第26話 告白
まだ朝の時間帯で、部屋に着いたばかりなのに白鳥さんが何故か寝室に行きたいと言ってきたため、俺たちは一緒に寝室まで来た。
ワンフロア全体が部屋ということもあって部屋の数は相当だったから、寝室を見つけるのにも一苦労したが、その過程はその過程で楽しかったと言える。
「白鳥さん、寝室で何かしたいことがあるんですか?もし仮眠を取りたいとかだったら────」
「そうじゃ無いの……本当は、遊園地に行った後とかに言おうと思ってたんだけど、やっぱり最初に言った方がこの二泊三日の旅行がもっと楽しくなるかなって思って」
「言った方が……楽しく?」
話が見えてこない、何の話だ?
「……ちょっとこの寝室で待っててもらっても良い!?すぐ戻るから!」
「わ、わかりました」
俺はよく話が見えない状態のままこの寝室で待っておくよう言われた……寝室から出て行く時に見えた白鳥さんの顔が、どこか赤かったような気がする。
◇白鳥side◇
私は寝室から出ると、別の部屋に入ってすぐに知鶴に通話をかけた。
「知鶴?どうしよ、一番最初に告白して恋人として皇くんと二泊三日楽しみたいって思ってたのに、その計画が失敗しそう!」
「何故ですか?」
「そもそも皇くんに告白とか出来そうに無いから!」
最近は色々と頑張って積極的に行動したりしてるけど、元々私は二年間もの間皇くんに話しかけることもできなかった……そんな私が、いくら皇くんとの距離が縮まったからって言ってもいきなり告白するとかできないのは考えてみれば当然。
「でしたら、一日目の夜にしてみてはいかがですか?それでしたら、後の一日と二泊は告白が成功すれば楽しめると思いますよ」
「成功しなかったら、後の一日と二泊が気まずくなるどころか、今後も……どうしよう〜!ねぇ、知鶴から見て私が皇くんに告白したら成功すると思う?」
「それは────実際にしてみてご本人にお確かめください」
「それができないから聞いて────」
「そろそろ部屋掃除のお時間ですので、失礼致します」
「待って、知鶴────」
知鶴は私が話しかけようとしたのを無視して、通話を切った。
「もう〜!!」
告白したら良い、そんなことわかってる。
……でも、あと一歩が踏み出せない。
「……皇くんのこと長く待たせちゃっても悪いから、そろそろ寝室戻らないと」
私は部屋から出て、悩みながら皇くんの居る寝室に向かった。
◇皇side◇
数分ほどして、白鳥さんが寝室に戻ってきた。
「おかえりなさい白鳥さん、何かあったんですか?」
「う、ううん、何でもないよ」
そう答える白鳥さんの表情は、どこか暗く感じる。
「……何かあったなら教えてください、俺で協力できることなら何でも協力しますから」
「本当に、何かあったわけじゃないの……ただ、悩んでることがあって」
白鳥さんはベッドに座ると、俺に言った。
「隣、座って?」
「え……!?俺は立ったままで大丈夫ですよ、ソファの上とかならまだしもベッドの上で白鳥さんと一緒に座るわけにはいかないので」
「……そう」
白鳥さんは悲しそうな顔を見せると、その悩みというのを話し始めた。
「私、この前好きな人が居るって言ったよね?」
「はい、聞きました」
「それで、皇くんにアドバイスしてもらった通りに好きな人の友達から色々とその好きな人と仲良くなれそうなことを聞いて、実行したりもしたんだけど……その人は全く私の気持ちに気づいてくれないの」
「なるほど……」
白鳥さんにそこまでされておいて何も気づかない、か。
それは気づいていないよりも、他に大きな原因がありそうな気がする。
「その人は、白鳥さんの気持ちに気づいて無いっていうよりも、自分の気持ちを探すのに精一杯で白鳥さんの気持ちにまで気づけないんじゃ無いですか?」
「自分の気持ち……」
「そうとしか考えられないですよ、白鳥さんが色々しても好意に気づかないとか、普通だったらありえないと思うんです」
そう答えると、白鳥さんは今にも泣いてしまいそうな顔で言った。
「……じゃあ、本当は嫌われてるとかもありえたりするかな?」
「……」
俺はしゃがんで、白鳥さんと同じ目線で顔を合わせて言う。
「白鳥さんが好きになってる人が、白鳥さんみたいな優しい人を嫌うはずないじゃ無いですか」
「……それ、本当?」
「はい、本当です」
「嘘だったら私今溢れそうになってる涙流すからね?」
「そうなったら、ようやく今までちゃんと仕事らしい仕事が無かったお世話仕事の始まりですね、俺が白鳥さんの涙拭っていっぱいお話聞きますよ」
笑顔でそう言うと、俺は立ち上がった。
長い間涙を流しそうな顔を見られるのは、白鳥さんも嫌だろうと思ったからだ。
「じゃあ俺、手洗ってきますね」
そして部屋から去ろうとした時────後ろから、俺は今までで一番強い力で強く抱きしめられた。
……そうか、空気を読んで白鳥さんのことを少し一人にしようと思ったが、そういう時にこそ誰かと一緒に居たいもの。
俺は少しの間静かにしたまま、白鳥さんに抱きしめられていることに────
「好き」
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