第37話 S級ダンジョンの攻略 8
気がつくと後頭部に柔らかい感触を感じた。
(柔らかい。最高の寝心地だ)
そんなことを思い、再び眠りにつこうとするが…
(待てよ?確かS級ダンジョンの30階で黒の騎士とかいう化け物に勝ってそのまま倒れたんだよな?ダンジョンに柔らかい枕なんかないし……)
と思い、俺は頭に敷いているものを触ってみる。
「ひゃっ!」
すると可愛らしい声が上から聞こえてきた。
「………」
嫌な予感がした俺はすぐに目を開けると、メルさんの巨乳が目に入った。
(ってこれ、膝枕じゃん!)
そこで、ようやく自分の体勢を理解する。
そして飛び跳ねるように起き上がる。
「痛って!」
「だ、大丈夫!?」
そんな俺に優しくメルさんが話しかける。
「だ、大丈夫です!ってそんなことよりも、ごめんなさい!男嫌いのメルさんに触ってしまって!」
俺は太ももに触ったことを即座に謝る。
(きっと今から半殺しか永遠の罵倒がやってくるんだろうなぁ)
そんなことを思いつつ、ビクビクしながらメルさんの言葉を待つ。
しかし、俺の想像した未来はやってこなかった。
「カ、カミトになら触られても平気よ。だから謝らなくてもいいわ」
「………あ、ありがとうございます?」
「なんで疑問系なのよ」
まさか許してもらえるとは思わなかった俺は、ぎごちない返答となる。
(顔を真っ赤にしてるからめっちゃ怒ってると思ったんだが……)
俺がメルさんの行動を不思議に思っていると、突然メルさんが頭を下げる。
「ごめん!カミト!私がカミトを殴ったから大怪我を負ってしまって……」
徐々に声が小さくなりつつも、メルさんが謝ってくる。
「気にしないでください。メルさんのパンチは効きましたが、それが原因で大怪我を負ってませんから」
全然そんなことはなく、メルさんのダメージが響いて苦戦を強いられたが、そのことは黙っておく。
「やっぱりカミトは優しいわね」
「……?」
すると、なぜか「優しい」と言われる。
理由は全くわからなかったが、聞き返すことはせず、俺はメルさんの身を心配する。
「それよりもメルさんは大丈夫ですか?嫌な出来事を思い出させるスキルを喰らってましたので」
「っ!」
俺の発言を聞いて、なぜか顔を真っ赤にする。
「え、えぇ。カ、カミトのおかげで問題ないわよ」
「………?」
なぜそんな反応をするのかは理解できなかったが、大丈夫そうなので一安心する。
すると…
「ね、ねぇ、カミト。カミトはこれからも私のことを守ってくれるのね?」
メルさんが不安そうな顔で口を開く。
『これからは俺がメルを守るから』
この言葉は俺がメルさんへ言った言葉だ。
「もちろんです。まぁ、S級冒険者のメルさんを守る機会なんてないとは思いますが」
「そ、そう……」
すると、先ほどよりも顔を真っ赤にしたメルさんが俺から顔をそらす。
「ど、どうしましたか?」
「な、なんでもないわよ!」
と言うが、俺の顔を全く見てくれない。
(な、なんかやってしまったんだろうか?)
そう思い考えるも、見当がつかない。
「と、とにかく!ダンジョンのコアを破壊するわよ!騎士の魔石は私が回収しておいたから!」
「そ、そうですね!」
変な空気を変えるため、俺もメルさんの提案に同意する。
「それとボス戦では私の過去のせいでカミトの足を引っ張ってしまったわ。だからカミトは私の過去を知る必要があると思うの」
正直、メルさんのトラウマは気になっていた。
「奴隷にもなる!何でもする!だから妹には手を出さないで!」という言葉を聞いてから。
「でも少しだけ待ってほしいの。カミトに話す心の準備ができるまで。必ず、カミトには話すから!」
「わかりました。メルさんの心の準備ができるまで待ち続けますよ」
トラウマを人に話すことには抵抗がある。
メルさんはそのトラウマを話そうとしてくれた。
それだけで俺はメルさんとの距離が縮まったように感じる。
そのことを嬉しく思い、俺は微笑む。
「な、なによ?」
「いえ、なんでもありません。はやくダンジョンコアに向かいましょう」
そう言って俺は歩き出す。
今回俺たちの目的は、王都の地下にあるS級ダンジョンのコアを破壊し、このS級ダンジョンを消滅させることだ。
「これね」
たどり着いた場所には、占い師がよく使う水晶玉のような物が台座の上にポツンと置かれていた。
「これを割るとダンジョンが消滅するわ。じゃあ、割るわよ」
とのことで、メルさんが地面に水晶玉を叩きつける。
すると…
『ダンジョンコアが破壊されました。そのため、このダンジョンは後30分で消滅します』
とのアナウンスが聞こえてくる。
「じゃあ帰るわよ。カミトは大怪我を負ってるんだから」
「そうですね。自分でも歩けてることが奇跡だと思ってます。俺、どれくらい寝てましたか?」
「私が起きてから3時間は寝てたわ」
「えっ!俺、3時間もメルさんに膝枕してもらってたんですか!?」
「3時間も膝枕はしてないわよ!」
どうやら3時間は膝枕をしてないようだ。
「なら3時間もメルさんを待たせてしまってたんですね。途中で俺を起こしても良かったと思いますが……」
「重傷を負ってる人を無理やり起こす趣味なんてないわ」
「た、確かに……」
俺も逆の立場だったら絶対に起こさない。
「じゃあ、俺が起きる間の3時間は何してたんですか?」
「っ!」
純粋に気になったことをメルさんに聞く。
すると、なぜか顔を真っ赤にする。
「カ、カミトには関係ないわ!」
どうやら聞かれたくないようだ。
(そんな反応されると逆に気になるんですが……)
「ほ、ほら!はやくワープゾーンに入るわよ!」
これ以上、この話題に触れたらまずいようなので、俺はメルさんに促されてワープゾーンに入る。
すると、俺たちの目の前に宝箱が2つ用意されていた。
「報酬部屋につきましたね」
「報酬がないなんて割に合わないもの。たどり着いて当然ね」
そんな話をしつつ、俺たちは宝箱を開けた。
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