Voice.3 陽キャアイドルの幼なじみとカラオケに行くことになった件について
一緒に聴いた思い出の歌
オレは篠原から学校帰りに池袋につき合ってほしいと言われ、2人でメイトで買いものをした後、カラオケに行くことにした。
店のロビーで受付をして、伝票を受け取って2人でドリンクバーで飲みものを入れてから部屋に向かう。
ドアを開けると、2人には少し広いくらいの大きさの部屋の真ん中の壁にテレビがついていて、台の上にはカラオケ機器と選曲用のタブレットが置かれていた。
テーブルには食べものを頼めるタブレットがある。
オレと篠原はソファーに荷物を置いて座る。
そして、オレはあることに気がついた。
「このカラオケ最新機種だ」
「たっくんよくわかったね。よくカラオケ来るの?」
「オレは歌苦手だからあんまり来ないけどメガネと文豪によく連れてこられるから詳しくなった」
「笹目くんと文谷くん、ノリいいもんね」
「あいつらはノリがよすぎるけどな。篠原曲選んでいいよ」
そして、オレは篠原にタブレットを渡した。
「ありがとう。私もよくカラオケ来るんだけど周りに合わせてて……」
そう言って、篠原は曲を選んで送信ボタンを押す。
「だけど本当はこれやりたかったんだよね」
すると、テレビの画面に予約した曲のタイトルが表示された。
それは、オレと篠原が中学1年生の時に行った埼玉アリーナで、柚木真奈さんが最初に『ENDLESS FLAME』を歌った時のライブ映像のカラオケだった。
篠原は立ち上がってマイクを持つと、テレビの横に立って言った。
「真奈ちゃんのライブのセットリスト再現カラオケ!」
オレは目を輝かせる。
そして、すかさずスクールバッグからさっきメイトで買ったものを取り出した。
「じゃあオレ、さっきメイトで買ったペンライト振る!」
「あ、いいねそれ! お願い!」
それから、オレはペンライトの色をオレンジ色に変える。
しばらくして、曲名のテロップと一緒に映像とライブバージョンのイントロが流れて、篠原が歌い始めた。
柚木真奈さんの映像の振りと同じタイミングで、篠原も同じ振りをする。
カラオケのライブ映像があるから歌詞のテロップを見ながら歌っていたけれど、テレビを見なくても完璧に振りが頭に入っているみたいだった。
歌も上手いし、柚木真奈さんの歌は篠原の声に合っている。
何より、柚木真奈さんのライブ映像を観ながら歌っている篠原はすごく楽しそうだ。
オレは曲のリズムに合わせてペンライトを振る。
間奏に入り、『ENDLESS FLAME』で定番のコールの前にさしかかった。
篠原は声をあげる。
「いくよー!」
「エンドーレスフレーイム!」
オレと篠原は一緒に曲名を叫んだ。
誰かと一緒にコールするのは初めてだけど、こういうのってすごく楽しいんだな。
歌い終わった後、篠原はソファーに座る。
「すっごく楽しい……!」
「わかる。オレも同じこと考えてた」
篠原はアイスティーを飲んでから言った。
「たまアリのライブで最初にこの曲かかった時にファンのみんながいっせいにオレンジ色のライトに変えてたの見て感動したんだ」
「オレも、初めてライブに行ってあの光景見た時、すごく綺麗でファンのみんなの団結力すごいって思った」
「そうそう。真奈ちゃんもすごく嬉しそうな顔してて、ライブってあったかいなって思ったの」
篠原にとって最初のライブで、そんなふうに思ってたのか。
楽しんでくれて、真奈さんのファンになってくれたならすごく嬉しい。
篠原はメニューを頼むタブレットを取って言った。
「歌ったらおなかすいちゃったから何か食べようか」
「うん」
「見て見て。ここのカラオケ、サイドメニューだけでもすごく種類多いよ」
篠原に言われて、一緒にタブレットのメニューを見る。
たしかにフライドポテトだけでも数種類あって、みんなで食べやすいお菓子もあった。
「本当だ。たくさんあってどれにしようか迷うな」
「私、フライドポテトとチョコレートの盛り合わせ食べたい」
「いいよ。じゃあそれとメインメニュー頼もう」
サイドメニューからメインメニューに切り替えると、ご飯ものからパン、麺類から揚げものまでいろいろな食べものが表示された。
篠原が首をかしげる。
「ねえ、ロシアンたこ焼きって当たったらどれくらい辛いのかな?」
「……食べてみる?」
2人でおそるおそる顔を見合わせる。
すると、篠原は軽く笑い飛ばした。
「せっかくだし頼んでみようか」
オレもうなずく。
「まあ辛いっていっても食べられる辛さだよな」
「うん。きっとそうだよね。……たぶん」
篠原はそう言って、注文送信ボタンを押して食べものを頼んだ。
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