第29話 傍目からは結構ホラー


健康状態にあまり問題の無かった地球防衛隊パイロット数名と、取り急ぎ用意されたコクピット改修パッチワーク機が小さなチームを幾つか組める状態になったので、ハート目隊員チームと共に火星独立を宣言していたという火星で働く人達の職場の一つへと向かうことにした。比較的大きな採掘場らしい。


NTRビームに当たっていない隊員の人達と遭遇すると色々面倒なので、なるべくこっそり目立たないように着いていく。


レーダーで確認した限りではミナがナイン達に合流するまであと少しだから、私がビーム撃って病院建てている間に第二波はほぼ殲滅されたことになる。やっぱり白銀の機体に乗ったミナは尋常じゃない。それも閉所や同乗者という制限が無くなると更に一歩別の領域に踏み込んでいる気がする。


急いで実際の状況を確認したあと手伝いに向かうつもりなのだが、これだとむしろ向かうが私の手伝いに回ってくれそうな勢いかも知れない。ナインとメテオタベタラーは私と基地を挟んでちょうど逆方向に居るので、ミナがそこに合流してから反対方向の施設などを確認に回ってくれる流れになると凄く効率が良い。こう、実際そこまで時間が変わるわけじゃなかったとしても移動が効率的になると気持ち良いよね。



やがて目的地に辿り着くと、どうやら連絡係的に残されていたらしい数名の防衛隊員が入り口を確保しており、そして採掘場の内部は……なんかもうやってらんないわ~って感じの人達がだらけきっていた。


ちょっと離れて話を盗み聞きしていたが、防衛隊主力の大半が自分達の対応に出ていたタイミングで基地が襲われ、自分達のせいで基地も自分達ももう終わりだとなった感じらしい。なるほど自責の念まで混ざって余計に心が折れたのか。


ハート目の隊員が心折れ職員にとりあえず第二波はしのげた旨を説明している。


「い、いや、あんたら自分で気づいていないだけだから……もう絶対博士に洗脳されてるからそれ……」

「うちらはメタニンちゃんにNTRされただけだから安心してくれ」

「本当に何言ってるのか分からないから。もう本当にSFホラーだから。神様許して……どうしてこんなことに……」


しまった。洗脳みたいな事をしているのは事実だから反論しようがない。


そうか、鹵獲パッチワーク機体とハート目隊員は傍から見たらハカセに何か侵食された感じにしか見えないのか。基地に居たビームの当たってない人達は問答無用でパッチワーク改修手伝わされていたけど、どういう気持ちだったのか聞くのが怖い。ヘルメットもあって遠目だとハート目は分からないから、気づいた人と気づいていない人が居そう。逆にやばい。



……。


ま、まぁ、とりあえず怪我とかそういう危険な感じは本当に無さそうだと確認出来たから、もう一箇所くらい遠くから様子を確認したら一旦ちょっとナイン達と合流しよう。


こっそりハート目隊員さんの一人に手を振り、離脱の合図を送ると投げキッスが返ってくる。了承の合図だと思うことにする。


眠くて頭が回らないし、他もこんな感じなら地球防衛隊に任せちゃっても大丈夫だと思うし、どこかで区切りを付けて一息つきたい。



「精霊、魔法少女~」


次の目的地は少し距離があるので、もう一回魔法少女に変身する。ヒーローモードで走るより消費が軽いし飛べて早いので便利だ。マジカル空間を出しちゃうとちょっと重くなるし今は別に必要ないのでただ性能を活かして飛んでいく。


少しして到着した2つ目の採掘場は防衛隊員の姿が無く、中の様子も特に何もおかしな所は見当たらなかった。


こっそり近づいて聞き耳を立ててみると、こっちはどうやら殆ど自動化されている施設のようで、ごく少数の責任者っぽい人達がただボーっと機械を眺め続けていた。時折ため息をついているのでやっぱりこっちも心が折れてただ流されるように仕事を続けているようだ。



その場からそっと離れる。


一応、大丈夫ということにならんだろうか。色々と大丈夫では無さそうだけど、緊急とかヒーローの出番では無いという意味で。



眠気の限界も近いのでミナ達と合流すべく一気に空を駆ける。


レーダーを改めて確認するともはや第二波は片付いたらしく、私の移動ルートから察して自分達も周辺施設の様子を伺っていた感じのようだった。


各方面に地球防衛隊の反応もあり、今度は基地に残す人員多めにした上で確認に動いてくれているようだ。


とうとう白銀の機体が目視できる距離に近づくと、安心して体の力が抜けていく。



「メタニンちゃ……魔法少女!?」

「ミナ~~ごめん、眠い」

「あ、だ、大丈夫!?早く入って」


白銀の機体のコクピットに入れてもらい、後ろの席の背もたれを倒して仮眠のとれる体勢で休ませてもらう。


「……メタニン、まず休んでくれ」

「あるじ、また後デ」


ナインも合流し、メテオタベタラーは精霊界に戻る。皆色々聞きたそうだけどその上で飲み込んでくれているようだ。ごめんちょっとだけ。ちょっと寝てから話すね。


「ほんと5ふんだけ……すぐおきるから……」

「それは起きないフラグなんだ。おやすみ」

「大丈夫、後はなんとかするから。おやすみなさいメタニンちゃん」


暗闇に意識が溶けていく。



消耗している感じはないのだが、やっぱり過度な能力には制限みたいなのがかかるのかも知れない。リミッターとかそういうアレが、自分の負荷をとにかく止めたがっている。


制限。


そう、これ以上やるのなら、この制限を……。


……。



……スリープに入る本当にその瞬間、レーダーに反応を感知する。



ああ、もうどうして……。眠らなきゃいけないのに。



でも、ああ、そうか。


そうだ。

どうしてあの形で気づかなかったのか。

最初に基地を包囲。次に通路を封鎖。そうだ。この形は、次が本命。


立体の囲み。上だ。


簡単にフラグになるのなら言うんじゃなかった。


これは、第三波だ。


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