第7話 アラサー社畜、新たな食材と出会う

「ひぃ、ひぃ、待ってください田中さん~!」


 振り返る。見ると、新城さんはふらふらした足取りでこちらへ歩いてきていた。


「大丈夫ですか、新城さん」

「あ、歩くのは早すぎぃ……てか、歩きすぎ……」

「まだ二キロくらいしか歩いてないですよ」

「ふ、普通の人にはそれだけでずいぶんな運動なんですけど……」


♢♢♢


 春巻き春男:いや、アラサーがはえぇんだよ

 ミレ:うん。早すぎ。道中のモンスターズバズバ倒していくし

 としのり:普通の速度じゃねぇぞ。新城ちゃんも疲れて当然だわ


♢♢♢


「そうは言っても、ダンジョン来たの初めてじゃないんですよね?」


 俺は小首をかしげる。


「そんなに疲れます?」

「き、来たことがあるといっても触りの上層を見学したくらいで……ふぅ、ふぅ、こんな風に本格的に探索するのは初めてなものですから……」


 そこで、物音がした。


「ホアッ!」


 新城さんは青ざめた顔でびくりと肩を震わせ、持ってきた拳銃を構えた。


 見ると、無害なウサギのモンスターが、草むらから顔を出していた。兎のモンスターはこちらを見て、ふんふん鼻を鳴らすと、どこかへ駆けていった。


「……ふ、ふぅ、よ、良かった……怖いモンスターじゃなくて……」

「そんなに怯えなくても……」


 何かトラウマでもあるのだろうか。顔色も良くないし、かなり緊張している様子である。


「……辛いなら、もう帰ります? 送りますよ。出口まで」

「い、いえ、出世の為ですから!」

「はぁ、そうですか……」


 そうは言っても、彼女は心身共に疲弊している様子だった。息は荒く、目が血走っている。足を少し引きずっているところを見ると、マメでもできたらしい。


「っていうかスーツと革靴じゃキツいですよ」

「田中さんだってスーツと革靴じゃないですか!」

「僕はなれてるので……」

「だったら私だって――い、いや、ちょ、ちょっと休憩。休憩……」

「しょうがないなぁ」


 俺は彼女の方へ近づくと、その体をひょいと担いだ。


「ひゃっ! ちょ、ちょっと田中さん!?」

「おぶっていきますから。さぁ、行きましょう」

「あ、え、あの……」

「……? どうしました?」

「い、いえ、父以外の殿方と触れあうのはその……はじめてでして……」


 彼女の声が萎んでいく。振り向くと、俯いていて顔は見えなかった。


 何か気に障るようなことをしただろうか。


♢♢♢


 しまむー:wwww新城ちゃん、顔真っ赤じゃんwwww

 ゴッチ:さては男慣れしてないな!

 青爺:アラサーに惚れたか~?w


♢♢♢


「??? なんでこんなコメントが……?」

「ああ、あの、ところで!」


 何かを誤魔化すような口調で、新城がまくし立てる。


「ところで、いくら丼って、どうやって作るんですか! ダンジョンに鮭なんていないですよね! そうなると、作れないのでは?」

「鮭はいないけど、似たような奴はいるんですよ」


 俺は彼女をおぶって歩きながら返す。


「たぶんもうすぐ……お」


 そこで、広大な泉のある空間に出た。


「大きい泉! まるで湖みたいですね!」

「ここいらの水源地ですからね。ところで、新城さん」

「はい? なんでしょう」

「刀をとって貰っていいですか?」

「はい?」


 俺は少し身をかがめる。


「もう、来ますので」


 その瞬間だった。


 ドバァァァ! と音を立てて水が弾ける。そうして弾けた水しぶきをを纏うようにして、泉から巨大な魚が飛び跳ねてきた。空中でこちらを睨むその魚は、高さにして優に六メートル。幅二メートルほどはあるだろう。一軒家のような大きさである。それは深海魚のような強面さと、マグロのようにどっしりとした体を持ち、額には大きな角が生えており、口には鋭い牙が揃っていた。


「ギシャァァァァァァ!!!」

「な――な――……」


 あれこそ、S級モンスター【レヴィアタン】。ダンジョンの水辺を統べる支配者にして、最大級の魚類型モンスターであり、


 今回の食材であった。


★★★


 作者です。七話はいかがだったでしょうか! 


 また、ここまで読んで頂き誠にありがとうございます。今回の話は少々短めにしたのですが、皆様は短めの話と少し長めの話、どちらの方が読みやすいでしょうか。こっちの方が良い、というご意見などありましたら、是非感想にてお寄せください!


 また、フォローや☆で応援して頂けると、本当に作者の励みになります! とくに☆を頂けると、本当に嬉しいです! 何卒、何卒よろしくお願い致します!!


 暑い日が続きますので体調にはお気をつけ下さい! それでは!


 次話は戦闘パートとなりますので、是非お楽しみに

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