第21話 史②

 どこからこの歴史は狂っていたのだろうか。


 “語り手”は自身の運命を考える。


 考えたところで無駄な話である。


 神の“代行者”


 “運命神ノルン


 “天帝”


 (どれも違う。始めからこうなるように仕組まれていた...。あのガキ安倍晴明...。は本物の鍵という訳か...。ついでに意思つきの...。)


 所詮は自身は異界の人間。


「だから、一緒だと?」


 満身創痍の体で歩く“語り手”の後ろに現れる女性。黒髪で焦げ茶色のコートに身を包んでいて、右手には彼女の身長と同程度の長さの大鎌が握られている。


「お前、男じゃなかったのか?」


 女性は目を丸くする。少しすれば勝手に野垂れ死にそうな傷を負っている人間の発言ではない。


「面白い...ですね。まあ、日光に弱い僕としてはこの“固有式”が性に合ってるので。」


「お前、女性には敬語の人間じゃなかったか?」


「よくご存じで。ですが、加えて“先達”には敬意を払いますよ。」


 女性、いや、その男の名は御井みい深雪みゆき


「水の操作っていったところか...。御井みいの相伝だろ?」


「...。まあ、血の問題ですよ。血の。」


「はあ~。あっちと同じで東は...。いや、蛇足だな。」


「?」


「...。それで、要件は?」


「“朱雀すざく”からの伝言です。」


「あ?」


「『ご苦労』とのことです。」


「はっ...いけ好かない馬鹿だな...。」


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 “代行者”


 “語り手”の敗北。この事実を知った“直し手”、“聞き手”は理由は違えど“語り手”の除名を    に提案。


 結果、    は除名を保留。


 但し、  において“天帝”フュールフングの除名保留措置を解除及び処分を条件に認められた。


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 扇雪みゆきは血だまりを眺める。既にミカエルは去り、“ネロ”はほかの場所へと向かった。

 ただ、一人でその血だまりを眺めている。


「慰めに救いはない、残酷なものである。」


 一人の女性が扇雪みゆきの後ろに立つ。


「んあ?...。お前かよ。」


「ひどいな血を分けた、おと...。」


「てめぇ、なんざ弟なわけねぇーだろ。」


 扇雪みゆきは刀の切っ先を女性、御井みい深雪みゆきの首元に突きつける。


「まぁ、占星術師にとって本来兄弟や姉妹といった関係性は少ないからね。」


 御井みい深雪みゆきは懐から一冊の本を取り出す。


「これは...」


「“朱雀”の記録だよ。正しくは灰の記録グリス=レーというのが...いや、どうだったか、まあ、僕からしてみればどちらでもいいんだけどね。」


「ったく。それで流丹斎は?」


「来てるよ。まあ、“柊”の奴らに山田浅右衛門も来てるから早く合流したほうが...。」


 扇雪みゆき御井みい深雪みゆきの首根っこをつかみ自身の方へ引き寄せる。


「ひどいな~姉...やっば...。マジありがとう。」


「おい、口調が崩壊してんぞ。」


 二人の目には一人の少女が捉えられていた。


 顔の左上には痛々しい傷があり、右の額から右目そして右頬にかけて眼帯では隠すことができていない長い切り傷がある。


 格好は日本の女学生のような馬乗り袴、着物にブーツ。


 そして、左手に握られた刀。


「キャキャキャキャ。久しぶりだな。“死神”。」


 少女は不敵に笑う。


「相も変わらずうっせーな。の浅右衛門が。」


「あ?」

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