヴィオレ。S級ダンジョンの攻略、国民を代表して感謝するわ。ありがとう」


「もったいなきお言葉!」


 メルさんが代表して発言する。


「国民は皆、いつS級ダンジョンが崩壊してモンスターが溢れ出すか不安で仕方のない日々を送っていた。そんな中、2人は攻略してくれた。このことは国にとって素晴らしい貢献となったため、2人には褒美を与えるわ」


 女王陛下がそういうと、メイド服を着た女性が俺たちの前に大きな箱を持ってくる。


「その中には白金貨500枚が入ってるわ」


「白金貨500枚!?」


 俺は声をあげて驚く。


 メルさんも同様の反応をしていることから、メルさんも驚いているようだ。


 白金貨500枚を二等分にしても1人白金貨250枚。


 一生遊んで暮らせるお金が褒美として与えられた。


「そうよ。あなたたちはそれだけのことをしたの。受け取ってほしいわ」


「こんなに要りませんよ!」


「そうです!私も街のためにやったことです!お金をもらうためにS級ダンジョンを攻略したわけじゃありません!」


「それはダメよ。あなたたちは白金貨500枚の価値がある成果を挙げたと思ってるもの。受け取らないということは、女王である私の好意を拒否することになるわ」


「「うっ」」


 そう言われると反論できないので、素直に受け取ることにする。


「ありがとう。それと、カミト•ヴィオレには家をプレゼントするわ」


「………え?」


 おかしな言葉が聞こえてきたため聞き返す。


「あなたには家を与えるわ。宿屋で暮らしていると聞いたのでちょうどいいと思うわ」


「た、確かに、ずっと宿屋で暮らすわけにもいかないとは思ってたのでありがたいのですが……」


「なら、遠慮なく受け取ってほしいわ」


「あ、ありがとうございます」


 まさかお金だけでなく家まで褒美でいただくこととなった。


「これからも王都のために活躍してくれることを期待してるわ。頑張ってね」


「「はい!」」


 こうして女王陛下からお金と家を受け取った。

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