第16話 vsブラックドラゴン 2

「さて、討伐開始だ!」


 俺は気合を入れるために、大きな声を出す。


「賢者さん!ブラックドラゴンの弱点を教えて!」


『了解しました。視覚を通して弱点となる部分に印をつけました。その部位は【硬化】のスキルを発動できませんので、その部位を狙ってください』


「さすがっ!」


 その発言を聞き終わると、ドラゴンの身体にいくつもの赤い点が見え始める。


「あとは【賢者の眼】の効果にある3秒先の未来を知ることができる能力を上手く組み合わせれば勝てるか。賢者さん!未来視!」


『了解しました』


 俺のお願いを叶え、俺の脳内ではブラックドラゴンの3秒先の未来が分かる。


「可愛い女の子が見てるんだ。カッコ悪いところは見せられないよな。それに、1人で勝手に死なないことをクレアと約束してるんだ。こんなところで死ぬわけにはいかない!」


 俺は自分に言い聞かせるように呟く。


「動かないようなら俺から攻撃させてもらうぞ!」


 俺は地面を蹴り、ドラゴンとの距離を詰める。


「はぁーっ!」


 そして足の部分にある赤い点目掛けて一閃するが、爪によって防御される。


「やっぱり防がれるか。っと!」


 俺は背後から来る攻撃を未来視で感じとり、高々とジャンプすることで回避する。


「速いな。【剣聖】スキルで経験した記憶と未来視がなければ殺されてたぞ。さすが、全ステータス15000の攻撃だ」


 背後からの爪攻撃の速さに驚きつつも、着地すると同時に技を繰り出す。


「『絶剣技』初の型〈牙突〉」


 実際はただの突き攻撃だが、突き攻撃に全振りしてるため、異次元のスピードと攻撃力を誇る。


 また部位破壊に特化した剣技となり、赤い点にピンポイントで攻撃を仕掛けるには持ってこいの技だが、弱点として咄嗟の防御や方向転換はできない。


 しかし、3秒先の未来が見えることで、ブラックドラゴンがどのような回避行動を行うか把握できるため、咄嗟の防御や方向転換をする必要がない。


「グォッ!」


 俺の〈牙突〉に対してドラゴンが回避行動を行うも、その回避行動は未来視で分かっていたため、突き攻撃に全振りし、スピードが上昇している〈牙突〉を避けきれず、足にある赤い点、つまり関節を貫く。


「グォォォ!!!!」


 貫かれたことに驚いているのか、痛いことに声をあげているのかはわからないが、追撃のチャンスなので追撃を図る。


「『絶剣技』初の型〈牙突〜燕返し〜〉


 貫いた先にある壁を利用して反転し、再度〈牙突〉を繰り出す。


 しかし、俺の追撃に気づいたドラゴンは飛ぶことで回避する。


「このパターンはカインからもらった記憶で経験済みだ!」


〈牙突〉の勢いが死んだと同時に上空を向く。


「『絶剣技』四の型〈旋空〜四連撃〜〉」


 そして飛ぶ斬撃を翼目掛けて飛ばす。


 斬撃が飛ぶとは思わなかったのか、焦った表情で鉤爪で斬撃を防ぐ。


 しかし、4つの斬撃を防ぐことはできず、斬撃の1つが右翼にある赤い点にクリンヒットする。


「グォァッ!」


 落下しているドラゴンへ距離を詰めるも、ドラゴンは体勢が整ったようで落下しながら口を大きく開ける。


「【竜の息吹】かっ!」


 俺は未来視でドラゴンの攻撃を把握し、冷静に対応する。


「ゴォォォォッ!」


 視界いっぱいに広がる【竜の息吹】を紙一重で躱しつつドラゴンとの距離を詰め、一際大きな赤い点が示されているドラゴンの胴体へ潜り込む。


(すげぇよ【剣聖】と【賢者の眼】。紙一重で避けつつドラゴンとの距離を縮めるとか普通できねぇよ)


 カインの記憶で身体の使い方、動かし方が分かる【剣聖】スキルと、【賢者の眼】による未来視があるからこそできる芸当を遺憾なく発揮する。


 そして、ガラ空きとなったドラゴンの懐に…


「『絶剣技』三の型〈輪舞〉」


 俺は渾身の回転斬りを喰らわせる。


「グォォォォォォォ!!!!」


 今まで聞いたことのないような雄叫びをあげてドラゴンが倒れる。


 そして、ドラゴンが魔石を残して消滅したことを確認する。


「ふぅ、なんとか討伐できたな」


 女の子から借りた長剣のおかげで攻撃力が向上したことに加え、一際大きな弱点となっていた胴体へ渾身の一撃を喰らわせたため、無事にドラゴンを倒すことができた。


 俺は『レベルアップしました』という言葉が止まることなく脳内で鳴り響く中、一息つく。


「【剣聖】スキルと【賢者の眼】強すぎ。格上のブラックドラゴンを無傷で倒したんだけど」


 改めて2つのスキルの異常さを理解する。


「そしてレベル40の男がレベル5000のドラゴンを倒したからな。やかましいくらいレベルアップしてるわ。しかも称号までゲットしたらしいぞ」


 俺は気になったため、チラッとステータスを確認する。



*****


名前:カミト•ヴィオレ

年齢:18

レベル:2246(2206up!)

筋力:19167(6575up!)

器用:18649(6561up!)

耐久:18644(6549up!)

俊敏:18653(6557up!)

魔力:18605(6526up!)

知力:18694(6592up!)


スキル:【剣聖】

    【賢者の眼】


称号:〈ジャイアントキリング Lv.4〉(New!)

〈無傷の冒険者 Lv.5〉(New!)


装備:最高級の長剣(筋力:500上昇)

   ボロい服

   ボロい靴


*****



ーーーーー


〈ジャイアントキリング Lv.4〉


 レベル差が4,000以上の状態で格上のモンスターを1人で倒すと獲得できる称号。


 称号保持者のレベルよりもレベルが上のモンスターを相手にする時、全ステータスが4,000上昇する。


〈無傷の冒険者 Lv.5〉


 ダメージを負うことなくレベル5,000以上のモンスターを1人で討伐すると獲得できる称号。


 称号保持者がレベルアップした際、装備している武器や防具の性能もアップする。


ーーーーー



「………うん。後ほど精査しよう」


 あり得ないステータスから目を逸らし、俺は女の子の元へと歩き出した。

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