第11話 俺をイジメた奴らへの罰

 その後、会長が数名の協会職員を連れて、支部長の家を捜索することとなった。


 その間、会長命令によりリブロ支部から誰も出るなと言われた。


 そのため、俺やノワール親子に加え、観客として決闘を観戦していた冒険者たちもリブロ支部から出られなくなる。


「おい!何で俺もここに居なきゃいけねぇんだよ!」


「俺は悪いことなんかしてねぇ!ここに留まる意味がわからん!」


「どけっ!俺は帰る!」


「そ、それはできません!会長命令ですので……」


 等々言って観戦していた冒険者たちが暴れ出し、出入り口を塞いでいる受付の女の子たちに迫っている。


(支部長はラジハル以外の冒険者の悪行も握り潰してた。だから会長はノワール親子以外の冒険者も出られないよう指示を出したんだろう)


 その結果、会長の家宅捜査の結果にビビってる奴らが続出し、暴れてると考える。


(心当たりがある奴らが暴れてるんだ。つまり、リブロ支部から出すわけにはいかないな)


 そう思い、俺は受付嬢たちを守るように暴れている冒険者たちの前に立つ。


「会長から言われただろ。ここから出るなって」


「今回の問題は支部長とラジハルだけだ!俺たちは関係ねぇ!」


「そうだ!俺たちは関係ねぇぞ!」


「いいや、お前たちにも関係ある。支部長の家を調べられたらマズイことに心当たりがあるんだろ?」


「っ!どかねぇなら力ずくで帰る!」


「やれるもんならやってみろよ」


 俺の挑発に乗った1人の冒険者が俺に殴りかかってくる。


 勢いよく俺に特攻してくるが…


(ラジハルよりも遅いな。まぁ、ラジハルの攻撃も遅かったが)


 そのため、殴りかかってきた拳を“パシっ!”と片手で止め、そのまま気絶する程度の力で腹を殴る。


「かはっ!」


 俺に殴られた男が地面に倒れ、動かなくなる。


 その様子を確認してから、後ろにいる受付嬢に話しかける。


「すみません。これって正当防衛だから俺にペナルティはつきませんよね?」


 支部内での暴力沙汰は問題となり、問題を起こした冒険者はペナルティを受ける決まりがある。


 そのため、ペナルティを恐れた俺は近くにいる受付嬢に確認を取る。


「は、はい。今のは正当防衛なのでカミトさんはペナルティを受けません」


「ありがとうございます」


 その言葉にホッと息をつく。


(まぁ、支部内で俺に暴力を振るった冒険者たちがペナルティを受けたところなんて一度も見たことないけどな。支部長が揉み消してるせいで)


 そのため、会長の家宅捜査でかなりの人数が何らかのペナルティを受けると思っている。


「お、おい!やっぱり強くなってるぞ!アイツ!」


「あぁ!ラジハルを倒したのはマグレじゃねぇ!」


「ってことはオーガを1人で倒したことになるぞ!」


 俺が冒険者の1人を無効化したことでようやく俺の実力を理解した冒険者たちが、俺のことを恐怖の目で見てくる。


「そ、その……い、今まではラジハルの奴に命令されてお前をイジメてたんだ!」


「そ、そうだ!俺たちは好きでお前をイジメてたわけじゃないんだ!」


「あぁ!だから、支部長の家から俺たちがお前をイジメた証拠が出ても守ってくれ!」


 そして突然、意味不明なことを言い出す。


(コイツら、ラジハルの命令で俺をイジメてたとか言い出したぞ。嬉々として俺のことイジメてたくせに。しかも俺に謝らず守ってくれだと?ふざけるなっ!)


 俺の実力を知った途端態度が変わり、俺に守ってほしいとお願いしてくる。


 そのことに怒りが湧いてくる。


「お前ら、今まで散々俺のことをイジメてきて立場が悪くなりそうだから俺に守ってくれだと?調子に乗るなよ?」


「「「ひぃっ!」」」


 俺は心の底から怒りが湧き上がり、ドスの効いた声で冒険者を睨みつける。


「お前らのしてきたことは一生許すつもりはねぇ。だからお前らは会長からのペナルティを受けろ。それが嫌なら、今ここで俺が相手になるぞ」


「「「っ!」」」


 先ほど俺が一瞬で気絶させたことを知ってる冒険者たちが大人しくなる。


「ありがとうございます、カミトさん」


 その様子を見て、これ以上冒険者たちが暴れることはないと思った受付の女の子たちが俺に頭を下げる。


「いえ、これくらい問題ありませんよ。みなさんには普段から助けてもらってますので」


 俺がイジメられても毎回味方で居てくれる受付嬢たちには感謝しかなかったので、少しでも役に立てたことがとても嬉しい。


 その後、冒険者たちが暴れることはなく、ラジハルと支部長も大人しく会長の帰還を待つ。


 しばらく待つと会長が協会職員を連れてリブロ支部に現れる。


「すまん、みんな。ここに残るよう冒険者たちに言ってくれてありがとう」


 会長が到着早々、俺や受付嬢に一言声をかける。


 そして今度はこの場に残っている支部長やラジハル、冒険者たちに話しかける。


「さて、先程支部長の家を調べたところ、たくさんの不正資料と悪行の証拠が出てきた」


「くっ!」


「くそがっ!」


 その言葉を聞き、支部長とラジハル、それと心当たりのある冒険者たちの表情が変わる。


「よって、クラウスはリブロ支部の支部長を解任。また、その息子であるラジハルは冒険者資格を剥奪する。それに加え、ラジハルには行ってきた被害に見合った賠償金を請求する」


「「っ!」」


 会長の言葉に絶望という表情をする2人。


「他にも、数十名の冒険者に冒険者資格の剥奪を言い渡す。以上だ」


 そう言って会長は俺の下に来る。


「すまない、カミトくん。私がもっとはやくクラウスが揉み消した証拠を掴むことができたら、君が不幸な目に遭うことはなかったのに」


 そして会長は自分のせいだと言って俺に謝る。


「謝らないでください!会長は今日、俺を助けてくれたんです!しかも、支部長たちにしっかりと罰を与えてくれました!俺はこれだけで満足です!」


「そうか。カミトくんが満足なら良かったよ」


 会長がホッとした表情をする。


(きっと、俺のことを思って悔やんでるんだ。もっとはやく動いていれば俺が苦しい思いしなかったんだろうと。ほんと、会長は良い人だな)


 そんなことを思った。

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