第6話 ノワール親子によるイジメ
俺はたくさんの魔石をバックに詰め込み、リブロ支部へ帰還する。
「バックがパンパンになったからゴブリンたちの魔石を捨てることになってしまった。もう少し大きいバックを買おうかな」
そんなことを思いつつ、ルーリエさんへ話しかける。
「ルーリエさん!ただ今帰りました!それと換金お願いします!」
「はーい……って!これはオーガの魔石!しかも大量に!どうしたんですか!?」
ルーリエさんの驚いた声が支部内に響き、支部の中にいた人たちが俺たちの方を向く。
「おい、アイツが持ってる魔石ってオーガじゃね?」
「マジだ。ってことはアイツ1人でオーガを倒してきたってことか?魔石の数からして1体だけ討伐したってわけじゃなさそうだぞ?」
「誰かからもらったんだろ。それを自分の手柄にしてるだけだ」
「でもオーガを倒せる奴なんてこの支部には3人くらいしかいないはずだ。しかも、オーガの魔石を譲る人なんて聞いたことねぇよ」
周囲は俺の持ってきた魔石を見て様々な話をしている。
「えーっと、今日スキルが覚醒してステータスが上昇したので、8階層のオーガを倒してきました」
俺は未だに驚いた顔をしているルーリエさんへ説明する。
「あの方が言ってたことは本当だったんだ……」
「ん?」
俺の説明を聞いてルーリエさんは何かを呟く。
「なにか言いましたか?」
「あ、いえ。何でもありませんよ」
ルーリエさんの発言は気になるが、そう言われたので気にしないようにする。
「こほんっ!信じられませんが、私はカミトさんが嘘をつくような人だとは思ってません。だからカミトさんが1人で8階層まで行き、オーガをたくさん討伐したことを信じますよ!」
「ありがとうございます、ルーリエさん」
3年間スライムしか倒してなかった男が突然オーガの魔石を大量に持ってきたら普通は疑う。
でもルーリエさんは俺の言うことを信じてくれた。
(ホント、ルーリエさんには頭が上がらないな)
そんなことを思いつつ、ルーリエさんが換金する様子を見る。
すると…
「きっとオーガの魔石を持っていた奴を襲って奪ったんだ!」
ラジハルが支部内に響き渡る声で騒ぎだす。
「スライムしか倒せない奴が1日でオーガを倒すことなんてできるはずねぇ!きっと誰かから奪い取ったんだ!」
そして俺に詰め寄ってくる。
「言えよ。誰から奪ったんだ?」
「俺は奪ってなんかいない!実力でオーガを倒してきたんだ!」
「はっ!そんな言葉信じられるかよ!お前が俺よりもオーガを倒せるはずがねぇ!」
ラジハルは俺を睨んで威圧してくるが、引いてしまうと認めたことになってしまうため、1歩も引かずにラジハルを睨む。
すると、ラジハルが突然笑顔になる。
「あ、そうだ。お前、今換金した金を自分の物にしようとしてるだろ?」
「当たり前だ。俺が討伐してゲットした魔石なんだから」
「それは違うな。お前はその魔石を奪ったんだ。だから俺が魔石を奪った奴に金を渡してやるよ」
「………は?」
「お、ルーリエちゃんの換金も終わったようだな。じゃ、俺がその金を渡してくるわ。えーっと、金貨2枚か。結構な額だな」
そう言って無理やりルーリエさんからお金を取る。
「おいっ!ちょっと待て!」
俺は無意識のうちに力強くラジハルの左手首を掴む。
「痛っ!なんだ!?」
「それは俺の金だ!」
「だからこれはお前のじゃなくてオーガを倒した奴の金だろ?」
「違う!それは俺が……」
「むしろお前は俺に感謝すべきだ。魔石を奪う行為は立派な犯罪だ。それを俺が揉み消してやるんだから感謝くらいしてもいいんじゃないか?」
「だからそれは……」
「ごちゃごちゃうるせぇな!」
そう言ってラジハルは俺が掴んでいない右手で俺の顔を殴ろうとする。
しかし、ステータスの上がった俺はラジハルの攻撃が見えているため…
“パシっ!”
ラジハルの拳を左手で掴む。
「!?」
俺に防がれると思わなかったラジハルが驚いた顔をする。
(ラジハルの拳が普通に見えた。それに左手で拳を防いでも全く痛くない。ラジハルって思ってたより弱くね?)
俺は疑問に思い、ラジハルを鑑定する。
*****
名前:ラジハル•ノワール
年齢:18
レベル:361
筋力:1149
器用:1006
耐久:1147
俊敏:1133
魔力:1001
知力:985
スキル:【身体強化 Lv.Max】
【剣術 Lv.4】
称号:なし
装備:高級な剣(筋力:100上昇)
高級な服(耐久:100上昇)
高級な靴(俊敏:100上昇)
*****
(なるほど。身体強化と装備、それと【剣術 Lv.4】のスキルでオーガと戦えてるのか。だが、俺は全ステータスが12,000越えだ。ラジハルの数値が弱く見える)
俺と比べるとラジハルの数値は弱く感じるが、この支部で2番目に強いと自慢してるだけの数値はあり、冒険者の中では勝ち組と言ってもいい数値だろう。
「チッ!離せよ!」
「嫌だ。金を返してくれるまでは離さない」
俺はラジハルの拳を掴んだまま睨み合っていると、「そこまでだ!」という声が聞こえてくる。
声がした方を向くとラジハルの父さんである支部長がいた。
「話は聞かせてもらった。カミト、ラジハルにお金を渡せ」
「はぁ!?なんでですか!?」
「それは君が不正な行為で稼いだお金だからだ」
「違う!俺はホントに自分で……」
「いつまで言ってるんだ。スライムしか倒せな君がオーガを大量に討伐できるわけがないだろ。ラジハルは君の不正を帳消しにしようとしてるんだ。ラジハルに感謝しながらお金を渡せ」
「ほら、支部長もそう言ってるんだ。はやく俺に金を渡せよ。ちゃんとオーガを狩った奴に渡してやるからさ。まっ、見つからなかったら探した手間代として全額貰うけどな」
「オーガは俺が討伐したんです!だからそれは俺の金です!」
「くどいぞ。冒険者資格を剥奪されたいのか」
「くっ!」
冒険者資格を剥奪された場合、2度と冒険者になることができず、ダンジョンに潜ることもできなくなる。
つまり、俺は無職となり金を稼ぐ術がなくなってしまう。
(ごめんな、クレア。今日はお兄ちゃんが豪華な食事をプレゼントしようと思ってたのに。不甲斐ないお兄ちゃんでごめんよ)
俺はラジハルの右手と左手首を離す。
そして悔しさのあまり握り拳を作る。
「お、やっと理解してくれたか。じゃ、俺はさっそくオーガを倒した奴を探してくるわ。感謝しろよな」
そう言ってラジハルが俺の下から離れていく。
その際「金貨2枚の臨時収入か。これで今日は1日遊べるぜ!」という言葉が聞こえてくる。
「っ!アイツ!」
「なんだ?文句がありそうな顔だな?冒険者資格を剥奪されたいのか?」
「………いえ」
「そうか」
そう言って支部長は裏手へと消える。
「くっそー!」
俺は握り拳を作り、近くにあるテーブルを力一杯殴ろうとする。
しかし、俺のステータスでテーブルを殴ると壊してしまうため、寸前のところで我慢する。
「へっ!ざまぁねぇぜ!」
「いやぁ、面白いものが見れた」
その様子を見てた他の冒険者たちはゲラゲラと笑い、ルーリエさんを含め、受付の女の子たちは心配そうな顔をする。
「カミトさん。私たちに力がなく、申し訳ありません」
ルーリエさんがここで働いている受付嬢を代表して謝ってくる。
「いえ、大丈夫です。今日はもう帰ります」
この場にいたらルーリエさんに変なことを言いそうになった俺は、すぐにリブロ支部を出た。
*****
胸糞悪いところで話が途切れてしまい申し訳ありません。
次話より“ざまぁ”第一弾の開始です。
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