第32話 S級ダンジョンの攻略 3
その後、俺とメルさんはセリアさんとソラさんのことをいない人と思って攻略を再開する。
「メルさん!」
「任せて!アイスボール!」
俺の声に反応したメルさんが、俺を攻撃しようとしていたドクサソリに攻撃してくれる。
「『絶剣技』三の型〈輪舞〉」
メルさんの攻撃を喰らい怯んだドクサソリへ、トドメの一撃を加える。
その結果、俺とメルさんの攻撃に耐えることのできなかったドクサソリが魔石となって消える。
「おぉ。完璧なコンビネーション」
「すごいです!長年パーティーを組んでたかのように息がぴったりです!」
俺たちの戦いを見学していたセリアさんとソラさんが絶賛する。
「そ、それは褒めすぎよ」
「そうですね。でもメルさんとのコンビはとても戦いやすいです。俺たち、相性が良いと思いますよ」
「そうね。私も戦いやすいと思ってるから相性はいいかもしれないわ」
「むぅ」
俺たちの会話を聞いたセリアさんが頬を膨らませる。
「な、なによ」
「別に。身体の相性は私の方がいいから問題ないって思っただけ」
「ぶっー!」
「「か、身体……」」
セリアさんの爆弾発言に俺は吹き出し、2人が顔を赤くする。
「そ、そんなことで張り合ってこないで!」
「いずれ私はカミトのお嫁さんになるから、身体の相性は大事。まぁ、私は処女だから身体の相性なんてものはわからないけど」
「セリアは一旦、黙って!」
メルさんがセリアさんの口を塞ぐ。
(そ、そうか。セリアさんって処女なのか……美女だから経験あるのかと……)
『すごいです。私、22歳まで乙女であり続けているところに感服致しました』
(………なんで話しかけてくるんだよ)
ダンジョン内ということで【賢者の眼】を発動させていたため、賢者さんが話しかけてくる。
『いえ、22歳まで初めてを捧げず守り続けることはすごく大変なことなので、それをお伝えしようかと思いました。ちなみに私も処女です』
(聞いてねぇよ。ってかお前にも処女とかあるんだ)
マジで必要のない情報をいただく。
「こほんっ!ま、まずはダンジョンを出ましょう!ここは20階層なので、あと少しですよ!」
話題転換を図るため、咳払いをしたソラさんが探索続行を促す。
「そ、そうね」
「むぅ、私の方が身体の相性は……」
「いつまで言うのよ!」
そんな感じで探索を続け、俺たちは20階層のボスを倒して帰還した。
「さすがカミトくん。まさか1日でメルと仲良くなるなんて。昨日の言葉は撤回しよう。アホとか言って悪かった」
「いえ。メルさんも俺の方に歩み寄ってくれましたので」
「そうなのか?」
「そ、そうね。母さんはカミトのことを信頼してるようだしセリアとソラも信頼してるから、私も信頼しようと思っただけよ。他にもあるけど」
「おぉ!メルが男を信頼する日がくるなんて!」
そう言って喜ぶソフィアさんの目には光るものが見えた。
(きっと今までソフィアさんも苦労してきたんだろう。俺がメルさんと仲良くなれたことで少しでも気が楽になればいいな)
そんなことを思う。
「だから予定通り私とカミトでS級ダンジョンを攻略してくるわ」
「頼んだぞ、2人とも。それと、無事に帰ってきてくれよ」
「もちろんよ」
「はい!」
そして翌日。
「お兄ちゃん、今日は未踏の階層に足を踏み入れるって聞いてるよ。無理はしないでね?」
「あぁ。メルさんもいるから大丈夫だ。必ず無事に帰ってくるよ」
俺は心配そうな顔をしているクレアの頭に手を置き、安心してもらう。
「うん!頑張ってね!」
「行ってくる」
俺は借りている宿屋を出て、S級ダンジョンを目指す。
ちなみに、セリアさんの家には3日間だけ泊めていただき、その後は宿屋で生活をしている。
俺は動ける程度の手荷物を持って待ち合わせ場所であるダンジョン入り口に到着する。
そこにはメルさんの他にセリアさん、ソラさんの2人がいた。
「すみません、お待たせしました」
「気にしなくていいわよ。私たちも今来たところだから」
「その通り」
メルさんの言葉にセリアさんが同意する。
「2人とも、気をつけて」
「無事に帰ってきてくださいね!」
「心配しなくても怪我なく帰ってくるわ」
「帰ってこないとクレアから怒られるので、すぐに戻ってきますよ」
そんなやり取りをした俺たちは、セリアさんとソラさんに見送られて21階層へ移動した。
ダンジョンにはフロアボスというものが存在する。
フロアボスは5階層刻みに存在しており、毎回強力なモンスターが出現する。
事前に聞いた情報では21階層からはA級モンスターの中でも上位に位置するモンスターが出現し、25階層のフロアボスがS級モンスターとのこと。
そして、26階層から21階層の比ではないくらいのA級上位モンスターが大量に現れ、メルさんだけでは26階層の攻略ができないらしい。
「できるだけ体力温存で行くわよ。カミトが言うにはこのダンジョンは30階が最下層らしいし」
賢者さんに調べてもらったところ、このダンジョンは30階が最下層とのこと。
つまり、30階に最も強いモンスターがいることになる。
俺は体力を温存するため、賢者さんを呼び出す。
「賢者さん、敵の少ないルートを逐一教えてくれ」
『了解しました』
メルさんには「敵の位置を教えてくれるスキルを持っている」と伝えていたため、俺を疑うことなくついてきてくれる。
「すごいわ。ここまでほとんど敵に遭遇しないなんて」
21階層からはモンスターのレベルは上昇するが、モンスターの数は少ない。
そのため、モンスターと戦う回数は最小限に抑えることができ、25階層まで問題なく来ることができた。
「だいぶ楽をしましたね。さすが賢者さんです」
『もっと褒めてください』
「………」
毎度のごとく、褒めろ褒めろアピールがウザい。
(賢者さんって定期的に称賛を求めてくるよな)
『褒められて調子に乗る子なので』
(正直者かよ)
正直すぎて逆に潔さを感じる。
そんなことを思いつつ、しばらく歩き続けると、目の前に大きな扉が現れる。
「ここよ。ここが25階層のフロアボスがいる部屋ね」
目の前の扉から、ただならぬ気配を感じる。
「ボスはレッドドラゴンよ」
過去に1度、メルさんは25階層のフロアボスであるレッドドラゴンと対峙しており、1人で勝っている。
その時、ひたすら遠距離から魔法を放つことで、軽傷で勝利することができたとのこと。
そして、それが評価されS級冒険者になったらしい。
「飛ぶのは厄介だけど、攻撃は火を吹くか爪で攻撃するかの2択だけ。だから避けるのは簡単と思うわ」
ドラゴンならブラックドラゴンと対峙したことがあるため、ある程度戦い方はわかっている。
俺はメルさんに頷く。
「じゃあ行くわよ」
そう言ってメルさんは扉を開けた。
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