第8話 アイラの過去

 私の村はとても小さな村だった。小さい村だから、みんなで助け合って生活するのが当たり前で、私もみんなの手伝いをしていた。でもある日、私が『魔力を保持』だけで無く『狼人族の身体能力は皆無』という事に気付き、みんなから『一族の恥だ!』『役立たず!』『穀潰し!』そう罵られるのが日常化した。


 それから数年が経ち、15歳になった。1人の狼人族として、成人の仲間入りだ。身体付きも女として成長した。成人を迎えて暫く経った頃。私は族長に呼ばれた。

「アイラ、お前は今日から俺の愛玩ペットだ」

 そう言って、私の身体を撫で回し、服を脱がそうとする族長。私は激しく抵抗した。でも、力は弱く、掴まれた腕を振り解けない。族長の手は、私の身体をガッシリと掴み、私を押し倒した。血の気が引くのが分かった。


(…怖い…、イヤ…だ!)


 私の意識に反応する様に、周囲の空気が激しく動き出す。部屋の中で発生した空気の渦は、どんどん大きくなり、家の中の物を、音を立てて壊していく。

「…う…わぁ!」

 空気の渦は族長を弾き飛ばした。私はその隙に族長の家から飛び出す。騒ぎに駆け付けた村のみんなが、まるでバケモノを見る様に私を見た。私は村のみんなから逃げ出す。





 休む事なく私は走り続けた。無理矢理脱がされそうになった服は、ところどころ破れて素肌が晒されている。それでも、私は気にせず走り続けた。身体が悲鳴を上げ、ようやく私は走るのを止め、その場に座り込む。呼吸は乱れ、汗も止めどなく流れ落ちる。そのまま私は意識を無くした。



 誰かが私を呼んでいる。重たい瞼を開くと、2人の獣人が心配そうに私を見ていた。その時の2人が、ライラとケーティ。2人は私の恩人だ。ライラとケーティは私を迎え入れてくれた。私は嬉しかった。2人と一緒に行動する生活は、一時の安息を与えてくれ、私は2人の為に出来る事をした。料理、掃除、洗濯。2人の身の回りの事は何でも率先して。

 2人は最初、困惑していたけど、私のしたい様にさせてくれた。ある日、2人を傭兵として雇っている奴隷商の主人に会わせてもらった。その理由は、少しでも強くなって『2人の役に立ちたい』という思いから。当然、2人には反対された。

「…君の身体能力が低過ぎて雇う事は出来ないが、奴隷になれば2人と一緒にいる事は認めよう」

 最低、最悪の提案だったけど、2人と一緒にいれるなら、私はそれでも良かった。





 奴隷になった私に、2人は嘆き悲しんだ。それでも、私が望んだ事。2人は何も言わなくなった。その代わりいつも一緒。傭兵として仕事に行く時、私は独学で使える様になった魔法を使い、2人をサポートした。2人は初め驚いていたけど、次第に連携する様になり、ある程度強い魔物も難無く討伐出来るまでになった。これには奴隷商の主人も喜び。

「これで買い手が付けば、箔がつくのに」

 そう言い掛けて『しまった』という表情をした。


(…あぁ、ここでも私はお荷物で、穀潰しなんだ)


そう思った。





 ある日、2人と一緒に拠点移動の為、奴隷商の護衛を任された。向かう街はプツベという街だ。大きな谷を渡る途中、怪しい男が私に向かって『何か』を投げ付けた。投げ付けられた物は『呪いの雫』だった。男が不敵に笑う。

「苦しみながら死ね」

 その男は族長だった。吐き捨てる様にその言葉を残し、その場を去る。その後は絶望感しか無い。奴隷商の主人は、その日から態度を一変し、食事すら与えてくれない。


(このまま衰弱死か、処分されるのね…)


 ライラとケーティが何度も抗議するが、奴隷商の主人は私と引き離す様に2人を討伐依頼の仕事を与えた。私の身体は『侵食』の呪いでまともに動く事が出来ず、死を迎える事しか出来ない。





 あれから何日食事が出来ていないのだろう。朦朧とする意識の中、人影が私に近付いて来るのが見えた。その人はボロボロで痩せ細った私を必要としてくれた。

『この娘が良い』

『俺と一緒に来ないか?』

 私は微かに残った力で『行く』と答えた。優しく私を抱き抱えてくれる人。私はライラとケーティと同じ様な安らぎを感じずにはいられなかった。





 あとがき


 1時間後くらいにもう1話投稿します。今回の投稿で自分のモチベーションがさらに上がるかは…


 やっぱ分からん!とりあえずストックが4つに増えたんで…


 あと、久方ぶりの2連休だから、気分上げ上げでね!

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