幕間-1 登校

「あっ、おはよう!」


「おはよう。雨宮さん、今日は早いんだね」


 信号待ちをしていると、右の方から雨宮さんが傘をさしながらこちらに歩いてきた。


「うん。宿題学校に忘れちゃって、急いでしようかなーって」


「雨宮さんでもそういうことあるんだね」


「久しぶりにこういうの忘れた。ほんとうっかり」


「じゃあ後ろ、乗ってく?」


「え?」


「一応僕の自転車荷台あるし、それに」


「待って。流石に二人乗りはだめでしょ」


「あー、そういうの気にする人ー」


「だってだめでしょ。うん。そんなことより、君の方こそ、そういうの嫌な人だと思ってたよ」


「……まあ、僕もしたことなかったけど」


「したことなかったのに持ち掛けてきたの?」


「そういうお年頃なんですー」


「……なんか、君って案外チャラいよね」


「へ? チャラい? 僕が?」


「そうそう。二人乗りの話もそうだけど、なんか話し方が」


「初めて言われた。中学のときとかクラスの騒がしい連中見て、うわぁって思ってたのに」


「移ったんじゃない?」


「うわぁ」


「ふふっ、嫌そう」


「でも、比較的そうなのかも。雨宮さん、すごくおしとやかなしゃべり方するし」


「えっ、そ、そう?」


「うん。落ち着いているというか、大人っぽいというか」


「そ、そっかー……」


「何? 違うの?」


「ううん。そうかも、しれませんわ」


「……」


「ちょっと、黙るのはなし!」


「あはは、訂正。雨宮さんは、面白い」


「なんかそれはそれでやだ」


「いいじゃん。僕も一緒にいて楽しいし」


「……そう? だったらいいけど」


「ふふっ、あ、学校ついちゃった。結局ゆっくり歩いちゃったな」


「さあ、これから頑張るぞー!」


「じゃあ僕は駐輪場に自転車置いてくから、先行ってて」


「分かった……あのさ!」


 僕が駐輪場に向かおうと目線をそらした時、雨宮さんがこちらに呼びかけた。


「またこうやって、一緒に登校したいね!」


 それだけ言って雨宮さんは校舎の中に入っていった。

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