第18話 根底の問題

「綾斗に恋愛対象として見られる方法……?なんだ白鳥、そんな簡単なこともわかんねえのか?仕方ねえな〜、教えてやるよ」


 この上から目線な態度……本当、皇くんとは真反対。


「綾斗に恋愛対象として見られる方法は────綾斗に告白することだ」


 もしここが法律の適用されない場所だったら自分でも何をしていたかわからないほどの殺意に駆られた。


「それができたらそもそも神木蓮に相談なんてしないんだけど、ふざけてるの?ねぇ、私のこと怒らせたいの?」

「もちろんわかってる、あくまでも最終的にはって話で、白鳥が知りたいのはその過程の話だろ?任せとけって!」


 ……今ので話が終わりじゃなかったのは良かったけど、それにしてもやっぱりどうもこの軽い感じの神木蓮とは合わない。

 でも皇くんの情報を得るためだから、我慢するしかない。


「綾斗は多分、行動でどんなことしても恋愛対象としては見ない……多分キス以上ぐらいのことをしないと相手が自分に好意を持ってるなんて微塵も思わない、多分それは綾斗に根底にある根っこの問題だ」

「皇くんの根底にあるもの?」

「そうだ、綾斗はとにかく今生きることと将来のことと妹の学費とかのことで頭がいっぱいで、自分が恋愛することなんて頭に無いんだ」


 それが……皇くんの根底の問題。

 神木蓮から得られる情報としては、確かに皇くんの人格と照らし合わせてみてもその話は一致する。


「だからまず、綾斗も恋愛しても良いんだって気づかせないといけない」

「どうやって?」

「────それを考えるのは!白鳥じゃないとダメだろ?」


 神木蓮はそう言いながら私の肩に手を置いてきたため、私は会得していた護身術で反射的にその手を捻った。


「痛っ!」

「そこは自分で考えるとしても、皇くんに恋愛対象として見られるかどうか以前に、皇くんと仲良くなるのはどうしたら良いの?普通はどこかの商業施設で遊ぶんだと思うけど、そういうのに私疎くて」

「俺が痛がってるのは無視かよ!……それは、そうだな、白鳥は綾斗としたいこととか無いのか?」

「無限にあるに決まってるでしょ」


 一瞬「ふざけてるの?」という言葉が出そうになった。

 そんなの聞かれるまでもく、いっぱいある。


「じゃあ例え出してみてくれ」

「皇くんと一緒に綺麗な景色見せてあげたりして、できたら皇くんに『白鳥さんの方が綺麗ですよ』とか言われてみたい」

「お、おう……後半のは綾斗次第だからわからねえけど、とりあえず綺麗な景色が見たいってことだな?」

「うん、夜景の見える綺麗なレストランとか行きたいと思ってるの」


 それで、その夜景を背景に皇くんとご飯の感想を言い合ったり、夜になるにつれて雰囲気に酔って皇くんと一緒に大人な気分になっちゃったり────


「でもなぁ、いきなり夜景が見えるレストランとか行っても、綾斗はリラックスできないだろうし、綾斗のお金的な事情を考えるならそれはバッドアイデアだ」

「はぁ?どこの誰かも知らない社交界の相手ならともかく、私が皇くん相手にお金なんて要求するわけないでしょ、全部私が払うし」


 皇くんが苦労して頑張ってるの知ってるのに私が皇くんからお金を徴収しないといけない理由なんて全く無い。


「俺ならごちになります!って感じだけど、綾斗の性格的にはそうならねえって、絶対遠慮するに決まってる」


 ……それも合ってる。


「じゃあどうするの?」

「────プラネタリウムだ」

「プラネタリウム……確か星座見るやつだっけ?面白いの?」


 名前だけは聞いたことあるけど、実際に行ったことは一度も無い。

 ただ正座を見れるっていうのだけは知っている。


「おいおい、プラネタリウムなんて昼夜関係なく綺麗な星空を見れる絶好の場所なんだぜ?しかもカップル席とかなら肩くっつくし」

「カップル席!?それって、受付とかでカップル席でって言うってことでしょ?そんなことしたら私が皇くんとカップルになりたいってバレちゃうんだけど?」

「……本当は綾斗が今年彼女できた時に渡そうと思ってたんだけど、白鳥にやるよ」


 神木蓮は少し口角を上げながら二枚のプラネタリウムのチケットを渡してきた────そのチケットには、カップル席割引券という文字が書かれてあった。


「……どこで手に入れたの?」

「バスケ部の後輩の知り合いがプラネタリウムで働いてるらしくてもらったんだよ、もし彼女とか居るんだったら一緒にどうぞってな、俺彼女居ねーけど!」


 神木蓮は笑顔で言った。


「……そう、ありがとう」

「おう!で、ここからがもっと重要だ」

「今の話で終わりじゃないの?」

「あぁ、ここからだ……綾斗に恋愛対象として意識されたいなら、とにかく今までとは違うっていう風に異性ってことを強調する必要がある」

「うん」

「だから、綾斗とプラネタリウムに行く日の当日は今から俺が言う通りに────」


 その後私は十分ほどかけて、神木蓮からその日どうすれば皇くんに異性として見られるのかを伝授された。

 ……ところどころ思うところはあったけど、仮にも皇くんの一番の親友っていう神木蓮の言うことを、一度素直に信じてそれを実行に移すことを決めた。


◇皇side◇

 今日は白鳥さんと初めて出かける日。

 何かの伝手つてでプラネタリウムの割引チケットをもらったらしく、ご飯の前にそこに行くことになり、今は雰囲気だけでも待ち合わせにしたいと白鳥さんが言ったため白鳥さんの家の前で白鳥さんのことを待っている。

 ……三分ほど待っていると、白鳥さんが出てきた。


「白鳥さ────え!?」


 俺が挨拶をしようと振り返って白鳥さんのことを視界に入れた時、俺はその服装に衝撃を受けた。

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