第22話 誘い
休み時間、俺と白鳥さんは俺の席で雑談をしていて、今は白鳥さんが見つけたというすごいホテルについて話していた。
「────で、内装が綺麗でテラス席からだと綺麗な夜景を見ながらご飯を食べれたりもするの!」
「ホテルってやっぱりすごいんですね、泊まったことないです」
「一回も無いの?」
「はい、泊まる機会もお金も無かったので」
俺がそう言うと、白鳥さんは目を少しだけ泳がせながら口を開いた。
「……皇くん、良かったらなんだけど、次の三連休一緒にそのホテルに泊まりに行────」
白鳥さんが俺に何かを言おうとしたタイミングで、蓮も俺の席に来たかと思えば俺の肩を組んで言った。
「綾斗!今週の金曜日の放課後、空けとけよ?」
「金曜日……?なんでだ?」
「おいおい、忘れたのかよ?バスケ部の強豪校との対戦!見に来てくれるって約束だろ?」
「あぁ、金曜日はバイトだけでも四連休にしたくて入れてないから問題無い」
白鳥さんの家で住み込んで白鳥さんと一緒に生活することが仕事だというのであれば四連休では無くなってしまうが、白鳥さんの家での仕事で縛られるよなことは全く無いのと、白鳥さんが仕事の関係では無いと言っていたことから、俺の中でも白鳥さんの家で白鳥さんと一緒に過ごすことが仕事という感覚が抜けていて、最近は白鳥さんのことを────
「流石親友だぜ綾斗!じゃあちゃんと応援来てく────し、白鳥!?ど、どうした?また何か怒ってんのか!?」
「またって何?私のこと怒りっぽいみたいに言わないでよ」
「俺と話すたびに怒ってるんだから怒りっぽく無いっていう方が無理────」
「皇くん、また後で話そ?私神木蓮に用事できちゃったから」
「え?は、はい」
白鳥さんは綺麗な笑顔で言うと、蓮に付いて来るよう言って教室の外に出て行ってしまった。
……絶対に無いことだが、もし白鳥さんと蓮が恋人になったりしたら、俺はどう思うんだろうか。
普段お世話になっている人と親友が付き合ったということで、俺は素直に喜べるのか、それとも────
「……」
俺はその先を考えてしまうと答えが出てしまうような気がしたので考えることをやめたが、もう薄々自分の感情の変化に気づき始めていた。
◇白鳥side◇
「ねぇ、皇くんの前で私のこと怒りっぽいって言うとか本当にふざけてるの?どういうつもり?私が皇くんのこと好きなの知ってるよね?」
私は廊下に出て廊下の無人スペースまで神木蓮と歩いて来ると、早速さっきの理解できない発言に対して問いただしていた。
「わ、悪かったって、次からは気を付ける」
「……本当、皇くんの友達ってことに救われてるからね、もし皇くんの友達でも無いのにこんなふざけた態度取ってたらどうしてたか」
「だったら俺はどうにかされちまうな、俺は綾斗の友達じゃなくて親友だからな!」
私は本気の殺意の目と声を神木蓮に向けて言った。
「本当にどうにかなりたいの?」
「す、すみません、冗談です……」
神木蓮が私に謝ったこのタイミングで、私はさっきの話をすることにした。
「私、さっき神木蓮のせいで大きなチャンスを逃したんだけど」
「大きなチャンス……?」
「もしかしたら皇くんとこの三連休でホテルに泊まりに行けたかもしれないのに、そのチャンス逃しちゃったんだけど、神木蓮が話しかけてきたせいで」
「あぁ……それでさっきあんなに怒ってたのか?でもそんなの簡単だろ、また誘えば良い」
「私は一つ誘うにしてもちゃんと会話の流れっていうのを大事にしてる、それを邪魔したのは誰?」
私は睨みを利かせながら言う。
「だから、それは悪かったって……でも、泊まりって何するんだ?ホテルに泊まるって言ってもせいぜい景色楽しむとかご飯食べるとかしかできなくね?」
「そのホテルから一駅分ぐらい先に遊園地があるから、そこで皇くんといっぱい楽しいデートするの」
「あぁ、遊園地は確かに仲を深めるのには絶好の場所だな……なら、今からでも綾斗のことを誘えば良い」
「だから、その会話の流れを切ったのは────」
「俺から見てれば、もう会話の流れとか気にしなくてもいいぐらいには綾斗と白鳥は仲が良くなってる」
「っ……!」
神木蓮から見ても、私と皇くんが会話の流れを気にしないでいいぐらいは仲良くなってる……!?
ずっと一緒に生活してると気付きにくいけど、やっぱり私たちどんどん仲良くなっていってるんだ……!
「まぁ、俺に比べたらまだまだだけどな?」
その言葉さえ無かったら素直に褒めてくれたって喜べたのに。
「……じゃあ皇くんにもう一回誘ってみるけど、もし断られたら────」
「断られねえから心配すんな、行ってこい」
神木蓮は私の背中を押して、早く教室に戻って皇くんのことを誘うよう促してきた……後ろを振り返ると、神木蓮は良い笑顔をしている。
私はそんな神木連に一言だけ伝える。
「触らないでくれる?」
「はぁ!?今のはそのまま教室行く流れだろ!」
後ろで色々騒いでる神木蓮のことを無視して、私は教室の中に戻り、皇くんの座っている皇くんの席に向かった。
「皇くん、お話しても良い?」
「はい、さっきの続きでも話しますか?」
皇くんは私が望むことを言ってくれた。
「うん!あのね、さっきの続きで言いたいことが────」
「さっきの話聞いてて思ったんですけど、もし良かったらさっき白鳥さんが言ってたホテル一緒に泊まりに行きませんか?」
「……え?」
今、皇くんなんて……?
え?私と泊まりに行くって?
私まだ何も言ってないよね?
え?……皇くんから誘ってくれた!?
私はその皇くんの誘いに、少しの間固まってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます