第31話 機体入れ替え作戦佳境、ナインの視点

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機体入れ替え作戦佳境、ナインの視点




博士が作ってくれた何世代先かも分からない凶悪な性能を持つレーダー機体と、メタニンが作ってくれた明らかにあり得ない機能を山程備えたチート機体が、合体した。


途方も無い力だ。


ミナさんという最強のパイロットとフィクションの巨大ロボのような白銀の機体の組み合わせは別格のエースに相応しい飛び抜けた存在だが、今のボクだって本当ならもっともっと活躍して当然なんだ。



まるで最初に会った時のようにうまく動けなくなっていたメタニンが、謝りながらボクらに頼ってきた。


最大の難関だった対有人機戦闘を全機丸ごと一瞬で終わらせ、そのまま真っ先に治療を優先してくれたのに、余力を残せなくてごめんなさいなんて言わせてたらボクは何のために指揮官機みたいなレーダー機体を任されていたのか。


さすがに悔しい。さすがに悔しいだろうこれは。



ようやく把握し始めた索敵能力と通信傍受、必要データの奪取。どれも博士産の常識を越えたハードとソフトで、指示さえ正しく送る事が出来ればボクの力などほぼ無関係に重要なものを拾えるだけ拾い集められる。


討ち漏らし排除や援護射撃も重要だが、せめてこっちだけは絶対に自分の役目以上の役割を果たさなくてはならない。どうにかボクの可愛い彼女の頑張りに報いたい。謝らせてしまったのを完全に覆せるほど完璧以上にボクのミッションをこなしたい。



機体を目的地へ動かす。


ミナさんは自動補正を切れば切るほど強くなるが、ボクにそんな腕は無いので逆に頼れる補正や自動操作は全て頼る。


その代わり、手と頭を動かし続けよう。



目に見えないほど細く長いケーブルが基地に届く範囲で、なおかつ射撃しやすく、メタニンの居る病院と基地周囲を把握しやすい強いポジションを取る。もともとなぜか戦車にやたらめったら強力なスラスターを追加されていて、そこからゴテゴテに改修して飛行可能機体までくっつけたので、やろうと思えば重力圏内で航空戦力としての動きも出来る。出来るが、今その優先度は低い。上はミナさんに任せる。


遥か上空に迫る第三波で問題になるのは、高高度からの襲撃のせいでただ部品が落下するだけでそれなりの質量兵器になってしまうことだ。せっかく武器を控えめ性能にしていたのに全力で宇宙から降られまくったら、重力が控えめと言えどかなりの威力を持った小型隕石攻撃になる。


ここまでくれば恐らくもうこれは博士のただのうっかりでは無い。何らかの意図が働いている。あるいはメタニンが無意識化で強烈なチートを扱うように、博士の無意識化か施設そのものに何らかの人類に対する強烈な攻撃意思みたいなものがあるのかも知れない。実際迎撃装置も隕石進行も止められないのだから、制御できない理由が何かある。



情報を拾え。考えろ、考え続けろ。


射程圏内に第三波が近づく。吸い出した大量のデータがモニタを流れ続ける。


頭が茹だりそうで、胃はずっと痛い。


別にボクは戦略家でもハッカーでも何でもない普通のパイロットで、こういうのは本当は何か凄い頭脳を持った人に与えられるべき役割なのかも知れない。でもそれは見方を変えれば特別扱いの人間に全てを背負わせ、自分は普通だから弱いからと言い訳し責任からも立場からも逃れるずるい考え方でもある。


今回だってミナさんに頼り、メタニンに背負わせた。


こんなの違うだろう。ボクだって力を与えられていて、ボクだって背負えた筈なんだ。


覆してみせる。絶対に。


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