第31話 S級ダンジョンの攻略 2

 俺は賢者さんにお願いし、メルさんのステータスを確認する。



*****


名前:メル•ルージュ

年齢:22

レベル:3420

筋力:13421

器用:20889

耐久:13398

俊敏:13471

魔力:20912

知力:20897


スキル:【氷の魔女】

    【身体強化 Lv.Max】

    【魔力回復 Lv.Max】

    【魔力上昇 Lv.Max】

    【鑑定 Lv.2】


称号:〈孤高の魔女 Lv.Max〉

〈魔法だけで生きる者 Lv.Max〉


装備:古代の杖(器用•魔力•知力が5000上昇)

   深紅のローブ(全ステータスが1500上昇)

   深紅の靴(全ステータスが1500上昇)


*****


ーーーーー


【氷の魔女】


 氷魔法を自在に操ることができることに加え、器用•魔力•知力のステータスが2000上昇する。


〈孤高の魔女 Lv.Max〉


 誰にも頼らず魔法だけで数々のモンスターを倒してきた者が獲得できる称号。


 称号保持者が1人で戦う時、全ステータスが5,000上昇する。


〈魔法だけで生きる者 Lv.Max〉


 魔法だけで数々のモンスターを倒してきた者が獲得できる称号。


 称号保持者が魔法攻撃を行う時、威力が25%上昇する。


【古代の杖】


 代々ルージュ家が受け継いできた杖。


 何百年も昔から存在しており、希少価値がものすごく高い。


ーーーーー



(なるほど……ぶっ壊れステータスだな)


 ツッコミどころしかないステータスが現れる。


(このステータスってスキルと装備を加えた数値だろ?これに称号のステータスが加わるから……え、メルさんって1人で戦ったら魔力とか25,000超えるの?そりゃS級冒険者になれるわ)


 魔法の攻撃に関しては魔力の数値が関わってくる。


 そのため、魔力25,000近くとなれば、ものすごく強力な魔法を放つことができる。


 それに加えて魔法攻撃なら威力が25%も上昇する。


(攻撃力に全振りしてるようなステータスだな)


 そんな感想を抱く。


 すると、『ご主人様。追加の情報も鑑定しました』との報告を賢者さんから受ける。


(お、ホントか!男嫌いな理由とかが分かれば嬉しいぞ!)


『ご主人様なら必ず喜ぶ内容です』


 その言葉を聞いてワクワクドキドキと期待しながら情報を待つ。


 すると、視界の端にメルさんの名前と英数字の羅列が目に入る。


 メル:B84・W57・H83(推定Eカップ)


「………」


『ドヤ〜』


(もうコイツに期待するの、やめようかな)


 とりあえずメルさんの3サイズは暗記しました。




 その後、俺とメルさんはコミュニケーションを行いつつ探索を進める。


「今度は俺が倒します!」


「………」


 “ザシュっ!”


 俺は目の前のオーガを剣で倒す。


 すると、すぐにオーガがもう1匹現れる。


「………」


「あ、今度はメルさんが倒すんですね!お願いします!」


「アイスソード」


 杖を構えたメルさんを見て、俺は瞬時にその場から離れる。


「いけ」


「グォォォっ!」


 メルさんのアイスソードに貫かれ、オーガが魔石となる。


「おー。だんだん連携っぽくなってきた。さすがメルとカミト」


「これを連携といっていいのかは分かりませんが、協力はするようになりましたね」


 俺がメルさんの動向を逐一確認し、メルさんの意図を汲み取って合わせてるだけだが。


「だね!10階までは協力しなかったって聞いてたから、かなりの進歩だよ!」


(男が嫌いと言ってた俺と多少だがコミュニケーションを取ってくれて、今のような感じで協力もしてくれる)


 そう言われるとかなりの進歩を感じる。


「メル。21階からは私たちはついていけない。今の感じでカミトと協力すれば21階からも問題なく探索できる?」


「そうね。もともと私1人でも問題なく探索できてるから問題ないと思うわ。ソロでの探索にならないからステータスは少し下がっちゃうけど」


〈孤高の魔女〉という称号により、ソロでの探索だと全ステータス5,000上昇という効果が追加されるが、俺と一緒に探索することになるため、〈孤高の魔女〉は発動しない。


「大丈夫です。その辺りは俺がサポートしますので」


「ん、なら安心」


「私もカミトくんが言うなら安心だよ!しっかりとメルさんを守ってね!」


 セリアさんがホッとした表情で言い、ソラさんは俺なら守ってくれると確信してるように言う。


 その様子を見てたメルさんが「ねぇ、セリア」と、不思議そうに口を開く。


「どうしてセリアはアイツを信頼してるの?アイツはセリアに『希望の花』を渡しただけの関係よ。セリアにとっては命の恩人だけど、それだけで信頼しすぎだと思うわ。それに『好きな人』とか言ってたし」


 メルさんにとって、セリアさんが俺のことを信頼しすぎているように見えるらしい。


 俺も『希望の花』をあげただけで告白されるとは思わなかったので、セリアさんの返答が気になる。


「理由はたくさんあるけど1番はこれ。私は自分よりも他人を優先し、謙遜することなく振る舞う姿を見て、カミトを信頼できると思った」


 真っ直ぐな瞳でメルさんに言う。


「ソラはなぜアイツを信頼してるの?」


「ふえっ!私!?」


「そうよ。ソラもアイツのことを信頼してると思ったわ。なぜなの?」


「え、えーっと……私、リブロでS級モンスターのブラックドラゴンに襲われてるところをカミトくんに助けられたんです」


「えっ!そんなことがあったの!?」


「はい。その時、カミトくんが颯爽と現れて助けてくれたんだけど、カミトくんは私がブラックドラゴンと対峙してることを知ってて助けに来てくれたんです。自分の身が危険になる可能性があるにもかかわらず。それだけで私は信頼できる人って思ったんです」


 ソラさんの発言を聞いてメルさんが考え込む。


「私、昔のことがあって男は絶対に信頼しないようにしてきたわ。その結果、どんどん男が嫌いになったの。会話も嫌なくらいに」


(なるほど。だからメルさんは男嫌いになったのか)


 ある程度予想はしてたが、予想通りだったようだ。


「でもセリアとソラはアイツの内面を見て信頼できると思ったのね。それに母さんにも言われたわ。アイツは絶対にメルを傷つけないって。母親と親友、それに友達の言うことは信じなきゃダメよね」


「メル!」


「メルさん!」


「ま、まぁ、私があれだけ酷い対応をしても歩み寄ろうとしてくるお人好しだから、信じてあげてもいいかなーって思っただけよ」


 そう言ってメルさんが俺の方を向く。


「そ、その……い、今まで酷い対応をしてごめん……カミト」


「……え?」


 咄嗟のことで脳が理解できず聞き返してしまう。


「だから、ごめんなさいって言ったの!今度は聞こえたでしょ!」


「あ、いえ!まさか俺のことを名前で呼んでくれるとは思わなくて」


「な、なによ!今まで通りアンタって呼ぶわよ!」


「いえ!名前で呼んでくれて嬉しいです!それと、今までの対応は気にしてませんので、謝らなくてもいいですよ」


「……ふんっ!」


 若干頬を染め、顔を逸らすメルさん。


「男は嫌いだけどカミトのことは……その……信頼しようと思うわ。これからはちゃんとコミュニケーションもする予定よ」


「メルさん!」


「ただし!コミュニケーションだけよ!私の身体に触ったら殺すからね!」


「わ、わかりました!」


(メルさんに触ったら殺されるらしいが……少しはメルさんとの距離を縮められたかな)


 そう思うと自然と笑みが溢れる。


「な、なによ!突然、笑ったりして!」


「あ、いえ!俺、メルさんとは仲良くなりたかったので嬉しいなぁって思っただけです!」


「っ!私から散々酷いことされたのに……」


「これがカミトの良いところ」


「はい!」


「ふふっ、そうかも。だから私はカミトのことを信頼しようと思ったのね」


 男である俺がいることで表情が固かったメルさんにも、ようやく笑顔が生まれる。


「メルとカミトが無事仲良くなったことで、このまま探索を再開するよ」


「えぇ!」


「はい!」


「分かりました!」


 俺たちはセリアさんに返事をして、探索を再開した。

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