第12話 会長からの提案
その後、会長とともに来ていた協会職員によって支部長の解任とラジハルたちの冒険者資格が剥奪される。
ラジハルの罰金に関しては支部長宅で押収した悪行の数々を全て確認しなければ確定にならないが、白金貨1枚は超えるとのこと。
支部長を務めていた父さんがいるため払えるとは思うがかなりの金額なので、自分の行いを盛大に後悔してくれるはずだ。
一通りの作業が終わり、俺は会長に感謝を伝える。
「会長、ありがとうございます!会長のおかげで、これからは楽しく冒険者生活ができそうです!」
「何度も言うが、助けるのが遅くなって……」
「もうその事は謝ってくれたので大丈夫です!」
そう言わないと何度も謝ってきそうだったので、会長の言葉を遮る。
そして話題を変える。
「あ、そうです!俺、会長に聞きたいことがたくさんあるんです!」
「そうだな。アタシもカミトくんとはゆっくり話したいと思っていた。今から時間はあるか?」
「はい!」
俺が会長に返事をすると、会長が受付嬢に話しかけ、個室を準備してもらう。
そこへ移動して会長と向かい合う。
「まずは自己紹介からだな。アタシはソフィア•ルージュ。ダンジョン協会の会長を務めている。私生活では娘が2人いる」
「えっ!娘さんがいるんですか!?」
「な、何を驚いてるんだ?」
「い、いえ。ダンジョン協会の会長にもなれば忙しくて結婚なんてしてないかと勝手に思ってまして」
「こう見えて私は40歳超えてるおばさんだからな。結婚くらいしてるぞ」
(マ、マジかよ。この見た目で40歳越え?俺、30代前半かと思ってたわ)
自己紹介の段階で衝撃を受ける。
「まず私の話を聞いてほしい。実はカミトくんはカインという男に選ばれたんだ」
その前置きからソフィアさんは話し始める。
「昔、魔王を倒したメンバーの1人にカインという男がいたんだ」
「あ、カインなら知ってますよ」
「ホントか?」
「はい。実はスキルが覚醒した時にカインの記憶……というか生き様が流れてきたんです」
俺はその時流れてきた記憶を簡単に説明する。
カインが魔王を倒したメンバーの1人だということ。
剣の達人で『剣聖』と呼ばれていたこと。
そして若くして病によって亡くなったこと。
「カインが亡くなった時、近くに1人の女性がいました。そしてカインは亡くなる直前、その人に『お前の子孫は俺のスキルを引き継いだ者を探せ』とお願いしてました」
そこで俺は一拍置く。
「俺はカインがお願いした女性の子孫がソフィアさんだと思ってます。そして、どんな方法か分かりませんが、カインの能力を引き継いだ俺を見つけ、6年前、俺に話しかけた。どうですか?」
俺は自分の考えをソフィアさんに伝える。
「そうだ。アタシの祖先はカインからのお願いを叶えるため、この時をずっと待っていた」
どうやら俺の考えは当たっていたようだ。
「どんな方法で見つけたんですか?」
「あぁ。それを話す前にアタシも少し昔話をしよう」
そのような前置きの後、ソフィアさんが話し始める。
「アタシの祖先はカインのお願いを叶えるため、どうすれば良いかを考えた。そして、アタシの祖先は【鑑定】スキルを極めることが確実に見つけることのできる方法だと思った」
(なるほど。鑑定スキルなら相手のスキルを閲覧できるから、確実にカインのスキルを手にした人を知ることができる)
「だが、スキルを引き継いだ人を見つけ出すために全ての人間を【鑑定】するのは骨が折れる。だからアタシの祖先はダンジョン協会を立ち上げ、冒険者を管理するとともに全ての人間のスキルを知ることのできる地位を確立した」
12歳の時、スキルを得た人間は必ずダンジョン協会に報告しなければならないようになっている。
「そこでカインのスキルを引き継いだ可能性のある人間を見つけ、アタシが直接会って鑑定していた。その時、カミトくんの【@&¥#%】というスキルに疑問を持ってアタシはカミトくんを鑑定し、【@&¥#%】というスキルが本当は【剣聖】スキルということを知った」
「だから俺がカインのスキルを引き継いだ人だということを知ってたんですね」
「あぁ。だが、アタシの【鑑定】スキルのレベルが低く、6年前は【@&¥#%】が【剣聖】スキルということと、とある一文しか分からなかった。その文章は『ダンジョンで{@¥/&}を{#%$¥*£<#}することで覚醒する』と説明されていた。一部、文字が読めないようになっていたが、ダンジョンに入れば何かが起こると思ったアタシは冒険者になるよう勧めた」
(なるほど。これで6年前に俺のスキルが覚醒すると言ったことや冒険者になるよう勧めてきた謎が解決する)
今までずっと気になっていたことがソフィアさんの言葉を聞いて解決する。
文字が読めない部分は{スライムを10,000体討伐}だろう。
「だが、スキルが【@&¥#%】だとステータスが上昇せず冒険者になっても苦労するはず。だからアタシは王都のダンジョン協会で働いていたルーリエをリブロ支部へ派遣した。『カミトくんが冒険者になった時は優先的にサポートしてほしい。カミトくんはいずれ最強の冒険者になるから』と言って」
「あ、だからルーリエさんは俺がオーガの魔石を見せた時、すぐに信じてくれたんですね」
見せた時、「あの方が言ってたことは本当だったんだ……」と言って驚いていた。
あれは俺がオーガを討伐したことではなく、ソフィアさんの言葉が本当だったことに驚いてたんだろう。
「これがカミトくんに話したかったことだ。何か聞きたいことはあるか?」
「いえ、俺が聞きたかったことは全て話してくれましたので」
俺がカインの能力を引き継いだ男だということをどのような方法で知ったのかが気になっていたが、今の会話で納得する。
「あ、そういえば、今日はなぜリブロに来たんですか?俺のスキルが覚醒したのを知ったとしても王都から来るのが速すぎです」
王都からリブロへ来るとなれば馬車で5日はかかる。
俺のスキルが覚醒したのは昨日なので、スキルが覚醒したことをルーリエさんから聞いたとしても速すぎる。
「それはアタシの【鑑定】スキルのレベルが上がったからカミトくんのスキルを鑑定しようと思ったんだ。その必要はなかったようだが」
(なるほど。ってことは奇跡的になタイミングだったってことか。神に感謝しなきゃだな)
そんなことを思っていると「そうだ、カミトくん」と会長が口を開く。
「これからも冒険者として活動するなら王都で活動しないか?」
「王都ですか?」
「あぁ。リブロの支部長から解任したといってもリブロを出禁にしたわけじゃない。しかも、冒険者資格を剥奪した者たちがカミトくんや妹さんに報復を仕掛けてくる可能性もある。王都なら報復の危険性はグンと減るし、アタシもいるからカミトくんや妹さんを守りやすい。どうだ?」
会長の提案に俺は考える。
(会長の提案は魅力的すぎる。それにクレアは俺のせいで学校でも居心地が悪いらしい。うん、良い機会だから王都へ移住するか)
「そうですね。妹と話し合って決めたいとは思いますが、俺は王都で活動したいと思ってます」
「分かった。王都で活動する時はアタシができる限り手助けする予定だ。しばらくはリブロに滞在する予定だから決まったらアタシに教えてくれ」
こうして俺はソフィアさんとの会話を終了し、オーガを倒した時にゲットした魔石を換金してから家に戻った。
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