第30話 虹色の光


ごめんミナ。


散々今の状況と次どうなるかを考えるよう言われてたのに、慣れと焦りで次に何かあっても動けなくなる大精霊の病院をもう喚んでしまった。


もしかしたら第三波じゃなくても採掘場で大きな問題が起きていたかも知れないし、私の見ていない場所で何かまだ残っているかも知れない。


すぐ病院で最適解と思ったのに、問題が起きてから見返すと先に相談しなかったことが悔やまれて仕方が無い。


言葉通りちゃんと状況を見てよく考えて動けというだけの話なのに、こんなにも難しい。だって見えていない私には自分に何が見えていないのか分からなかったもの。むしろちょっと分かった気になって油断したかも知れない。


ハカセのテスト不足なやらかしに文句を言いづらくなった。確かに自分だけじゃ防ぐの難しいし、一人でやるなと偉そうに叱ったけどいざ実際に責任を負うと私もやらかすまで相談すべきだと言う事に気づけなかった。



……反省点はつきないが、だからといって今はまだ無茶出来ない。


ルール破りの全力全開は約束を破るために必要だ。どうしてもダメそうになったら解放するしか無いが、今はミナとナインに頼りたい。



「……ごめん、油断して失敗した。ミナ、ナイン……お願い…。力を貸すから、力を貸して」



虹色に輝き出す白銀の機体。ハックと、制限を解除。そういえば、たしか次もハッキングが必要だった気がするので、このチートの感覚を覚えておかなければ。


「メタニンちゃんの力になれるならわたしなんだってするわ」

「ボクも頑張るけど、これは……何が起きてるんだ?メタニンもしかして最初に会った時のあの状態になってないか?」


相変わらずミナは何かちょっと重い。


そして私の寝ぼけ状態とコクピット内に目まぐるしく表示されては消えていくパラメータ群にナインが警戒しているが、これは、ただ調整しているだけ。白銀にお願いして、ミナの専用機としてふさわしい調整を。



操作デバイスも一度回収されて、勝手に別パーツへと交換されていく。


ミナの手元に新たに現れたのは、今までの比じゃないほどギラギラ七色に光るやたらごついキーボードとマウス。そして異様にでっかいマウスパッド。……なんだこれ?



「あ…っ?えっ!?でででで伝説の初期型ゲーミングデバイス!?!?どうして!?じゃ、じゃあこの画面は感度調整ってこと!?メタニンちゃん!!!大変!!!博物館!博物館に保存したい!!!」


そしてミナが見たことも無いテンションで大はしゃぎしている。……なんだこれ?


椅子とかフットパネルまでめちゃくちゃカラフルに光りはじめたけど大丈夫なんだろうか。絶対そこまで光る意味無いし、なんなら調整前より至るところがギラギラチカチカして邪魔そうなんだけど。


「白銀……この光ちょっと……」

「要る!!!絶対要るから!!!メタニンちゃん!!!お願い!!!」

「絶対かぁ……」


おかしい、かなり真剣な場面だった気がするのだが、物凄く絵面がファンキーになった。


……ま、まぁ、なんか凄くミナが楽しそうだから、こっちはこれで良いはずだ。今は眠すぎるので見栄えまで考えているような余裕がない。


次はナインの機体だ。


もう体がほぼスリープ状態で動かないので、前に使ったバリアを小さく出して発進ボタンを押し、白銀の機体コクピット内部から外へと放り出される。


「えっ!?」

「メタニン!?」

「だいじょぶ……とぶから……」


魔法少女の精霊の力をちょっとだけ借りて、ぶらんと眠ったままふわふわ浮遊する形になる。隕石の通信妨害はどうにもならないので、会話用に有線通信用の紐を白銀から受け取って、先に言ってくれと慌てる2人を宥めつつ話を進めていく。



「ミナ、ナイン……エースっていうのは、一人で戦況を変える存在なんだから、やっぱり合体機体じゃダメ。ハカセはスポーツとか戦略とか、そういうのの理解が雑……任せちゃダメ……」


私と同じく、分離後のミナの凄さを目撃して理解したナインが頷く。


「ハカセは……サッカーと野球の区別もつかない変な知識レベル……戦略とかも多分拾い集めたデータを物凄く雑な理解で真似しているだけ……」


至るところでバラバラにされたパクリ機体達からパーツを借りて、ナインの機体を組み上げていく。元々多脚戦車に乗っていたのだからベースも改修型の戦車で、その上に人型有人機の上半身、コクピット部のかわりに今乗っているX型飛行機体がコア的に合体出来るやつ。


「ナインはこっち……これに合体して……」

「大丈夫かなこれ!絶妙にこれも色々なのに似てるけど!絞れないくらい色々なやつに!」


文句を言いながらも多脚戦車に人型上半身の生えたケンタウロス的な何かと合体するナイン機。よくみるってことは定番で、定番ということは使いやすいという事だから大丈夫なはずだ。多分。


「メタニンもだいぶ雑だからな!!」


こっちの機体からも受け取った有線通信から意味のよく分からない叫びが響く。


後はなんか色々砲台とかフレアとか便利な武装を付けれる場所に付けまくったら完成だ。空も飛べるケンタウロス戦車。ちょっと脚多いから蜘蛛女っぽさもあるが絶対強い。



「レーダー、この戦域じゃなくて……宇宙を見て……第三波……」


頷くミナと、驚くナイン。


「うわ!?どうしてボクはまた見えてないんだ……」

「わたしも今気づいたからメタニンちゃんが早かったのよ」

「これ、多分ミナさんは来るの分かってたんですよね」

「第三波が来るかもってナインさんも言ってたわ」

「あああ……言ってましたけど……下手したら来るかも程度の認識でした……」


一旦白銀の機体の手に乗せてもらって、基地の方へと移動する。



「……精霊の病院に何人か入院したから、私はあれの維持と防衛に張り付く。ごめん、他は全部任せるしか無いと思う」


そして、本当はもっと大精霊のタイミングを考えるべきだったと謝る。


「お願い謝らないで、元仲間を最優先で助けてもらって謝られたらわたし自分が情けなくて立ち直れない」


「ボク今回の作戦全部役立たずでずっとお腹痛いんだ。命が懸かっている部分で一番活躍しているお前に謝られたら胃がなくなってしまう。ちょっとは活躍させてくれ」



優しい2人は私に気を遣ってくれながら、思い思いの配置につくため動き出す。


「ナインさん、わたしを信じて当てる覚悟で支援射撃お願い。避けるし効かないから」

「はい」


有線が外れたらまた通信がしづらくなるし、合体も解いたのでここからは3人バラバラだ。けど、協力プレイって合体して一緒にいることだけじゃなくって、お互いに任せ合うのも凄く有りだと第二波の時から感じている。


私と、そしてハカセのやらかしをカバーして貰っているという構図なのが本当に情けないし残念で恥ずかしいけど。そうじゃなかったら本当に熱くて感動的だったんだけど。


本当に申し訳ない。なんとか、やれることを頑張るから。


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