第28話 約束時間
◇皇side◇
ホテルの高級レストラン……と言ってもチケットのおかげで俺たちは無料同然だったが、とにかく高級レストランで朝食を食べ終えた俺と白鳥さんは、レストランから出てエレベーター近くにあるフロア別の施設表を見ながら、今から何をするかを話し合い始めていた。
「白鳥さんは今からしたいこととかありますか?
「私は皇くんと一緒ならどこでも良いから、皇くんに合わせるよ」
俺と、一緒なら……白鳥さんの気持ちを知った後だと、一つ一つの発言に意味を感じてしまいそうだ。
「何か見てて楽しいようなところとかあったりしたら、白鳥さんとそこに行きたいです」
「それなら、10階にあるアーケードとかどうかな?」
「アーケード……?」
「有名なお店がいっぱい集まってる、ショッピング施設って言ったらわかりやすいかな?とにかく見て回るなら楽しいと思うよ」
「そうなんですね、じゃあそこに行ってみましょう」
そして、俺たちは高級レストランのあった30階から、エレベーターでアーケードのある10階まで降り────その光景に驚いた。
「え!?この天井の高さで10階なんですか!?」
「あそこではわかりやすく10階って書いてたけど、この感じだと10階から12階って感じで、階段で上登ってもいっぱいお店あると思うよ」
「そうなんですね、じゃあ見て回ってみましょう」
「うん!」
俺は相変わらず豪華な装飾のされているホテルのアーケードを見て回る……アーケードにある店のほとんどはガラス張りで店内の様子が見えるようになっていて、どのお店も高価なものを取り扱ってそうな雰囲気だ。
「あ、私このお店前から気になってたから入ってみても良い?」
「はい」
俺と白鳥さんは、一緒にアクセサリーの売っている店に入り、色々なアクセサリーを見た。
最後に来た指輪の売っているコーナーで、白鳥さんは足を止めた。
「宝石の指輪……王道な感じだけど、綺麗だよね」
「そうですね」
俺はなんとなく値札を見てみる。
……三百万円。
到底俺に買えるものでは無いな。
「皇くんはどういう感じの指輪が好き?」
「指輪……水色の宝石の指輪とかは特に綺麗と思ったことありますけど、どんな指輪でも綺麗に見えて好きです」
「皇くんらしい答えだね」
「そうですか……?」
その後、俺たちはアクセサリー店から出ると、またアーケードを歩き始め────今度は、俺が気になる店が出てきた。
「花屋さん、気になるので見ても良いですか?」
「うん、良いよ?そういえば皇くん、お花屋さんでバイトしてるって言ってたよね?お花好きなの?」
「花も好きですけど、花屋さんでバイトしてるのは、花を買いに来る人は何かを祝ったりするために買いに来てる人が多いので、接客しててとても楽しいからです」
「それも、皇くんらしいね」
俺は花屋さんの中に入って、色々な花を見てみる。
……やはりどの花も質がとても良さそうだ、値段も一本だけで見るならそこまで高くない。
……決まりだな。
「もう大丈夫です」
「もう良いの?」
「はい、またアーケード見て回りましょう」
アーケードを色々と見て回った俺たちは、一度休憩をするために64階にある俺たちの部屋、スイートルームに戻っていた。
時間はもうお昼時を過ぎている。
「白鳥さん、今から雑談でもしませんか?」
「うん、良いよ?」
「……雑談の前に、今日の夜18時に伝えたいことがあるので、昼に行ったレストランのテラス席で待っていてください」
「っ……!……うん、わかったよ」
そのことだけを伝えるとなんだか余計な緊張感を与えてしまうと思ったため雑談をしようと言ったが、白鳥さんと話したいことはいくらでも出てきたため、俺たちはしばらくの間雑談をした。
「────もう16時みたいです、早いですね」
「早いね……皇くんと居ると、本当に時間があっという間だよ」
「……俺も、そう思います」
そして、その後もまだ話し続けて────気づくと、17時20分になっていた。
「そろそろ18時になるから、皇くんが言ってくれたように私レストランのテラス席で待ってようかな」
「はい……お願いします」
白鳥さんも、俺が告白の返事をすると察している様子で、先にこの部屋から出て行ってくれた。
……俺にもまだやることがあるため、白鳥さんが部屋を出たすぐ後に俺も部屋から出た。
◇白鳥side◇
……いよいよ、皇くんから告白の返事が返ってくる。
今日一日、もうずっとそのことしか頭に無かった。
皇くんからの、返事……その返事次第で、私と皇くんの関係性と、私の人生が大きく変わる。
「……こんなに不安になるぐらい、私、皇くんのこと好きなんだ」
私は約束時間の三十分前にレストランのテラス席に着くと、夜景を眺めて皇くんのことを待つことにした……とても綺麗な夜景。
皇くんとこんな綺麗な夜景を見れるって考えただけでも私は嬉しい……あと数十分。
あと数十分で、私と皇くんの不思議で、でも楽しかった日々が終わる。
今日みたいに皇くんとご飯食べたり、買い物したり、お話ししたり……そんな日常も終わる。
そう考えるだけで倒れちゃいそう。
そんなことを反芻して頭の中で考えている間に三十分が経過して────白い薔薇の花束を持った皇くんが、レストランのテラス席に来た。
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