第3話 カインの想い
しばらくステータス画面と睨めっこを行い…
「とりあえず【@&¥#%】が【剣聖】というスキルに変化したことは理解できたが……ば、化け物すぎる」
念願のスキルをゲットしたことに喜びたいが、ステータスの上昇値に驚きを隠せない。
「【身体強化】のスキルでも全ステータスを上昇してくれないぞ。しかもステータスの上昇はスキルレベルMAXで100しか上がらないはずだ」
そう思うと【剣聖】スキルの異常さが際立っている。
「【剣聖】の詳細は……」
ーーーーー
【剣聖】
全ステータス上昇に加え、500年前、魔王を封印したメンバーの中で剣の達人だった者の戦闘技術を引き継ぐ。
ーーーーー
「ん?戦闘技術を引き継ぐってなんのこと……ぐっ!」
俺が説明文に疑問を感じていると、突然脳内に膨大な量の情報が流れ込んでくる。
情報量の多さからひどい頭痛に襲われ、俺は地面に両手をつく。
直後、俺の脳中でフラッシュバックのように様々な情景が流れ出す。
◇
そこには黒い長刀でモンスターを討伐するイケメンがいた。
そのイケメンは様々なモンスターを討伐し、困っている人々を救っていた。
時にはS級モンスターと認定されているドラゴン数十体を倒し、ドラゴン以上の強さを持っているであろう現在では見たことのないモンスターを1人で討伐していた。
そんなある日、その実力を買われ、魔王討伐の任務を受けた勇者パーティーに同行することとなり、仲間と協力して魔王を封印することに成功した。
魔王封印後は剣一本でどんなモンスターも討伐することから、そのイケメンは『剣聖』と呼ばれるようになった。
しかし、そのイケメンも病には勝てなかった。
「ぐずっ……ごめん……ごめん、カイン。私にはあなたを治す力がないの」
「謝るな。25歳でこの世を去ることになりそうだが、俺は自分の人生に後悔はしていない。愉快な仲間たちと魔王を封印することができたんだから」
そう言ってカインと呼ばれた男は、そばに居る綺麗な女性へ、最後の力を振り絞って手を伸ばす。
「でも、一つだけ心残りがある。それはお前の幸せを見届けてやれないことだ」
「カイン!私はアナタのことが好……」
「それ以上言ってはダメだ。その言葉は死ぬ運命である俺に言う言葉じゃない。きっと、言ってしまったらお前は別の男を好きになれない」
そう言い切ると“ゴホッっ!”と血を吐く。
「い、いいか、よく聞け。魔王は500年後、必ず復活する。その時のために、お前の子孫は俺のスキルを引き継いだ者を探せ。そしてその者を支援しろ。賢者にお願いして500年後の誰かに俺の能力を継がせるよう手配したから」
そばに居る綺麗な女性はカインの死期が迫っていることを理解し、最後の言葉を黙って聞く。
「頼んだぞ。俺が世界で1番好きな女よ」
そう言ったカインは最後に微笑み、力尽きる。
「〜〜っ!」
その様子を見た女は涙を押し殺し、カインの手を握る。
「カイン。私の子孫は必ず君のスキルを引き継いだ者を見つけるよ。だから安心して眠ってね」
綺麗な女性は目に涙を溜め、力強く呟いた。
◇
約3分ほどと短い時間だが、永遠とも思える頭痛とフラッシュバックが収まる。
すると、カインが歩んだ人生と共に身体の使い方や剣の使い方など、モンスターと戦うための術を一瞬で理解する。
「はぁ、はぁ……これが【剣聖】スキルの説明欄にあった戦闘技術を引き継ぐということか。カインが経験した人生を体験したかのようだ」
剣の達人であるカインが経験した記憶をもらい、カインが身につけている戦闘技術や剣技を受け継ぐことができた。
そのことで自身の戦闘技術が何百倍も上昇したことを肌で感じる。
特にカインが編み出した5つの最強剣技、『絶剣技』という技を習得してしまった。
そのことに驚いていると、俺の眼から勝手に涙が溢れ出す。
「あ、あれ?」
さっき見たフラッシュバックは夢のように曖昧ではなく、ハッキリと脳に刻まれたため、心をカインと同化してしまったのか、涙が止めどなく溢れてくる。
「そうだよな。もっと生きたかったよな。大好きな人と笑い合っていたかったよな」
そう思うと涙が際限なく溢れてくる。
すると脳裏にある人物がよぎる。
それは、俺が【@&¥#%】というスキルを得て落ち込んでいる時、俺に冒険者になるよう勧めてくれた女性だ。
「あぁ、そういうことか」
そして悟る。
「カインよ、お前が愛した女性はちゃんと俺を探してくれたぞ」
その女は先程出てきた綺麗な女性に似ていた。
きっと、その女性の子孫なんだろう。
「だからあの時出会った女性は俺のスキルが覚醒することに確信を持ってたんだな」
どうやってカインのスキルを引き継いだ俺を見つけることができたのかは気になるが、これであの時出会った女性の行動理由が分かった。
「カインが魔王復活を阻止するために自分のスキルを継がせたことは理解した。その想い、俺は無駄にしない。絶対カインのように強くて困ってる人を助けれる『剣聖』になってみせるよ」
俺は天国にいるであろうカインに向けて、そう決意した。
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