第38話 S級ダンジョンの攻略 9

 目の前に2つの宝箱が目に入り、俺たちは1つずつ宝箱を開ける。


「1つ目は……おぉ!巾着袋が出てきました!」


「そうね。おそらくアイテムバッグの類でしょう」


 宝箱の中から腰にぶら下げることができる小型の巾着袋が出てきた。



ーーーーー


【巾着型アイテムバッグ】


 巾着袋タイプのアイテムバッグ。どんな物でも収納することができ、容量に制限はない。巾着袋に時間魔法が施されており、中に入れた物の時を止めることができる。また、壊れた物を入れると修復してくれる。


ーーーーー



「すごいアイテムが出てきましたね」


「そうね。これがあれば商人は仕事が楽になるわ」


 商人もそうだが、回復薬や魔石を入れるバッグを持って冒険する冒険者にとってもありがたい道具だ。


 ちなみに、小型の巾着袋タイプなので巾着袋よりも大きい物は収納できないと思ったが、巾着袋を開いて近づけると吸い込まれるよう収納できた。


「さすがS級ダンジョンの報酬部屋ね」


 そう言ってメルさんは持っている巾着袋を俺に渡す。


「私はいらないわ。1番活躍したカミトが受け取るに相応しいと思うから」


「え!俺とメルさんの共用ってことにした方が……」


「私は今回の攻略でカミトの足を引っ張ったのよ。受け取る資格なんてないわ」


「そんなことない……」


「私はカミトが受け取るまで言い続けるわよ」


「うっ。そ、そこまで言うなら俺が貰います」


 本気で言い続ける雰囲気を感じたため、俺は巾着袋を貰う。


「さて、次の宝箱を開けるわよ。もう1つの宝箱は……鍵が出てきたわね」


 メルさんが宝箱を開けて手に取った鍵は、黒色の鍵だった。



ーーーーー


【賢者の鍵 No.8】


 500年前、魔王を封印したメンバーの中で魔法の天才だった者が作った鍵。王都近くにある山小屋で使用可能。


ーーーーー


「なるほど。賢者の鍵ですか。王都近くの山小屋って分かりますか?」


「わからないわ。王都近くと言われても王都が広すぎるから」


「そうですよね」


 使う場所に関しては賢者さんで調べることができることを願って、俺は鍵を巾着袋に入れる。


「はやく出ないとダンジョンごと私たちも消滅するわ。はやく脱出するわよ」


「はい!」


 メルさんの発言に応えた俺はメルさんの後を追い、ダンジョンから脱出した。




 報酬をゲットした俺たちは急いでダンジョンを出る。


「もう夜になってますね」


「そうね。きっとセリアたちが心配してるからダンジョン協会に急いで行きたいけど……まずはカミトを宿に送ってからね。ふらふらしながら歩いてるわよ」


「あはは…バレてましたか」


 黒の騎士との戦いで重傷を負った俺はメルさんの膝枕で歩けるレベルまで回復したものの限界が来ていた。


 傷は回復薬で概ね塞がったが、流した血の回復と肋骨の骨折を修復することはできていない。


「だから宿まで送るわ。後でソラに回復してもらって」


 ダンジョン協会よりも俺の宿屋の方が近いため、メルさんの提案に乗り、俺は宿屋を目指すことにする。


「それとカミトが歩いてる途中に転んだら困るから……その……わ、私が肩を貸してあげるわ」


「………へ?」


 メルさんの言ってることがわからず聞き返す。


「だから私が肩を貸してあげるって言ってるの!」


 すると少し強めの口調で同じことを言われる。


「だ、大丈夫です!これくらいの怪我で……っとと」


 メルさんに返答していると、貧血症状のように倒れそうになる。


「どこが大丈夫なのよ」


「あはは…」


 結局、俺は折れてメルさんの肩を借りて宿屋を目指す。


「すみません、メルさん。男である俺に肩を貸したくないとは思いますが……」


 男嫌いであるメルさんは俺の怪我を見て、我慢して肩を貸してくれている。


 そう思うと自然に出てきた言葉だが…


「さっきも言ったけど、カミトになら触られても平気よ。もちろん、私からカミトに触ることもできるわ。だって肩を貸すよりも恥ずかしいことをしたし……」


「肩を貸すよりも恥ずかしいこと?」


「っ!な、なんでもないわ!」


 俺が聞き返した途端、顔を真っ赤にして俺から視線を逸らす。


 ものすごく気になるため追求しようとすると…


「お、おい。あれってS級冒険者のメルさんだろ?男と一緒にいるんだけど」


「そんなわけないだろ。男が嫌いすぎて冷たい対応を取ってることから『氷姫』との異名を持ってるくらいだぞ。男と一緒にいるなんて……ってマジや!『氷姫』が男といる!」


「しかもあの男、メルさんに肩を貸してもらってるぞ。誰だアイツ?」


「知らん!だが、メルさんと距離が近い男なんか聞いたことねぇぞ!」


「これはビックニュースだ!」


 等々、外野が唐突にうるさくなり、聞き返すどころではなくなる。


 しかも、俺の怪我なんか眼中にない。


「急いで行くわよ」


「お、お願いします」


 そんな会話をして、俺たちは外野を無視しつつ宿屋を目指す。


 しばらく無視しながら歩くと、俺はあることに気がつく。


(やばい。この体勢、マジでやばい。なんかドキドキする。しかもメルさんの巨乳が柔らけぇ)


 俺はメルさんに寄りかかりながら歩いているため、メルさんとの距離が近くなり、ドキドキしてしまう。


(ダメだ。このままでは善意のメルさんに申し訳ない気持ちになる)


 そう思い、俺はメルさんの身体に注意がいかないよう、気になっていたステータスを確認する。



*****


名前:カミト•ヴィオレ

年齢:18

レベル:4358(1605up!)

筋力:32810(6226up!)

器用:32755(6206up!)

耐久:32764(6235up!)

俊敏:32822(6239up!)

魔力:32637(6167up!)

知力:32893(6255up!)


スキル:【剣聖】

    【賢者の眼】


称号:〈ジャイアントキリング Lv.4〉

〈無傷の冒険者 Lv.5〉

〈少数精鋭 Lv.1〉

〈S級ダンジョンを踏破した者 Lv.1〉(New!)

〈火事場の馬鹿力 Lv.1〉(New!)


装備:純黒の長剣(全ステータス4,098上昇)

   純黒のコート(全ステータス4,098上昇)

   純黒の靴(全ステータス4,098上昇)


*****


ーーーーー


〈S級ダンジョンを踏破した者 Lv.1〉


 S級ダンジョンを1つ踏破した者に与えられる称号。


 自分を含め、パーティーメンバーのステータスが10%上昇する。


〈火事場の馬鹿力 Lv.1〉


 追い込まれ窮地に立たされた状況下において、普段では想像できない力を発揮し、困難を乗り越えた者に与えられる称号。


 自分の身体に限界が来た際に気持ちが折れてなかった時、全ステータスが10%上昇する。


ーーーーー


 このステータスに称号によるステータス上昇が加わるため、条件によっては全ステータスが40,000を超える可能性がある。


(うん、エグい。スライムしか倒せなかった時期が嘘みたいだ)


 そんなステータスが現れる。


(しかも〈S級ダンジョンを踏破した者〉の称号が強すぎる。32,000の10%は3200だから、俺の場合、全ステータスが3200は上昇することになるぞ。それに俺だけでなくパーティーメンバー全員のステータスが上昇するって破格すぎる)


 そんなことを思う。


「着いたわ。ここであってる?」


「あ、はい。ありがとうございます」


 俺がステータスの確認に夢中になっていると、いつの間にか宿屋に到着していた。


「ここまで来れば大丈夫です」


「わかったわ。ダンジョン協会で攻略したことの報告とソラを呼んでくるわ。ソラに回復してもらいなさい」


「ありがとうございます」


 俺はメルさんに礼を言い、別れる。


 その後、部屋にたどり着きクレアを呼ぶと、重傷の俺を見たクレアが大泣きして大変な目にあったが、どうにかクレアを安心させて眠りについた。

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