かつて剣聖と呼ばれたアラサー社畜、会社の命令で撮ったダンジョン料理配信にてバズり散らかす~元最強のブラック社畜が、S級モンスターをあっさり食して伝説になった話~
第8話 アラサー社畜、レヴィアタンを狩る
第8話 アラサー社畜、レヴィアタンを狩る
♢♢♢
春巻き春男:!!! S級モンスターのレヴィアタンじゃん!
はうる:デッカ! 本では読んだことあるけど、実物はじめて見た!
れいにー:あれ、本当に魚って呼んで良いのか?
♢♢♢
「ギシャァァァァァァ!!!」
飛び跳ねたレヴィアタンは咆哮と共に口を開くと、そこから圧縮された水の線を放った。俺はそれを横に躱す。見ると、水が当たった地面は、斬られたような痕が残っていた。
「ひ、ヒエ――」
振り返る。掠ったのか、新城さんの頬に小さな切り傷が出来ていた。彼女はそれに手を触れると、顔を青ざめさせていた。
♢♢♢
しまむー:水流カッターじゃん!!
ミレ:オイオイオイ、大丈夫かよ、アラサー!
はうる:っていうかとにかく新城さんを下ろさないと!
♢♢♢
「新城さん。刀をお願いできますか。こっちは両手が塞がっているので……」
「ひぃぃぃ! こ、怖ぃぃぃ!!!」
だが、彼女は背中でバタバタと暴れ出した。
「ちょ、新城さん!」
「こ、殺される! 殺されるぅぅぅぅ!!!」
彼女はじたばたと腕を振る。俺はそれにつられてふらついた。参った。これでは彼女をあやす分、刀を使う事が出来ない。
本来なら彼女を下ろして、レヴィアタンに集中したいところではあるのだが、それは出来ない。レヴィアタンはまずか弱い彼女の方を狙うだろうし、そうなれば彼女の命はない。離れては彼女の身に危険が及ぶ。彼女を抱きかかえながら戦う。これがマストの条件だった。
ただ――。
「か、帰る! 帰ります! こんな怖いモンスター、聞いてないです!」
暴れる新城さんは、結構な力で動いていて、俺の行動を阻害してくる。多分、パニックで力のリミッターが外れているのだ。こちらは力を入れづらい体勢の為、彼女を押さえつけることは難しい。
「離して! 離してってばぁ!!」
「わわ、ちょ、ちょっと!」
暴れた新城さんは、俺の背中から落ちてしまった。
「あ、新城さん――!」
「嫌だ! 帰るぅ!!」
彼女はそのまま出口へ駆け出す。
「こ、怖い! 怖いぃぃぃ!!」
まずい。俺は思う。そして、悪い予想は的中した。
「ギシャァァァァァ!!!」
そこに再び水流のカッターが放たれたのだ。新城さんの方へ、真っ直ぐと。
「ひ――!」
新城さんの顔が蒼白になる。そして、水流のカッターは彼女の眼前へ到達すると、
突如として出現した土の壁に当たって、軌道が逸れた。
「え――?」
「まぁ、刀がなくても」
壁の背後に移動していた俺は、再び新城さんをおぶる。
「できることには、できるんだけどね」
そこへ再び水流が放たれると、今度は土の壁を破壊した。俺は横に跳んでそれを躱す。見ると、先ほどまで俺がいた地面に裂傷が穿たれていた。
盾に出来るのは一回だけか。水中に潜ったレヴィアタンを見ながら思う。
「新城さん。今度は暴れないでくださいよ。いま終わりますから」
「ギシャァァァァァ!!!」
再びレヴィアタンは跳ね、水流のカッターが放たれた。俺は地面を踏む。すると、地面は畳返しのように盛り上がり、カッターを逸らす盾になった。俺はそんな土の壁をいくつも作りながら、壁から壁へと移動する。
「あ、足で地面を……なんて力――!」
同時に、周囲には霧が立ちこめ始めた。水流カッターの放った水が、周囲を漂うベールに変わったのだ。そして、その中に俺は姿を隠す。
「ギ、ギシャ――!?」
多分、身重なこの状況では、接近する過程で水流のカッターを食らってしまう。そこで俺は、まず姿を隠すことにした。土の壁と、カッターの起こす水蒸気。その二つを使い、行方を眩ませることにしたのである。
「ギ、ギシャ? ギシャァァァ……?」
やがて、レヴィアタンは俺の姿を見失ったようだった。その隙に俺は泉へと飛び込むと、その水上を駆け、レヴィアタンの背後に回る。
♢♢♢
しまむー:水上を走ってるんだが!
青爺:昔から走れるぞ、アイツは
はうる:古参乙wwwww
♢♢♢
そして、俺はレヴィアタンの頭上に跳んだ。
その段になって、レヴィアタンはようやく俺に気付いたようだった。
だが、もう遅い。
「――【サイキョー流剣術】、無刀術の一」
俺はレヴィアタンに向かって、かかとを振り上げた。
「【風斬脚】」
そして、振り下ろしたかかとの動きと共に、空間を歪ませる衝撃波が放たれた。それは水しぶきを裂きながらまっすぐレヴィアタンの方へと駆けると、
その鱗に覆われたその胸を、バターの様に切断した。
「ギシェェェェェェェェェ!!!」
レヴィアタンはそれを食らうと、白目を剥き、水柱をあげながら湖面へ倒れた。
「あ、足で斬った――? こ、これじゃまるで……」
新城さんは目を瞠り、呟いていた。
「まるで、あの……!」
「よっと」
俺はその死体の上に着地すると、新城さんの方を見る。
「怪我はないですか。新城さん」
「あ、え、は、はい――」
新城は茫然とした顔のまま、頷く。
「す、すみません、取り乱して、迷惑を――」
「いえ、大丈夫ですよ」
俺は彼女へ向かって微笑んだ。
「あなたがご無事で何よりです」
それを見て、なぜか新城さんは顔を赤らめると、俯いてしまった。
「……? どこか痛むんですか?」
「い、いえ……なんでも……」
「? そうですか」
♢♢♢
高山:絶対惚れたwwww
春巻き春男:女たらしがよ!!
ゴッチ:顔真っ赤で草
ミレ:っていうかS級モンスターを刀使わずに倒すってwww強すぎwww
♢♢♢
コメントは何を言っているのだろう。俺は小首をかしげる。
この程度の事、誰でも出来る。それで新城さんが俺を好きになるはずがないのに。
『キヒヒッ! S級なんぞを倒す事など誰にでもできるわ! 自分は常に未熟者。その心意気を忘れるでないぞ、人間!』
師匠の言葉を思い出す。そう。このくらい当たり前なのだ。
だって、師匠がそう言っていたのだから。
「――さて。じゃあ……」
俺は頭から湯気を出している新城さんを下ろすと、刀を抜き、レヴィアタンの腹を切った。
そして、その裂傷の奥に、真っ赤な宝玉の連なりを見つけて微笑んだ。
「ここからは、料理の時間だな!」
★★★
作者です。八話はいかがだったでしょうか!
書いていて思うのですが、食事の風景を書くのは本当に難しく感じます。自身の実力のなさを痛感し、恥じ入るばかりです。ともあれ、頑張って美味しそうに見える描写が出来るよう、尽力していきたいと思います!
また、☆やフォローで応援を頂けると、本当に作者の励みになりますので、何卒、何卒、特に☆の方を頂ければ幸いです……! よろしくお願い致します……!
さて、お次は料理パートになりますので、是非皆様、お楽しみにしてください!
それでは!
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