第5話

「「「「「!?」」」」」


 その場にいた誰もがレオンハルト王太子殿下の発言に驚いた。


「僕が彼女の左目になり、彼女の一生を支えよう。そうすれば、彼女が傷物として嫁ぎ遅れることも、普通の生活を送れなくなることもないだろう。それに、僕の婚約者であれば王家としても彼女を援助しやすい。彼女の左目がもう1度光を宿す可能性さえも存在している。ツェリーナ伯、僕の意見に間違いや文句はあるか?」

「………エリザベート次第です」


 嫌そうな顔をしながらわたくしの方を見たお父さまと妙案だと言わんばかりに頷いている国王陛下と王妃陛下に、わたくしは泣きそうになりながらお父さまに視線を向け、心の中で叫んだ。


(お父さま、こちらに丸投げしないでください!!)


 なのにお父さまからの返答はわたくしから視線を逸らすというもの。

 きらきらした表情の国王夫妻に王太子殿下。わたくしに勝てる要素などなく、わたくしは渋々頷くことになった。


「おうけ、いたします………、」


 こうしてわたくしとレオンハルト王太子殿下の婚約は無事に結ばれてしまった。

 そしてそれは同時に、この乙女ゲームにわたくしが巻き込まれてしまったことも表していた。


 わたくしとレオンさまはそれから情熱的な恋ではないにしても、穏やかな灯火ぐらいの信頼関係を築いていた。

 2日に1回は必ず一緒にお茶会をして、わたくしの隻眼での生活をより良くするために一緒に考えてくださって、道具を発明してくださって、わたくしは隻眼で不便ながらにとても充実した日々を送っていた。


 彼女が、この乙女ゲームのヒロインアイーシャが現れるまでは………。

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