第4話 スキルスクロール
カインに自分の決意を伝えたところで、改めて現状を把握する。
「冒険者になるよう勧めてくれた女性を探して色々と聞きたいが、手掛かりがない。まずは情報収集が必要だな」
そのため、女性の件は情報収集から始めることにする。
「とにかく、これで俺もスキル持ちだ!まずは念願のスキルゲットを喜ぶか!」
先ほど得た膨大な情報を自分の物にすることができた俺は、スキルをゲットしたことに喜ぶ。
そして、今度は手に持っているスキルスクロールへ視線を動かす。
「さて、次は貰ったスキルスクロールを使って……いや、待て」
俺は手にしている巻物を読もうとした手を止める。
「スキルスクロールは売れば金貨数枚はゲットできる代物だ。ここは読まずに売る方が……」
金銭不足に悩まされている俺は手を止めて長考する。
「いや、金貨数枚なんて普通に働いた人の年収並みだ。なら、売らずに自分で使った方が得策だろう。俺は強くならなきゃいけないからな」
そう決めた俺は近くにスライムがいないことを確認して巻物を読む。
すると、俺の身体が光だす。
『スキル【賢者の眼】を獲得しました』
「おおっ!強そうなスキルだ!」
さっそく俺は「ステータスオープン」と呟き、自分のステータスを開く。
*****
名前:カミト•ヴィオレ
年齢:18
レベル:10
筋力:12019(2000up!)
器用:12018(2000up!)
耐久:12022(2000up!)
俊敏:12020(2000up!)
魔力:12017(2000up!)
知力:12023(2000up!)
スキル:【剣聖】
【賢者の眼】(New!)
称号:なし
装備:ボロい短剣
ボロい服
ボロい靴
*****
「oh、想像以上の強さだった……」
俺は自分のステータスを見て固まる。
【剣聖】スキルよりもステータスが上昇してないため弱いスキルのように感じるが、この上昇率は最強スキルの1つと言っていいだろう。
「【賢者の眼】ってかなりのレアスキルやん。まぁ、連続でスライムを10,000体討伐しようとか誰も思わないよな」
そう考えると【賢者の眼】というレアスキルをゲットしたことに納得がいく。
「レベル10って部分に違和感しか感じないステータスとなったが、このステータスならランクAに分類されているモンスターなら簡単に倒せるんじゃないか?」
一般的にランクAに分類されているモンスターと戦うには全ステータスの平均値が3,000あれば安全に戦えると言われている。
「でもランクSのモンスターは無理かなぁ。実際、ランクSのモンスターを倒せる人って世界に5人しかいないらしいし」
ランクSのモンスターは討伐例が少なく、モンスターのステータスも分かっていない。
1つだけわかっていることは、ランクSのモンスターを討伐できるのは、世界に5人しかいないSランク冒険者だけということだ。
「えーっと、能力は……」
ーーーーー
【賢者の眼】
500年前、魔王を封印したメンバーの中で魔法の天才だった者が使用してたスキルの一つ。
視界内のことなら何でも知ることができ、知りたいと思えば全てを知ることができる。ただし未来に関しては3秒先の未来しか分からない。
ーーーーー
「チートすぎだろ」
またしてもチートスキルを手に入れてしまった。
「ステータスの上昇値がヤバい上に、知りたいと思えば全てを知ることができる。それに3秒先の未来まで知ることができるとかチートだろ。さっそく【賢者の眼】を使ってみるか」
そう思い、俺が今知りたいことを考えてみる。
「今は……敵の位置が知りたいな。まぁ、流石に敵の位置がわかるとかは無理か」
『解、ダンジョンを視界に捉えているため可能です』
「うぉっ!」
突然、脳内で女性の声が聞こえてきた。
それと同時に“ピコンっ!”という音が脳内で響き、視界の端に地図が浮かび上がる。
そして赤い点で敵の位置を教えてくれる。
「わかるんかいっ!」
自分のスキルにツッコミを入れる。
「さりげなく、このダンジョンのマップまで知ることができたんだが……」
3年間、毎日のように通っている俺は正確にダンジョンのマップを把握しており、視界の端に浮かび上がった地図が正確であることを一瞬で理解する。
「じゃあ次は妹のクレアが今、何をしているか教えてくれ」
『否、この質問には答えられません。クレア様を視界に捉える必要があります』
「なるほど。要するに俺が見ている人や物ならなんでも教えてくれるってことか」
俺は【賢者の眼】というスキルを理解する。
「っと、そこの角にスライムがいるな」
すると視界の端に映る地図で、近くに敵がいるのを発見する。
【賢者の眼】によると、少し先の曲がり角に敵がいるらしい。
「赤い点が本当に敵なのか確かめるか」
そう思い、俺は少し先にある曲がり角まで歩き、敵がいるか確認する。
「やっぱりスライムがいるな」
地図上にある赤い点と同様の位置にスライムを発見する。
「そういえば、【賢者の眼】ってモンスターを鑑定することはできるのか?」
『解、可能です』
「マジかよ。【鑑定】スキルもあるのかよ。優秀すぎるわ」
スキルの優秀さに驚く。
【鑑定】スキルは相手のステータスやスキルを知ることができるためレアスキルとなっており、持っている人が限られている。
そのため、ステータスが公開されているモンスターは少ない。
俺は驚きつつ、スライムを鑑定してみる。
*****
名前:スライム
レベル:1
筋力:10
器用:10
耐久:10
俊敏:10
魔力:10
知力:10
スキル:なし
装備:なし
*****
「へー、スライムって全て10あったんだ。そりゃ戦闘スキルなしの人間じゃ、簡単に討伐できんわ」
人間の初期ステータスは1〜3の間と言われている。
この数値に戦闘系スキルが上乗せしてくれるため、戦闘系スキルを持っている人間はレベル1でもスライムは敵じゃなくなる。
「よし、じゃあ次はステータスが上がってどれくらい動けるようになったか確認するか。と言っても【剣聖】スキルで自分の身体能力は把握してるから、自分がどれくらい動けるかわかってるけどね」
【剣聖】と【賢者の眼】で急激に上昇したステータスに対応するまで時間がかかると思っていたが、【剣聖】スキルのおかげか、正確に自分の身体能力を把握している。
そのため…
「ふっ!」
俺は地面を蹴り、一瞬でスライムとの距離を詰める。
そして、すれ違いざまにスライムを一閃する。
スライムは何が起こったのかわからないまま消滅して魔石をドロップさせる。
これが0.5秒ほどの出来事となる。
「おぉ!想像以上に動ける!さっき上昇したはずの身体能力なのに、まるで普段からこの身体能力で生活してたくらいだ!」
それくらい違和感なく動くことができる。
「つまり俺はスライムを10,000体討伐したことで冒険者人生が変わったということか。ホント、冒険者を続けてきて正解だったよ」
俺は3年間の冒険者生活が報われたような気持ちとなり、少しだけ眼に涙を溜める。
「って今はダンジョン内だ!気を抜くなっ!」
俺は気の緩みを正すために頬を叩く。
「よし!まだ昼前だし、もう少し頑張るぞ!」
俺は気合を入れ直し、ダンジョン内を走り回った。
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