END

 第四の三名はすぐに外され、関与していなかった大臣によって年齢も性格も違う新しい三名が座る事になった。死者は仮死状態にされていた為出なかったが、負傷者は十二分に出ている。その為医療関係は第四省の負担となり、ホテルや建築現場、報道陣等への慰謝料、治療費、修理費もここから出る事になった。

 また安里率いる過激派テロ集団で生き残っている者は全員逮捕された。とは言えまだ残党は残っており、BLACK BLACKのようにしっかりとした組織ではない為、長い戦いになると報道された。

 そして警察庁永瀬長官は殺された。大掛かりな葬式には二人も参列し、手を合わせた。

「結局長男が継ぐ事になったのか」

 いつも通りの日常にタバコを咥える。

「元々そういう動きやったみたいですよ。沖縄で会った時は隠してたんでしょう。そう考えると、かなりのキレ者ですねえ」

 テレビ画面に映る姿は凛々しく、とても同一人物には見えなかった。こちらが素なのか、それとも両方なのか……親近感を覚えたヱマはソファから立ち上がった。

「あのガキんちょ共はともかく、あん時俺を見破ったジジイは俺らを逃がそうとしたのかね」 煙を吐き出しテレビを消した。

「真意は分かりませんがポジティブに考えときましょう」

 車のキーを取り、二人は事務所を後にした。

 第四式典襲撃事件後、度々起きていた反対派と政府組織絡みの事件は極端に減った。また沖縄の現地人や出身者によるまともな意見も表に出るようになり、彼ら過激派が単なる犯罪組織である事は報道とネットの両方で広く知れ渡った。

 だが結局安里が反対派の思想である事、事件後に声を出した事が反感を呼び、暫くのあいだは論争や炎上が立て続けに起きた。そのなかで沖縄県知事の不正行為が暴露され、また特例地区の場所も大々的に公表される事になった。

 新しく就任した県知事は若く、反対派と対話してもう一度沖縄を立て直す事を誓った。それが成就するかは不明だが、一連の事件は若き県知事が意気込みを見せた辺りで落ち着いていった。

「マミー、元気かー!」

 被害者である安里マミは精神的なケアも含め、五月雨に保護される形となった。ヱマが手を振ると花に水をやっていた彼女は笑顔を浮かべた。

「こんにちは」

 解放されたからか、事件前よりも背筋が伸びていた。南美が紙袋を一つ渡した。

「わあ、お饅頭ですか?」

 なかを覗き込むと更に眼をきらきらとさせた。こっちが本来の彼女なのだろう。

「ええ。好きだと聞いたんで」

「それ食って頑張れよ、訓練」

 マミは顔をあげて元気に肯いた。もう少し話をしたいところだったが、二人には第四大臣から一つ依頼が来ていた。

「ほんじゃあ、また」

「今度一緒に焼肉でも行こーぜー。じゃーなー」

 手を振るマミにヱマは少し長めに振り返した。ステップを踏むように正面に向き直る。

「大丈夫なんですかねえ。五月雨の訓練って精神的にキツいらしいですけど」

 彼女は一般よりもバーチャル空間への耐性があり、早坂からの誘いもあって五月雨に正式に入隊する事になった。とは言え訓練後に試験があり、そこで合格すれば制服の着用が許される。彼女はまだ始めたばかりだ。

「大丈夫なんじゃねえのー。もし不合格でも五月雨んなかで働けるし、何よりネットの変な書き込みも見なくて済むし」

 五月雨の本部や支部内は独自のプログラムを組んでおり、精神的に負荷がかかりやすい情報は予め弾かれる。その為マミはリアルでもネットでも嫌な思いをせずに済む……それもあって五月雨が身元を引き受ける事になった。

「んで、大臣からの依頼って……ああ、後始末ですか」

 デバイスから情報を確認し、軽く肩を落とした。使える人間が絞られるなか、何でも屋の二人は都合が良かった。

「雑用係みたいなのやらせときゃいいのに。プライドたけえんだから苦痛だろ」

「下手にどっかで使うとまた何かやらかすんでしょう。特に現場に来た男は。よく知っとるはずの人間がそう判断したんです、刑務所にも入れられん海外にも行かせられんなら始末するしかない」

 デバイスを懐に戻し、車のキーを取り出した。

「生かしてても他所には行かせられませんからね。色々機密情報もありますし、確か電脳の記憶処理も大臣レベルだと出来ない仕組みになってるはずですよ」

 運転席と助手席にそれぞれ乗り込んだ。エンジンをかける。

「かといって自分のとこで使ってもリスクが高いし……ようはお荷物って事か。刑務所にぶち込むのが一番なんだろうけど、この事知ってんのあの現場にいた人間だけだしなあ」

 そうなればもう、この世から消すしかない。殺し屋を雇ってもいいが何せ金がかかる、二人は都合のいい存在だった。

「こーゆー依頼は受けたくないんですけどねえ……一回やるとどんどん深いとこ深いとこに連れていかれるんで」

 元刑事という肩書きにも傷がつくし、信用度も落ちる。だが今回は断りようがない。最初で最後だと言うことを依頼を引き受ける際に何度も言った。

「まあ流石に大丈夫っしょ。この事は外には漏れねえんだし」

 ヱマの気楽な声に軽く肩を落とし、二人は山奥にある第四省の施設へと仕事をしに行った。

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